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#ファンタジー
うにい
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谷崎爽奈
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#聖女
桜井正宗@オートスキル1巻発売
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コメント
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うわあ…ついに来ちゃったか、このエピソード😭✨ 「俺は飛ばない。」の重みが半端ない…。全部終わった後の静かな日常、坑道の底でガルドと過ごす選択、エヴァとの距離感、どれも切なくてエモすぎるよ…。 橋本コージとの「本命ヒロイン」の会話で笑ったけど、その直後の「魂が老けた」とか「半透明」って表現がめちゃくちゃ刺さった。 最後の「俺は飛ばない。」で全てを締める感じ、鳥肌立った…。完走お疲れ様でした、蒼き流星ボトムズさん…!💫
時は飛ぶ。
何も無かったからではない。
全てに決着がついたからだ。
その証拠に王国が滅びた。
王族が文字通り絶滅したのだから仕方ない。
遥か東方でアン王女なる幼君を擁立した連中が王国再建を宣言したが、王国人からも偽物扱いされ相手にすらされなかった。
冷淡にも見えるがその反応は極めて正しい。
本物を殺した俺が言うのだから間違いない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺の旅は終わった。
戦いに勝ち、富を築き、子を成した俺が遠出をした所で、もはやそれは旅ではなく道楽に過ぎないからである。
俺の物語も終わった。
構造的に成功してしまったからである。
まず地球では橋本コージから莫大なUSDTを譲り受けた。
最初は仮想通貨をイマイチ信用していなかったのだが、各国の中央銀行がアホみたいなペースで紙幣を刷るので俺達が保有する各仮想通貨の価格が相対的に爆騰した。
同時に各国政府がバカみたいに税率を上げたので、周囲の商売人が仮想通貨で決済をするようになってしまった。
いつの間にか橋本コージが王になっていた。
少なくとも日本語圏の最先端事業家は橋本コージの意向を伺いながらビジネスを立ち上げるようになった。
気が付けば、俺はテック系事業者グループの輪の中に居た。
知らないうちに慶應閥とも親交が深まっており、幼稚舎へのルートも皆が親切に教えてくれた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
異世界でも似たようなものだ。
破産し発狂したマグダリオンはエルフ総合大学付属病院のリモート精神鑑定により40歳児の状態まで幼児退行と診断された。
かねてよりブラック労働が問題視されていたエルフ社会において、これは一大センセーションを巻き起こし、かつて彼の直属の上司であったエルセンチュアの執行役員氏が何故かパワハラ批判を浴びて退任に追い込まれる事態に発展した。
マグダリオンの家族は変わり果てた彼を見て号泣したのだが、40歳というのはエルフ以外の種族にとっては分別盛りの年齢である。
(俺の目にはマトモな大人になったように見える。)
少なくとも人間種の基準ではチート級の有能なので、デサンタチームのキャラバンに同乗させて各国に派遣する事にした。
300年以上コンサルファームに勤務していた上に、少数種族相手に救世主活動を行っていた男なので、各国の問題を息でも吐くように解決して行った。
何よりの僥倖はマグダリオンが不動産業界リサーチを通じて、かつて俺が胡桃亭で親交を結んだドナルド・キーンに辿り着いてくれたことに尽きる。
彼は遥か南方の経済都市ゴモラタウンで権力者となっていた。
どうやら俺と同時期に宿泊していたチート少年とコレット嬢が結婚して王国を脱出したらしい。
(言われてみれば隣室から金貨を数える音と不気味な笑い声が聞こえた気がする。)
その逃避行で活躍したキーンはコリンズ夫妻から幹部の座を与えられたのだ。
俺達ニヴルは全く事情が分からなかったのだが、マグダリオン達が伝書鷹で《全力臣従すべし》と強く建言して来たので、魔王と語らって珍品や家宝を贈ってみた。
すると山の様に莫大な返礼品が届いたので、皆で腰を抜かして驚いた。
