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48 - Ep43 観光 / 楽

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2024年07月08日

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 異能祓魔院一向は、それぞれ西部の異能祓魔院隊員たちと合流していた。

「ここが京都……古風でいて、雰囲気はとても好きなのだが……」

 怪訝そうな顔の逸見に、神崎は底知れぬ不安感を抱いていた。

 そんな時だった。

「よくぞ参られたし! 京都ォー!!」

 その声に、逸見の顔は更に強張る。

「覚悟しろ、神崎」

「は、はい……?」

 声の方を振り向くと、白昼堂々、駅前の公共の場だと言うのにも関わらず、歓迎!の文字が大きく描かれた複数人たちが姿を現した。

「あの……逸見さん……もしかして……」

「ああ、その通りだ……」

 そして、ガタイのいい男が前に出る。

「よう! 逸見! 久しぶりだな! “京都” に来る異 “郷徒” はお前たちだな!」

 逸見と神崎の間に、シーンと静寂が訪れ、その後。

「 “かな” り遠い “神奈” 川から参りましたぁー!!」

 恥ずかしがりながらも、敬礼にて逸見はダジャレを返した。

「え……?」

 困惑する神崎。

「お前ー! 成長したではないか! ハッハッハ!」

「いえ……稲荷イナリ隊長ほどではありませんよ……ハハ……」

「前は、こ〜んな小粒納豆くらい小さかったのにな!」

 そして、複数人の中から、小さな女の子がトトト、と駆け足でやってくる。

「隊長、この人そんな小さかったの?」

「そうだぞ! こんなに、だ!」

 そして、親指と人差し指で小さな穴を作る。

「えー! じゃあ狐子ココも大きくなる!?」

「当たり前だろー! ハッハッハ!」

「あの、稲荷隊長。こちら、アルバイトの神崎杏。異能力は『透明化』です。我々は基本的にバックアップやサポートとして戦闘に参加しています」

「うむ! 聞いている! 我々は先鋭が多いが、そういうサポート隊がいなくてな! コキ使わせてもらうぞ!」

「はい!」

 そして、再び逸見は稲荷に敬礼した。

 同時、鳥取駅にて。

「おい、隊長。あんま景色すごくねぇじゃん」

「楽……まあ、ここは関西と行っても少し外れの方だからな……。観光に来た訳ではない。勘弁してくれ」

 そんな声を背に、止水は永遠とゲームに興じる。

 そんな中、背後から、三人を呼び掛ける声。

「よくぞいらっしゃいました」

 ピシッと黒スーツを着た男に、緊張が微塵も隠せていないスーツの女性の二人組が姿を見せた。

「お久しぶりです、睦月さん。鳥取支部からお迎えに上がりました」

「やあ、新道シンドウくん! 久しぶりだな!」

 新道と呼ばれた男は、和かに睦月に挨拶をした。

「こちらは新人隊員の浮田ウキタです。異能力は『浮遊』。触れた対象を浮かせることが出来ます」

「便利な異能じゃないか! よろしく頼むよ、浮田隊員!」

「は、はい……」

 決して目を合わせず、浮田は返事を返した。

「こっちも新人隊員の楽。異能力は『憑依支配』だ。そしてこっちはアルバイトの止水歩。無能力者だが、敵の攻撃パターンを見抜く天才だ!」

「よろしゃーす」

「ウィッス」

 二人の軽はずみな返事に、睦月は冷や汗を示す。

「ハハ、個性的なお二人ですね。長旅でいきなり任務と言うのも些か大変でしょうし、少し観光でもいかがでしょうか? 手配してあるんですよ」

 そう言うと、新道はササッ、と、一台の車を指差す。

「ああ、これはありがたい! 行くぞ、二人とも」

「観光っスか……早く部屋ん中行きた〜い」

「俺はいいぜ! 新しいモン楽しみだ!!」

 そんな雰囲気の中、車は発進した。

「んだよ、山ばっかじゃねぇか」

 外の景色を眺めながら、楽は怪訝そうに呟く。

