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財団からとある組織の研究資料の奪取、及び研究成果の破壊を指示され、最も成功率が高いだろうとして送り込まれた《シークレットグループ》のエージェント、ユイ。
平時であれば財団の研究員であるカオルの居候(自称・およめさん)として暮らしている彼女だが、こと隠れるという一点においてはグループ内でも、それこそボスでさえ彼女には敵わないのではとさえ思わせる逸材だ。
それ故に油断は無いが、気負いも無い。まさに理想とも言えるコンディション。
(かえったら、せんたくもの、とりこまないと)
……………油断は無いのだ。本当に。
「ちゃっちぃセキュリティ。はやめにおわらせちゃおっと」
そこから10分も経つ頃には既にユイは組織の施設内に潜入していた。ちゃっちぃセキュリティとは言うものの、並みの諜報員では入口の前に立つことすらままならないだけのセキュリティである。
当然、そこに守られた組織の人間はすっかり安心した様子で自らの研究に没頭している。ユイは軽い身のこなしでそのうちの一人の背後へ忍び寄ると、前触れなくその喉元に浅くナイフを突き立てた。
「がふっ!?ふっ、うっ!?」
「だまって。あなたがしゃべっていいのは、691ばんについてのじょうほうだけ。いいこにしてたら、なおしてあげる」
口を塞ぎながら喉元にナイフを突き付け、研究員が必死に首を縦に振るのを見てからゆっくりと口元の手を離す。
「691番なら西棟のエレベーターで地下に行った専用の檻に入っている!これで良いだろ、たすけっ──────」
「うん、いいこ。それじゃあ、らくになっていいよ」
必要な情報を手に入れると、ユイはそのまま研究員の肝臓を突き刺す。声にならない悲鳴を上げながら研究員は絶命し、ユイはその死体を適当な部屋に片付けると情報にあった場所へと向かっていった。
「…………ちのにおい。」
資料の奪取及び成果の破壊を命じられた691番、その実態はどうも生物兵器のようだった。檻と言われていた場所から漂うのは鮮明な血の臭い。この感じからしてさほど前に流れたものではないだろう。…………ただ、この状況はユイにとって好都合だ。元々血の臭いがするのなら、多少追加で流れたところでバレないだろう。
「バケモノあいては、ニガテなんだけどな」
仕事である以上は仕方ない。自らの獲物であるナイフを構え直すと、弾かれたようにユイは檻の中へと飛び込んだ。