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「……マ!……シッ…!……シッマ!!!」
ふと、声をかけられて意識が浮上する。頭には血が足りておらずフワフワとしている。隣では俺に声をかけた大先生が顔をぐしょぐしょにしながらこちらを見ていた。
「シッマ!!!よかった……」
「大先生……俺……っ!」
だんだんと頭が働いてきた。
大先生が斬られた後俺達は何故か保健室にいたんだ。そこには猿山先生もいて一連の事情を説明してもらった。その後、どうするか考えているとゾムが入ってきて…そうだ俺は変わり果てたゾムの姿に思わずバケモノと言ったんだ。それに怒ったゾムが俺の腹を刀で思いっきり斬った……
「っ!!!!?」
俺は斬られたであろう腹を見る。しかしそこには血ひとつついておらずペタペタと自らの腹を触るが傷ついた感じや痛みが全くなかった。
「……だ、大先生……俺、怪我したよな……?」
「そうやで、でも……よくわからん光みたいなのがいきなり出てきて、気づいたらシッマの怪我も何も無かったんや…」
よく分からないが、怪我が一つもないところを見ると信じるしかないのだろう。
「あ、目ぇ覚めたんやな!おはよぉしっま」
バッと声のした方を向けばゾムがいた。ニコニコとご機嫌な様子でこちらをみた後、今校内で行われている事について説明された。
「やから、しっまも大先生もみんなが助けにこんとここから出られへんからな!まあ、今は特別に出してやるけど…」
そう言って硬い鉄扉を開けどこかへ走って行った。俺と大先生は恐る恐るといった感じで扉から出た後、走って校舎へ向かった。
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2人を特別に出してからぼくはある違和感を感じた。
なぜ、しっまの怪我が治ってる?
誰が治したんだ…?意味が分からないぼくはあの謎の執事さんがいる所に向かった。なんとなく、事情を知ってそうだったから。
「なあ、執事さん!なんでしっまの怪我治ってんの?」
「…ゾムさんでしたか。理由は簡単ですよ、私が治したんです。流石に死んだら鬼ごっこが出来なくなると思いまして…余計でしたかね」
「ううん、全然!納得したわ!ありがとうな」
「いえいえ、ではまた」
そう言うとどっかに消えてった。
また鬼ごっこを再開しなきゃ。そう思ってぼくは校舎へ走っていく。しっまと大先生が校舎に逃げていったはずだから。多分、みんなと合流したいんだと思う。まあ、みんな合流させてあげないけど。だってこれは鬼ごっこなんやで?合流したほうがおかしいやろ?
そうこうしているうちに1人見つけた。かなり焦っているように見えた。まだ逃げてなかったんかなぁ。でも…もう見つけちゃったから。
ぼくは刀をしっかりと握り直し、さっきよりも全力で振った。
はずだった。
なにかに遮られてうまく刀を振れない。
なんだと思っているとそれは見覚えのあるカマだった。らだ男先生のカマ。なんでここに?
「おらゾムゥ!大事な俺の生徒には触れさせねぇぞ?」
あーあ。せっかく捕まえられそうだったのに。
でもさっきの恐怖から腰が抜けて動けないみたい。
かわいそうに。顔は絶望に染まり、歯をガタガタと言わせている大先生。また捕まっちゃうね。残念。
気を取り直して刀を振ろうとすれば今度は周りが見えなくなった。おそらくこれは消化器。誰か合流したんかな。煙が収まるまで、じっとして辺りに神経を尖らせる。これでどこにいったか分かるから。
まるで、暗殺者みたい。
でも、ぼくの家系は代々忍者だから暗殺者より忍者の方がいいな。
やっと煙が消えた頃、ぼくはみんなが向かったであろう方向へ走った。
大先生はいつの間にか消えてた。
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とっさにカマを投げたせいで俺の身を守るものが無くなった。
「鬱島、大丈夫か?」
「先生ぇ〜!!!!怖かったぁ!!!」
鬱島を抱えながらグラウンドへ走っていく。ここなら障害物がないけど集まりやすい。ゾムが来る前にそう全員に言っておいたからグラウンドにいるはずだ。
「あ、猿山先生」
「ん?桃瀬!よかった…怪我は?」
「ないです。でも…コネシマが迷子になりました」
「は?」
「えっとーさっきまで一緒に居たんですけど…気づいたらどっかに行ってしまって……」
「おいおい……まじかよ……」
「トントン、ロボロは?」
「あいつなら…コネシマ探しに行ったで」
