朝から仕事だった渡辺と佐久間は楽屋で2人、テレビを見ていた
「今日は快眠特集だって…あっほら…涼太出てきた!」
佐久間の声に耳を傾けながら、宮舘の出ているテレビを見る
「最近、凄く良い抱き枕を見つけたんですよ…」
快眠の秘訣を聞かれた宮舘がそう答えていた
「抱き枕だって!気になるよなぁ〜」
佐久間が渡辺に同意を求めると
「………」
「おい翔太…お前何で、そんな変な顔してんの?」
渡辺は何故か、難しそうな顔をしていた…
「分かった!お前、寝不足なんだろ!俺と一緒に後で涼太に抱き枕の事聞きに行こうぜ!」
佐久間はそう言って渡辺を誘い
「はぁ…」
渡辺は、ため息でそれに応えた
◇◆◇◆
「涼太、遅い!」
宮舘が帰宅すると、玄関で仁王立ちした渡辺が迎えてくれた
「ごめんごめん。ちょっと寄り道してたから…」
そう言って見せてくれたのは、渡辺の大好物のお惣菜
「まぁ、今日は許してやる」
お調子者な渡辺に、思わず宮舘は笑ってしまい
「何か言いたい事でも?」
「いや別に」
仲良く揃ってそれを食べ、笑い合って過ごしていると
あっという間に夜も更け…2人は寝る準備を始めたのだった
◇◆◇◆
「翔太、ほら」
宮舘がベッドに入り、自分の隣の空いたスペースをポンポンと叩く
「お前、今日人の事【凄く良い抱き枕】とか言ってただろ…」
「えっ…翔太見てくれたの?」
「楽屋で佐久間と2人で見たんだよ…あの後【一緒に、抱き枕の事を聞きに行こう】って大変だったんだからな…」
「そうなんだ、ごめんごめん」
笑いながら謝ってくる宮舘は、きっと悪いなんて…1ミリも思っていないのだろう
「でもさぁ、本当に翔太は最高なんだよ…柔らかさとか、フォルムとか…」
「人の事、フォルムで考えないでもらえるかな?」
そう言って怒ると、また宮舘に笑われた
◇◆◇◆
頭の上から規則正しい寝息が聞こえて来る
『涼太、今日もぐっすりだな…』
最近よく眠れないと言う宮舘に【人肌に触れていれば寝られるかも知れない…】と頼まれて、抱き枕の真似事をしたのが始まりで…それから随分この関係を続けている
「人の気も知らないで…」
前々から涼太に好意を抱いていた俺は、好きな奴から頼み事をされて何も考えずにOKしてしまった
「この状態で眠れるわけないだろ…」
抱き締められた腕の中で、ポツリと呟く
顔を上げれば涼太の顔がすぐ側にあり…しばらくジッと見つめて焼き付けた
「涼太、好き…」
気持ちが溢れ思わず言葉に出てしまう
きっと涼太は俺の事を【維持費のかかる抱き枕】位にしか思っていないのだろう…
悔しくなって目を閉じると、いつの間にか渡辺はぐっすりと眠ってしまっていた
「……やっと眠ったか…」
ようやく眠りについた渡辺の寝息を耳で感じ
ゆっくりと宮舘が目を開けた
「………」
一部始終聞いていた宮舘は、愛おしそうに渡辺の顔を見つめて微笑んでいる
自分が寝ている時にしか伝えてくれない愛の告白に、毎回心揺れていた
そっと髪に触れてキスを落とす…
「!」
渡辺が身じろぎをして、起こしてしまったのかと一瞬焦ったが
身体の角度をほんの少し変えただけで…またそのまま寝てしまう
『全く…』
ため息を吐いて、頬に触れた
『我慢してるのは俺も同じだよ…』
下手な言い訳をして誘ったせいで、中々本当の事を言い出せないでいる
「翔太を抱きながら眠るなんて、拷問だろ…」
【本当に眠れなくなりそうだ…】と、目を細め苦笑いして…
腕の中で気持ち良さそうに眠る、鈍感な幼馴染に囁いた
「こんな事、好きな奴以外に頼む訳ないのに…早く気付いて、俺の大事な眠り姫…」








