テラーノベル
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地方ロケの夜、スタッフの予約の手違いでキングサイズのワンルームに通されたのは、夜も更けた頃だった。
「マジかよ、ベッド一つじゃん」
勇斗は部屋を見回して苦笑した。キングサイズのベッドがどんと中央に鎮座している。スタッフは平謝りで別室を探してくれたが、あいにく満室だった。
「はやちゃん、俺寝るのソファでいいから…」
柔太朗が申し訳なさそうに言う。
「何言ってんだよ。一緒に寝りゃいいだろ、男同士なんだから」
なんてことないフリをして、勇斗は荷物を部屋の隅にどすっと置いた。
勇斗は柔太朗が好きだ。もう何年も前から片想いしている。男同士、ましてやその美貌で男女問わずモテまくる柔太朗との恋が稔ることはない。ずっとこのままでいよう。そう心に秘めていた。
「久しぶりだね。こうやって2人だけなの」
柔太朗がベッドに腰掛けて話しかけてくる。
「そうだなー。撮影中はバタバタするし」
柔太朗がクラスメイトと話すように楽しそうに口を開く。
「はやちゃんてさ、彼女とかいるの?」
……ぶっ込んできたな。勇斗は飲み物を一口含んでから、首を横に振った。
「いないよ。柔は?」
「俺もいないよ。まあ、好きな人はいるんだけどね」
その言葉に、勇斗の心臓がドクンと鼓動した。表面は平静を装いながら、飲み物を握る手に力がこもる。
「へえ、どんな人?」
「うーんと、背が高くて、優しくて、面倒見がよくて、でもちょっと不器用なところが好きかな。顔もすごいタイプ」
柔太朗の表情がほどけ眉尻が下がり、デレデレと話だした。勇斗の耳にはその言葉がドロドロと呪いのように重く響き、心の中がずしりと重くなる。
─── 聞きたくない。
「えー、それって、もしかして俺のこと?顔は自信あるんだけど!」
ヘラヘラと冗談めかして聞いてみる。柔太朗は一瞬固まってから、慌てて笑った。
「ち、違うよ! はやちゃんじゃないって。もっと……うん、全然タイプ違うし」
違う、と即答された。その瞬間、勇斗の心はバリンと割れ、割れた隙間からドス黒い感情が雪崩れこんでくる。
知らない誰かが、柔太朗の「好き」を持っていく。柔太朗の初めてを、その笑顔を、その声を。
「そっか」
その声色は低く響いた。
勇斗は持っていた飲み物をテーブルに置く。
「はやちゃん?」
「なあ、柔太朗。その人とどこまでいったの?」
「え……まだ何も。告白もしてないし。俺、そういう経験少ないからよく分かんないし」
まだ何も。柔太朗の言うことが本当なら、つまりキスも、その先も、誰にも触れられていない。
(……奪われたくない)
自分から話を振っておいて、頬を赤らめる柔太朗のあどけない顔が、勇斗の理性をぐらりと揺らした。
「じゃあさ、俺が教えてあげようか」
「え……?」
柔太朗が立ち上がるより早く、勇斗はその肩を掴んでベッドに押し倒した。
ほっそりとした柔太朗に比べ勇斗とは元々かなりの体格差がある。柔太朗の両手首を掴み体重をかけて逃げられないようにしながら、至近距離で見下ろした。
「はやちゃん、何言って……」
「うるさい」
言葉を塞ぐように、キスをした。柔太朗の唇は柔らかくて甘い味がする。バタバタと抵抗する脚を抑え込み、舌を無理やりねじ込む。歯列をなぞり上顎をくすぐると、柔太朗の喉から小さな悲鳴が漏れた。
「んっ……や、はやちゃん……」
柔太朗の目は潤んで恐怖と困惑が混ざっている。慣れないキスに息があがり、サラサラとした髪を乱して、首筋を桜色に染めるその姿は勇斗の心を煽った。
「お前の初めて、知らない奴にやるくらいなら——俺がもらう」
シャツのボタンを乱暴に外していく。晒された肌は透けるように白く、体は恐怖で微かに震えていた。
「やめて、はやちゃん、ほんとに…!」
「やめない」
首筋の薄い皮膚をきつく吸い上げ、薔薇色の瘢痕をつける。柔太朗の腰が跳ねた。初々しく震える乳首を唇で喰み、舌で転がし、吸い上げ、白雪のように純白の胸へ無数のマーキングを残していく。
勇斗は片手でベルトを外した。下着ごと引き下ろすと、柔太朗は腿を閉じようと抵抗したがその間に膝を割り入った。
「経験ないんだろ? 力抜けよ。余計痛くなるだけだ」
「っ……なんで、こんなこと……」
「柔太朗が悪い」
勇斗はベッドサイドに置いていたポーチからワセリンのチューブを取り出した。こういう行為に向くものではないが何もないよりはマシだろう。それを指先に取り、柔太朗の後孔に塗りつける。ひくりとその身体が波打った。
「やだ……そんなところ……っ!」
「すぐ慣れる」
