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「さて、話し合いを始める前に、我々幹部はまだ自己紹介が済んでいませんので、私からしますね」

リオルは自身のネクタイをきゅっと上げて、魔王の方から勇者の方へと向いた。

「改めて、私はリオル・ラインズ。魔王軍参謀にして、魔王様の補佐官を務めている。君たちの処遇は私が中心となって決めさせてもらう。いいね?」

「はい」

「よろしい。では次は、」

リオルは女の子にアイコンタクトをとった。女の子は勇者の方を見向きもせず、自己紹介を始める。

「……あたしはモニカ。水源エリアボスをやってる。馴れ合う気はない。以上」

「ちょっと、そんな言い方」

「いいじゃない。どうせすぐに出ていくんでしょうし」

リオルはすまなそうに勇者を見るが、勇者は何も感じてはいなかった。人間性が根本から違うのだ。勇者は人の感情を読み取るのが苦手だった。そのため嫌味や皮肉に気づかない。ケロッとしている勇者を見たモニカが更に機嫌を悪くした。

「次はおれな!ヴェントリス・ドラコン!火山エリアボスをやってる!よろしくな!ユウ!」

「……ユウ?」

「ん?名前なんでもいいんだろ?なら勇者のユウだ!」

「安直〜」

「んだと!」

案外モニカとヴェントリスはいいコンビなのかもしれない。勇者はそう思い始めた。

「次は俺か。ゲイル・ホーキンス。砂漠エリア担当だ。君たちには懐疑的だが、まあ決まったことは仕方がない。よろしく頼む」

「よろしく……お願いします」

最後に残った気弱な女性は、やはり話すのが苦手なようで、勇者をチラチラ見るばかりで、声が詰まって出ないようだった。

「……名前だけでいいぞ」

すかさずゲイルが助け舟を出す。その言葉に頷いた女性は、勇者の方へゆっくりと向いた。

「………………フラン・ハインド、です。し、んりんエリアを担当してます」

言い終わると、すぐに顔を伏せてしまった。

「自己紹介は終わったな。では、」

「ん?魔王は名乗らないの?」

「魔王“様“だ」

勇者の呼び捨てにゲイルが反応する。

「良い。好きに呼べ。我は魔王としてそれ以上でもそれ以下でもないのだ」

「……そっか」


「それでは会議を始めます。初めの議題は『勇者は何故魔王城へ来たのか』」

「まずはユウの見解を聞こう」

 幹部たちが一斉にユウを見る。

「何故って、……」

「もう我を倒す気はないのだろう?ならばなぜ貴様はここにいる?マーヤもだ。なぜユウについて行こうと思った?」

「それは、勇者様をひとりにはできないと思ったからです!勇者様は、私がいないとまともに食事もしなくなります!ついて来ない選択は、見殺しにするようなものです!」

「なるほど。自分のことに無頓着なのか」

「……僕、というか、僕たち、帝人国に追われてるんだ」

 勇者のとんでも発言に場が凍る。いまいち理解できずにリオルが聞き返した。

「ん、それは……どういう?」

「お前帝人国の勇者なんだろ?なんで味方に追われるんだよ」

「僕たちは、帝人国を裏切って、己の任務を投げ出し、亡命して来たんです」

「亡命……」

「え、つまり、魔王様を倒せって国に命令されたわけじゃないの?」

 モニカが少し勇者に興味を持ったのか、ユウを見て首を傾げる。

「違います。勇者と呼ばれるからには、魔王を倒すべきだと思ったからです。魔王を倒せば……“本物の勇者“に…………なれると思ったからです」

「何それ。意味わかんない。じゃああなたは今偽物の勇者ってこと?」

「……」

 ユウの視線が下に落ち、瞳孔が揺れ始める。周囲はユウの異変に気づかない。ユウは目を見開く。今、まさに良くないことが自分に起こっている。黙ったままのユウの顔をそっと覗き込んだマーヤは、異変に気づき、ユウの下がった頭を両手で抱きしめて、緊迫した顔で周囲を見渡した。ここで初めて周りの幹部も魔王も、ユウの異変に気づき始める。