「ハハ、すまないね。鳥取はあまり観光名所は少ないんだよ。でも、きっと感動する景色を見せるよ!」

 新道は、惜しみなく爽やかで親切な男だった。

 車が到着した先は、鳥取砂丘だった。

「観光案内人を雇っていますので、少々お待ちを」

 しかし、楽は言わずもがな、テンションが上がる。

「す、すげぇ〜!! 見渡す限り砂! 砂! 砂! 向こう側もなーんも見えねぇ! ハハ! すげぇ!」

「喜んでもらえてよかった!」

「ハハ……申し訳ない。まだ子供なもんで……」

 睦月は仲裁に入るが、新道は笑って答えた。

「いえいえ、こんなに喜んでもらえた方が、僕らとしても連れてきた甲斐があるというものです」

 浮田は車から出ず、止水は寝付いてしまっていた。

「止水くんを起こすのもなんですし、観光はこの三人で行きましょうか。ガイドさんも来たみたいです」

 そして、一人の長身の男が現れた。

「異能祓魔院様でございますね? この度、ガイドを務めさせて頂きます、サンドリームと申します。何卒、よろしくお願い致します」

「サンドリームさん、お久しぶりです! 神奈川の異能祓魔院から来て下さった方々です! 是非よろしくお願いします!」

 ガイドのサンドリームと、新道はどうやら顔見知りのようで、親しげに話を進めていた。

「それでは参りましょう」

 そして、サンドリームの案内で様々な施設を見る。

 その度に、楽の「これ買って!」が発動するが、睦月は華麗に「任務が終わったらな」と回避していた。

「そして、最後にこちら。展望台屋上から鳥取砂丘の全てが見られます。そちらの望遠鏡を使えば、かなり遠くのものも近くに見れますよ」

「おおー! なあ、見て来ていいか!?」

「ああ、いいぞ。ほら、200円入れて使えよ」

 楽は大はしゃぎで望遠鏡を覗き見た。

 暫く覗くが、正直砂しか見えない景色に飽きてきた頃、楽は変な穴を見つける。

「なーなー、なんか変な穴があるけど、アレってなんかの住処? 動物とかいんの? ここ」

 背後からニコッと新道が口を挟む。

「ふふ、よく見つけましたね。あの穴こそ、異能教徒の本拠地の一つ砂の神官が居る場所です」

 そして、睦月と楽の間に緊張が走る。

「そして、こちらのサンドリームさんが、件の砂の神官さんなんです!」

「楽!! 直ぐに臨戦態勢を取れ!!」

 睦月の合図に、楽は咄嗟に悪魔を憑依し、距離を取る。

「新道くん……どう言うことだ……。何故、神官とそんな親し気にしている……!」

 睦月は冷や汗混じりに新道と向かい合う。

「そんな、今日は観光ですよ? 楽しみましょうよ」

 しかし、新道は不思議そうに悠長に構えていた。

「ふふ……そんなこと言っても、知ってしまえば警戒するのも当然ですよね。でも本当に大丈夫なんです。戦うのは明日って約束してあるので」

「約束……? 相手は異能教徒だぞ……?」

「ああ、試験も兼ねてるんですよ。サンドリームさんと僕は意見が同じなんです。異能教徒ほど残忍な考えはしてないですけど、『弱者が異能祓魔院にいる必要はない』

 そして、新道は初めて目を開けて笑う。

「浮田も明日、神官との戦いで試験です。死ぬようなら必要ない人材と言うことになりますから」

 その言葉に、異常なまでの彼女の緊張を理解する。

「隊長は……? 鳥取支部の隊長はどうしたんだ……? まさか新道くんが独断で決められないだろう……?」

「ああ、隊長ですか。隊長なら、もうとっくに戦闘不能でお休みになられてます。死んではいませんよ」

「明日は君も神官を倒す任務の為に共に戦う認識で間違いないよな……?」

「間違いないです! 異能祓魔院の任務として、しっかりサンドリームさんは倒すつもりです!」

 睦月は一呼吸つき、楽に合図を送った。

「分かった。信じよう」

 しかし、睦月は一つ覚悟を決めていた。

 鳥取支部の隊長が戦闘不能、それが意味するのは、『こちらは神の力を使えない』ことになる。

 明日は相当な戦いを強いられる覚悟を決めた。

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