指を一本、ゆっくりと埋め込む。こういった行為に全く使われたことのないそこは、たった一本の指でさえぎゅうぎゅうと締め付けて、侵入を拒んでいた。勇斗は自分のものが痛いほど反応するのを感じた。
「はやちゃん、ほんとに、お願い……」
指を増やしながら、勇斗は柔太朗を見下ろし脅すように言う。
「誰が好きなんだよ」
#ご本人様とは一切関係ありません
あんり
444
#ご本人様には関係ありません
ち び
1,327
「違う……違うよ……」
「何が違うんだ」
指を引き抜き昂ったものを押し当てる。柔太朗の目が、恐怖で見開かれた。
「はやちゃん、それ、絶対無理——」
「無理矢理にでも、感じさせてやるよ」
ぐぐっ…と滾ったものを押し込む。狭い入口が悲鳴を上げて、柔太朗の身体が弓なりに反った。
「いたい……! はやちゃん、いたい……!」
「もう少しだから、我慢しろ」
奥まで一気に埋め込むと柔太朗の中は熱くて、きつくて勇斗は思わず息を呑んだ。今はただ、柔太朗のことを傷つけてでも自分のものにしたいと思った。
「動くぞ」
「ま、って——あっ……!」
ゆっくりと中を突き始めると、柔太朗の声が苦しみから変わっていく。痛みの中に、微かな快感が混ざり始める。
「はやちゃん……っ」
「気持ちいいんだろ」
「ちが……あ、あっ……!」
「正直に言えよ」
勇斗は腰を振りながら、柔太朗の首に手をかけた。指が喉仏をなぞり、ゆっくりと圧をかけていく。
「かっ……はっ……!」
「俺を選べよ、柔太朗」
意識を失う手前のギリギリまで細い首を締め付けながら、さらに深く突く。柔太朗の目から涙が零れ、たらたらと粘度の高い涎を垂らしながら顔を真っ赤にして酸素を求めて口が開く。その苦しげな表情が、たまらなく愛おしい。
「誰にも渡さない。知らない奴に、お前のこんな顔見せたくない」
「はや……ちゃ……くるし…っ」
「俺だけのものになれよ」
苦しさに柔太朗の身体がびくびくと痙攣して、内壁がぎゅっと収縮した。
「出すぞ…っ」
柔太朗の奥で果てながら勇斗はようやく首を解放した。
「はぁ……っ、はぁ……」
荒い息遣いが静かな部屋に響く。柔太朗はぐったりとベッドに沈んだ。勇斗に無理矢理乱された衣服は無惨に散らされ、顔は涙や涎でぐしゃぐしゃだった。
「……最低だ……俺」
勇斗は呟いて、柔太朗の横に倒れ込んだ。勇斗の胸中を強い後悔が襲う。これで終わりだ。明日から、顔を合わせることは愚か、いままで守ってきたもの全てを失うだろう。
「……はやちゃん」
小さな声で、柔太朗が呼んだ。
「なに……」
「俺が好きな人……」
柔太朗はゆっくりと上体を起こして、勇斗を見た。ケホケホと苦しそうにしながら。
「はやちゃんのことだよ」
「……は?」
「ずっと前から。でも、はやちゃんは俺のことそういう風に見てくれないと思ってたから」
勇斗は言葉を失った。今の今まで自分が無理やり犯したその相手が、自分を好きだったと言う。
「……なんで、……さっき『違う』って言ったじゃん」
「だって、はやちゃんが冗談で聞いたと思ったし。それに……こんなことになるなんて思ってもなかったから…」
柔太朗は悲しそうに笑った。その笑顔が、勇斗の胸を締め付ける。
「……俺、こんなことして……」
「うん、まあ首絞めるのはやりすぎかな…。でも、はやちゃんが俺のこと独り占めしたいって思ってくれてるのは分かったよ。」
「………ごめん、本当にごめん。謝って済むことじゃないけど、許してもらうためなら、これからなんだってして償うよ。だから…嫌いにならないで…」
勇斗は懇願した。
「はやちゃん、俺が好きなんでしょ?だったらさ、今ちゃんと告白して。それで許してあげる」
勇斗は真っ直ぐと柔太朗の目を見つめた。
「…柔太朗、お前のことが好きだ。ずっとずっと昔から。だから…付き合ってください!」
柔太朗が優しく微笑みかける。
「喜んで」
勇斗は柔太朗の頭を引き寄せて今度は優しくキスをした。さっきまでの乱暴なものじゃなく、大切な宝物を扱うように。
「もう一回、キスしていい?」
「……うん」
二人は手を繋ぎベッドに倒れ込んだ。互いの名前を呼び合いながら。
コメント
2件
作者です。王道ってやっぱりいいですよね。🩷さんは愛がデカそうなところが好きです。
みぅです🤍🥀 第6話、読み終わりました… もう、冒頭の「違うよ」の瞬間から心臓がギュッてなったよ。勇斗くんの苦しさとか独占欲とか、全部伝わってきて読んでるこっちが息できなくなりそうだった。でも最後の両想いが通じ合うシーン、本当に良かった…泣きそうになりました。 首絞めは確かにやりすぎだけど(笑)、それでも「俺のこと好きなんでしょ?告白して」って言える柔太朗くん、強くて優しくて素敵だよ。たぬきさんの描く感情の描写、すごく丁寧でグッときました。続きも楽しみにしてますね🌙