南方の連中が《魔族とドワーフ種は新時代の勝ち組に入った》としきりに羨ましがっているので、恐らくは賢明な判断だったのだろう。
いずれにせよ、異世界における政治経済の中心地は大陸最南端のゴモラタウンに移行した。
俺や魔王もちょくちょくと面白い偉業を達成しているのだが、衆目はゴモラタウンのみに向いていた。
そういう意味でも俺の物語は終わったのだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ゴメンなヒロヒコ。」
『別に親方が謝る事じゃないでしょう。』
「だって、俺はもうここから動けないぞ。」
『いやいや、ここは祝辞を贈る場面ですよ。』
「まあ、俺にとっては嬉しいんだが…
オマエの可能性を狭めてしまったみたいでなぁ。」
ガルドは金脈を引き当てた。
それも大当たりの大鉱脈だ。
前回買った坑道が大外れだったので、半ば不貞腐れるような気分で盆地の外れの不人気坑道を衝動買いしたのが幸いした。
自棄っぱち精神で真下に掘り進んだのも良かった。
氏族の歴史でも5本の指に入る大金脈を当ててしまったのだ。
これによりガルドの人生が決定した。
鉱脈を当てたドワーフは死ぬまで掘り続ける宿命を背負うからである。
そうしなければ家族に採掘権を相続させられないので、ガルドは本人の希望と関係なく余生を大金脈で過ごす事が決まった。
その弟子にして親族である俺も同様。
盆地の外れの坑道の底でガルドの雑用を務めている。
たまにロキ爺さんと隠居馬丁のコンビが小狡い笑みを浮かべて干し肉を持参してくるので、屑宝石や砂金をくれて追っ払っている。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
エヴァとはしばらく話してない。
疎遠になったからではなく、彼女がドワーフ的価値観での良妻賢母になったからだ。
決して夫の仕事に口出しする事もなく、甲斐甲斐しく子育てに努めて待ち続ける。
そんなテンプレ的な貞女になった。
子が産まれる前は、もっと茶目っ気があったのだが、その気配は完全に失せた。
父親のブラギがあれほど出世してしまったので仕方ない。
最近は婦人会で談笑する姿も頻繁に目撃されているようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
沼袋はインスタを止めた。
彼女は笑って何も言わないが、きっとアホらしくなったのだろう。
太郎の物心が付いたら鳥取を見せに帰省するそうだ。
沼袋被告の墓を建てたいと相談されたので、義母の説得を手伝う事を約束した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
遠藤父娘は相変わらずである。
とうとうTwitter上で醜悪なレスバを開始した。
イーロン・マスクが直々に苦言を呈する程に日本国のイメージを著しく貶めている。
次郎と三郎は悪い意味で世界一有名な双子になってしまった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
らぁら(本名)は正式に母親と絶縁した。
そもそもが前科者で重債務者だったので、家裁も親身になってくれた。
だが、らぁら(本名)は知っている。
自分が母親そっくりの気質を持っている事を。
自分が受けてきたネグレクトを我が子の一郎に与えてしまう事も予感している。
らぁら(本名)は今日も微笑の奥で絶望している。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ねぇ、飛呂彦君。」
『なんすかコージさん。』
「結局、キミの本命は誰なのさ?」
『本命?』
「いや、物語にはメインヒロインが必要じゃない。」
『ああ、そういう。
…うーん、俺はコージさんから真理を学びましたから。』
「お?
僕が珍しく役に立ってるの?」
『資産はちゃんと分散して1つの通貨に偏らせてはならない。
よって本命ヒロインなど百害あって一利なし。』
「うっわー。
それ奥さん達の前で言っちゃ駄目だよ?
この前みたいに僕までギャオーンに巻き込まれちゃうからね。」
『分かってますよ。
それもコージさんから学びました。
ポートフォリオは誰にも見せない。
女共には金輪際本音は漏らしません。』
「キミってホントに酷い奴だなー。
まぁ、でも僕が見て来た中じゃ1番資産運用の才能あるよ。」
『え?
