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君に腐った世界を委ねよう

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君に腐った世界を委ねよう

5 - はじめてのおつかい

♥

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2024年10月23日

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深夜、途切れ途切れの街灯。

車のクラクションが淋しく響く。


「着きましたよーおどろくさん、起きてください」


「あーあー爆睡だ…」


「まぁ真夜中ですしね…今日は私達も早めに寝ましょっか」


大体の荷物の運搬は終わっていたらしく、

もともと俺達は荷物が少ないせいもあり、(しぇいどさんのシビアすぎる断捨離のおかげだろう)、1時間程でほとんど引っ越しが終わった。


俺達の新天地、いわば新たなる「巣」は、王都から少し離れた街にある商店街のビルの一角。


治安はそこそこで、髪染めのチンピラなんてそこらにいるような街だった。



やっといろいろ片付いて、1時半、しぇいどさんと2人で夜食を食べた。

おどろくちゃんには内緒で、つけ麺を大盛りでしぇいどさんに作ってもらった。

彼女は驚くほど料理上手で、得も言われぬうまさだった。

鶏ガラスープとニンニクの旨味。ちょっと高い豚バラ肉。こんなにうまいものを食べたのは戦前以来だろう。それほど美味しかった。


そして初めてブドウ酒というものを飲んでみた。

今思えば未成年で酒なんて早熟すぎるし、子供に酒を売りつけるあの街もあの街だった。


ブドウ酒というんだからブドウジュースのように甘いものだと思ったが、思っていたよりほろ苦く、「大人な味」だった。いきなり赤は子供には早かった気もするが。


しぇいどさんは酒好きで、ワインをがぶがぶ飲んでいたが、案の定強い方ではないらしく、ずっと「私の嫁…フェアリー…」「緑の悪魔め…」「ドレディア愛してる」みたいなことを連呼するもんだから、まあそのときは大変だった。


しぇいどさんを介抱しながら食器の片付けもしたものだから、結局寝れたのは丑三つ時を過ぎた頃だった。








翌朝8時半、おどろくちゃんが花瓶を割る音で目が覚めた。


幼い彼女なりに、まだ寝ていた俺達を気遣って、しぇいどさんの日課である花瓶の水交換をしてくれていたらしい。


朝から胸が暖まった。

あんなもの、きっとそこら辺に売っているし、また買えばいいと2人でおどろくちゃんに伝えた。





やっぱり俺達は、組織とか、幹部とかそういうのは向いていない。

このまま、「普通の家族」としてすごしたいと思ってしまったことは、我儘だろうか。


だんだん人といることが好きになって、戦前と比べたら大きな成長だろう。

ただ、そこに、今に、少しでもひびが入ってしまったらすぐにこわれてしまいそうで、ちょっとだけ怖かった。






「第2回、あーっと、…かいぎ!はじめるのだ!」


「拍手ー」


「えーと、今から割と真面目な話します」


「うん」


「組織、解体したじゃないですか」


「そだね」


「もといた情報屋、どっかの別組織に買われたらしいんですよね」


「は?」


「なので、簡潔に言いますが情報屋がいません」


「じょーほーやってあれなのだ、なんか情報集めるやつ!」


「はい、その情報屋がいないんです…」


「俺たちだけでどうしろと…」


「そこで!たぶんコミュ力があるお二人にお願いです。いい感じの情報屋、拾ってきてくれません?」


「ちょちょちょタンマタンマ」

「しぇいどさんは?なんか情報系できそうじゃん」


「私パソコンとか触ったことなくて…」

「なんにせよこの通告が入ったのもついさっきなんですよ…買われやがったあいつから直々に…」


「そーゆーしぇんぱいはどうなのだ」


「ッアー…ハハハ…」


「でしょ?だから探しに行かなきゃ」


「しぇいどしゃんは残るのだ?」


「あなたがたのどちらかが残るってなるとなんだか心もとないんで…」


「おい凸さんに失礼だぞ〜!」


「そーなのだ!」


「まあそんなわけで、お二人は勧誘とか得意そうじゃないですか」

「ついでに組織も大きくしたいですし、フィーリングでいい感じの若者を拾ってきてください」



そういってしぇいどさんは「おつかいメモ」というものを俺たちに渡した。




半ば強引に送り出されたが、たまには朝買い出しに行くのも悪くないだろう。


錆びたドアノブに手を伸ばした。

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