テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
その夜、私はベッドに入っても眠れなかった。目を閉じるたびに、スクリーンに映った自分の姿が浮かんだ。
文化祭の準備なんて、何度もあったはずなのに、あの日のことだけがどうしても思い出せない。
スマホを開くと、真白とのトーク画面は消えていた。
でもロック画面には、通知だけが残っていた。
午後五時十二分
時刻だけの通知。
開いても中身はない。消しても、少しするとまた表示される。
まるで、その数字を忘れるなと言われているみたいだった。
次の日の昼休み、私はあおいを屋上裏に呼び出した。
あおいは昨日より顔色が悪く、目も赤かった。
「昨日のこと、覚えてる?」
そう聞くと、あおいは小さくうなずいた。
「真白のこと……全部、事故じゃないって言ったよね」
私がそう続けると、あおいはしばらく黙ったあと、かすれた声で言った。
「私、閉じ込めたの」
その一言に、胸が苦しくなった。
「でも、鍵をかけたのは私じゃない」
あおいは震える手をぎゅっと握った。
「私は、真白を中に残したまま出てきただけ。すぐ戻ればよかったのに、怖くなって逃げた」
その声は、泣くのをこらえているみたいだった。
私は何も言えなかった。
あおいはうつむいたまま続けた。
「そのあと、誰かがドアを閉めた音がしたの。私、振り向けなかった」
風が吹いて、屋上のフェンスがかすかに鳴った。
その音だけで、背筋が寒くなる。
「午後五時十二分って、何の時間か分かる?」
私が聞くと、あおいは一瞬だけ目を見開いた。
「それ……視聴覚室の廊下の時計が止まってた時間」
小さな声だった。
「真白がいなくなった日から、ずっと」
その瞬間、私のスマホがまた震えた。
画面には、真白から新しいメッセージが届いていた。
あの日、あなたも読んでた。
コメント
1件
午後五時十二分──その数字が時計の止まった時間だった、という展開、ゾッとしました。あおいが「鍵をかけたのは私じゃない」と震えながら言う場面、とても切なくて、彼女の怯えと罪悪感がひしひし伝わってきました。最後の「あの日、あなたも読んでた。」で、語り手にも何か隠された過去があると匂わせる終わり方、次が本当に気になります。伏線の張り方が巧みで、心理描写も重くて美しいです🌷