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オレンジ色の夕日が生徒のいなくなった教室を斜めに切り取っている。
カサカサと、新一が机の上に広げた難解な専門書をめくる音だけが響いていた。
「なーあ、工藤」
「あ?」
前の席の椅子を後ろ前にして座り、背もたれに顎を乗せた黒羽快斗が、退屈そうに声をかけてくる。手元では、いつの間にか取り出したトランプがパタパタと生き物のように動いていた。
「お前さ、いつも殺人事件だのなんだのって物騒なことばっかり考えてんじゃん? たまには違う毛色のやつとか興味ないわけ?」
「違う毛色?」
「そう。……例えばさ、今世間を騒がせてる、あの『怪盗キッド』とかさ」
手品師の指先がピタリと止まる。快斗はできるだけ「ただの世間話」を装って、ピエロの仮面の裏で新一の表情を盗み見た。
「……キッド? なんで急にあいつの名前が出てくるんだよ」
新一は本から目を離さないまま、めんどくさそうに息を吐く。
「いや、だってあいつ、お前みたいな探偵をいつも綺麗に翻弄してんじゃん? お前、あいつのこと大嫌いなんだろ?」
――どうせ『あんなコソ泥、早く捕まえて監獄にぶち込んでやる』とか言うんだろうな。
快斗は少し自嘲気味に、次の言葉を待った。正体を隠して同じ学校に通っている以上、自分たちは絶対に交わらない光と影だ。
しかし、返ってきたのは沈黙だった。
不思議に思って快斗が顔を上げると、新一は本をパタンと閉じ、夕暮れの窓の外を静かに見つめていた。
「……嫌い、とは違うな」
「へ?」
「ぶっちゃけさ」
新一が、少しきまり悪そうに髪をかきむしる。
「あいつの盗みの技術とか、現場の状況を掌握する頭の回転の速さは……正直、認めてる。あいつがただの犯罪者じゃなくてさ。もし、普通の奴として出会ってたら……事件の捜査で、最高の相棒(パートナー)になれたかもしれないって、たまに思うんだよな」
「――――ッ!!?」
心臓がドクン、と大きな音を立てた。
ポーカーフェイス?
そんなもの、一瞬で消し飛んだ。快斗の顔が、夕日よりも赤く染まっていく。
コメント
1件
ちょっと工藤新一ってば、普段ツンデレなくせに急にどストレート過ぎん??「最高の相棒になれたかも」って……それ、快斗の前で言っちゃってる時点でもう完全に運命じゃん!!🦋💕 内心ドッキドキの快斗の反応見てこっちまで照れるわ、エモすぎて泣く😭✨ この二人のすれ違いと絶妙な距離感がもうたまらんのよ〜!!