「うーん、多分だけどゾムは2人を捕まえると思う…だからあらかじめ檻の前で待機する」
「でも…3人で向かったら流石にバレません?」
「いいや、俺は行かない。カマ置いてきたから取りに行かないと」
「え、じゃあ…僕ら2人だけ…?」
「俺は2人を信じて言ってる。安心しろ!ゾムを2人の元に近づけない」
「っ……わ、かりました……」
この時、俺たちは気づいていなかった。ゾムは思っている以上に気配に敏感で、耳や目がいいという事に。ましてや、忍者の家系なんて思ってもいなかった。
俺は2人を檻の近くに待機させ、カマを取りに行った。
前に広がる光景はまさに地獄。
全てがスローモーションに見えた。
コネシマとロボ太はすでにゾムの手によって捕まっていた。2人とも刀で斬られて目には光が灯っていなかった。
「あ、らだ男先生。カマならここやで」
ゾムの目は焦点があっておらず、本能的にヤバいと感じた。ゾムの握る刀を咄嗟に見た。
刀の刃がボロボロだった。
おそらくあと2、3回使うと壊れるだろう。
ならば。
そう思い俺はカマを拾ってゾムに斬りかかった。
すると、ゾムも刀が壊れる事に気づいているのか俺の斬撃を華麗にかわし、逃げていった。
俺は振り返って檻の方へ走った。
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やばい。迷子になったコネさんを誘導しているとゾムに見つかった。
急いで逃げていると猿山先生のカマがあった。
俺はそれを咄嗟に拾いゾムめがけて振り下ろす。しかし俺の攻撃は無惨に終わり、2人ともやられてしまった。意識が消える前に見たのは泣いているゾムの顔だった。俺はおもむろに手を伸ばそうとして、意識が途切れた。
その後、目を覚ますと檻の中だった。
斬られた傷はなく、隣ではコネさんが座っていた。
そして檻の外にはみんながいた。どうやら俺の目が覚めるのを待っていたらしい。
「よし、みんないるな。まず俺からゾムについて一ついいか?」
「ゾムさんについて?」
「ああ、ゾムが使っている刀あるだろ?あれ…もう少しで壊れると思う」
「えっ!!本当ですか!!?」
「ああ、かなり刃がボロボロでゾム自身も壊れると勘づいているっぽいんだ」
「……俺からもええか」
「ん?ロボロもなんかあるん?」
「ゾムな、俺とコネさん斬った後泣いてたんや」
「?どういう事や?」
「俺もなんで泣いてるんか分からんけど、すごい悲しそうな顔しててん」
「ロボロの見間違いちゃうん?」
「そうそう、あいつ俺達を斬る前に一回斬ってるし」
「俺が鬼になった時、感情とか全部なくて…頭の中はただ、殺せしか無かったからゾムも多分そんな感じだと思うんだけどな…」
「じゃあ、最後に俺から…」
「トントンもなんかあるん?」
「みんな報告多いな」
「次いつ集まれるか分からんし…俺からはこれについてや」
そう言ってトントンはバッとみんなが見えるように本を出した。
「本…?」
「ただの本ちゃうねん。これな、鬼を封印する為の方法が書いてある本やねん」
「っ!!!!!?それなら!!!」
「そう、ゾムを封印出来るかもしれへんねん」
「ただ…それがゾムのためになるかどうかは分からんけどな」
「ゾムのため?俺らゾムに斬られたんやで!?今更あいつのためとか優しすぎるやろ」
「おいコネシマ…心無い発言やめろや」
「だってそうやろ。あいつのせいで何もかもぐちゃぐちゃになったんやろ。あいつが封印解かんかったら俺たちは平和に、安全に暮らせてたんやで!?」
「………」
「と、取り敢えず…封印の方法読み上げるな…?」
「頼んだ。コネシマは頭冷やして聞けよ?」
【封印するためには鍵が必要】
【鍵は秘密の部屋にある】
【秘密の部屋に入るためには鬼の刀が必要】
「刀……」
「ゾムの持っとるやつか…」
「どうするん、封印。やるかやらんか決めんと」
「俺はやった方がいいと思う…」
「僕もそう思う……」
みんながそれぞれにした方がいい、そうするべきだ、と言い合う。
数分後、ゾムから刀を奪うために動く人と秘密の部屋を探す人に別れて行動する事となった。
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次回「鍵」
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2話、沢山のいいねありがとうございます!
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