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第9話
〖少し昔話〗
――博麗神社、縁側。
湯呑みから立ち上る湯気。
魔理沙は煎餅を頬張り、オリジナルの霊夢はお茶を啜る。
そして亜霊夢は、どこか懐かしそうにその光景を見ていた。
魔理沙「しかし不思議なもんだぜ」
魔理沙「同じ顔が二人並んでお茶飲んでるんだからな」
霊夢「見てると変な気分になるわね」
亜霊夢「私もよ」
しばらく沈黙が流れる。
そして。
亜霊夢は湯呑みを置き、小さく微笑んだ。
亜霊夢「少し、昔話をしましょうか」
魔理沙「ん?」
霊夢「昔話?」
亜霊夢「ええ」
亜霊夢「私の世界の話」
魔理沙「面白そうだぜ」
亜霊夢「そうね……」
亜霊夢は空を見上げた。
亜霊夢「私の世界の紫は、今のあなた達が知ってる紫より少し大人びてるの」
霊夢「へぇ」
亜霊夢「私が小さい頃から、ずっと世話を焼いてきて」
亜霊夢「お母さんみたいな、おばあちゃんみたいな」
亜霊夢「そんな人だったわ」
魔理沙「へぇ、意外だな」
亜霊夢「魔理沙も今とあんまり変わらなかった」
魔理沙「当然なんだぜ」
亜霊夢「勝手に神社に来て」
亜霊夢「お茶飲んで」
亜霊夢「勝手に人の煎餅食べて」
魔理沙「なんか悪口混じってないか?」
霊夢「事実でしょ」
亜霊夢「ふふっ」
魔理沙「笑うなよ」
亜霊夢「ごめんごめん」
その笑顔は。
先程までよりも自然だった。
霊夢「それで?」
亜霊夢「?」
霊夢「昔話って、それだけじゃないんでしょ」
亜霊夢「……」
魔理沙も、何も言わずに待っていた。
亜霊夢は少し俯く。
亜霊夢「そうね」
亜霊夢「本当は……」
亜霊夢「もっとたくさん話したいことがある」
亜霊夢「でも」
亜霊夢「今日は、楽しい話だけにしておくわ」
魔理沙「……」
霊夢「そう」
霊夢はそれ以上聞かなかった。
魔理沙も。
なんとなく。
今は聞いてはいけない気がした。
亜霊夢「そのうち、話すわ」
亜霊夢「全部」
魔理沙「急がなくていいんだぜ」
霊夢「そうね」
霊夢「暇だけはたっぷりあるし」
魔理沙「お前が言うと説得力あるな」
霊夢「うるさい」
三人の笑い声が響く。
一方。
亜霊夢世界の
亜幻想郷の紫もまた。
誰もいない博麗神社で、静かに空を見上げていた。
亜紫「……笑えているかしら」
娘のように育てた巫女を想いながら。
ただ、幸せを願うように。
コメント
1件
ああ、めちゃくちゃ良かったです……。同じ顔の霊夢が二人並んでお茶を啜る情景がもう、すごく絵になる。亜霊夢が「楽しい話だけにしておく」って笑顔で切り上げたところ、逆にその奥にある重みがぐっと伝わってきて胸が締め付けられました。そしてラストの亜紫の独白——「笑えているかしら」。たった一言なのに、別世界の距離を超えた愛情の深さが滲んでて、読み終えた後もずっと余韻が残ってます。この“今はまだ語らない”選択、続きが待ち遠しいです。