「おい、どうし」

「あのっ、ごめんなさい!ちょっと、勇者様体調が良くないみたいなので……その、」

 チラリと、マーヤは魔王を見る。魔王は素直に心配しているようだった。

「ごめんなさい。少し、待っててもらえますか。勇者様をベッドに寝かせて来ます。すぐ戻ります!」

 リオルと魔王は顔を合わせる。一体、勇者に何が起こったというのか。この短時間、一瞬で、体調が悪くなったとでも言うのか。マーヤは周りの動揺を無視して、ユウに手を貸し、会議室を出ていった。幹部たちは顔を見合わせる。今の状況の答えを誰かに求めるように。

「……何か、起こったのでしょうか」

「…………わからん」

 皆、最後にユウに話しかけたモニカを見る。決して責める意味合いではなかった。ただ、何が起こったのか、情報が欲しかった。

「あ、あたし何もしてないわよ?」

「いや、そうだよな。何もしてねーよ」

「…………?」

「今は……マーヤの説明を待つしかないだろう」


「戻りました。お待たせしました」

 そそくさと、ドアから入って来たマーヤが自分の席に座る。魔王がすぐさま問いかけた。

「何が起こった?ユウは無事か?」

「えっと、……無事、だと思います。今は意識はありません。少し寝れば治ると思います。…………ごめんなさい。正直、私にも何が起こってるのか、よくわからないんです。でも、原因は、きっと帝人国から亡命したからです」

「……今のが初めてではないのか」

「はい。亡命から1年。定期的にこうなります」

「なんで亡命なんかしたんだ?母国だろ?」

「……」

 マーヤが苦い顔をする。

「皆さんは、この島、アンファン島で起こっている戦争をどこまでご存知ですか」

「えっ、戦争?」

「……600年前、我々魔族と君たち帝人国が始めた戦争ならわかるが。話を聞く限り、この戦争ではないのだな?」

 静かにマーヤが頷く。

「今、帝人国は、周りにある3つの国、海人国、山人国、砂人国と全面戦争中です。勇者様は、帝人国を守る兵器として、戦争に駆り出されていました。それに耐えられなくなって亡命したんです……」

「……戦争の理由はなんだ?領土問題か?民族問題か?」

「おそらく、勇者様の父上、帝人国国王が、この島アンファン島を手中に納めたいと思っているからです。国王は敵対する者をひとりたりとも許しません。それから、戦争に拍車をかけているのが、宗教問題です。帝人国はジーラ教、他三国側はルイド教ですから。お互いに見下し合い、いがみ合っています」

「なるほど。それは何年続いているのだ?」

「戦争開始は幸暦633年、16年前です」

「……ここ20年、帝人国からの刺客がなかった理由がわかった。我々魔界との戦争に構う暇がなくなったということか」

「そうです。魔界は、帝人国から攻撃しなければ何もしてこないので。放っておいても問題ないと判断したのだと思います」

「舐められたものだな」

 ゲイルがジロリとマーヤを睨む。しかしマーヤではなく国王の考えということも理解できたため、すぐに視線を逸らした。

「君たちが亡命した理由はわかった。これからの会議、マーヤの意見が必要になるが、心配ならユウのもとへ行っても構わない。どうしたい?」

「いえ、ここにいます。心配したところで、勇者様が目覚めるとは限りませんから。それなら私は、勇者様の近くにいるより、勇者様が魔王城に居られるように、会議で信用を勝ち取る方を選びます。どうぞ、なんでも質問してください」

「……あんなに敵対心丸出しだったのに。急に丸くなるじゃない」

「私の意見と、勇者様のための意見は別として考えてますから。私は魔族が嫌いですし、信用しませんし、魔界にいたいなんて思いませんが、……今は勇者様の気持ちが最優先です」

「……よほどユウが好きなんだな」

「なっそんなことは言ってません!」

 わかりやすい。その場の全員がそう思った。マーヤは隠し事が下手なようだ。すぐ顔や態度に出てしまう。「そこが可愛いのだ」とユウが今後語ることを、マーヤはまだ知らない。


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