マジっすか?』
「マジマジ。
投資って無感情な奴ほど適性高いからさ。
飛呂彦君は人の心が無いぶん有利なんだよ。」
『ああ、道理でコージさんは強い訳だw』
「僕をサイコパスみたいに言うなよーw」
『「あっはっはっはっは!」』
相変わらず俺は橋本コージの部屋の押し入れで暮らしている。
この男は俺がどれだけワープしても文句1つ言わずに面倒を見てくれるので本当に助かる。
最新のドラム式洗濯機でパリッと乾燥させた洗濯物を押し入れに置いてくれるのもありがたい。
流石にガルドの坑道で汚れたズボンを風呂場で洗ってくれた時は大いに恐縮したものである。
世話になりっぱなしも申し訳ないので、愛知で橋本を付け狙っていた連中を何人か始末してやった。
リストを見る限り厄介なのは2人しか残ってない。
スパンを空けて事故死を偽装するのがベターだろう。
幸い、バッテリーの発火事故が世界中で頻発しているからな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
水岡から推奨されたクラスメートの供養は行なっていない。
既に共和国のレストランで高橋と2人で皆の名前を読み上げた。
あれが俺の精一杯。
たまたま別件で再会した印西刑事も供養について語って来たので意識するようになり、気まぐれに栃木にある桧山克則の実家を見物に行った。
案の定、困窮していた様子だったので橋本に支援を頼んだ。
「えー、別にいいけどさ。
その桧山ってお婆さんは飛呂彦君にとってそんなに重要なの?」
『いや、縁があったのはその息子さんですね。
実母同様に顔も覚えてないっすけど。』
「ははは、りょーかい(笑)
じゃあ、その桧山さんは飛呂彦君のお母さんだと思って支援するわ。」
それで話は終わり。
以後一度も桧山の話題は挙がらないが、栃木の話題になる度に橋本がニコニコ笑うので何らかの救済は行なっているのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
須藤とは遠藤の次に険悪だったが村上翁の葬儀の日に決裂した。
幾ら俺でも恩人の生き方を嘲笑されて我慢出来る筈も無かった。
当時指名手配されていた須藤は葬儀帰りの足で知人のプライベートジェットに隠れて出国した。
皆で合議して千彦の親権を取り上げた。
やはりあの女には人の親になる資格はなかったのだ。
千彦の身柄を奪還する際、ドバイ上空で須藤と戦闘に発展した。
言うまでもなく惨敗した。
須藤の圧倒的パワーの前ではワープなど稚戯に過ぎなかった。
俺が最後の力を振り絞って放った渾身のワープクラッシュは【須藤流最終奥義・愛情反転憎悪無限大チャコちゃんリベンジャー】に一蹴された。
頚椎を損傷した俺は広大な砂漠に墜落し、天空で勝ち誇る須藤を仰ぎ見ざるを得なかった。
もっとも千彦を日本に持ち帰っても数日は気付かれなかったのも須藤らしかった。
或いは母性と戦闘力は反比例関係にあるのかも知れない。
今をときめく犯罪者だけあって須藤の【兆り人チャコちゃんチャンネル】は日本人に大人気である。
国内のワイドショーが須藤の余罪を暴く度にチャンネル登録者数と有料オンラインサロンの会員は増え続けた。
善男善女ほど須藤の悪のカリスマに惹かれるらしい。
まあ、パフォーマンスとは言え土魔法(極)で南海トラフを止めた英雄でもあるからな。
盲信者が生まれるのは仕方のないことだ。
須藤のチャンネルバナーに【やっぱり日本が1番♥】と記されているのは何重もの意味が込められているのだろう。
千彦の養育は村上幹康・由美子夫妻に委ねられる事になった。
たまに村上由美子がLINE通話で須藤と懐かしそうに話しているので、今の距離感は丁度良いのかも知れない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
千彦の虹彩には風魔法使い特有の輝きが宿っているので、この子の教育には細心の注意が必要であると感じている。
嫡男ガルドがハーフドワーフにしては頑健な骨格をしているのは母親の体内からラピスラズリ成分を摂取した為と予想している。
きっと魔法やらスキルやらは多少遺伝するのだ。
ただ、子供達がワープを継承した気配がないのは素晴らしい。
この異能は便利ではあるが、人生をショートカットする弊害が備わっている。
少なくとも俺はあまりに短期間に全てを済ませてしまった。
我が師ガルドも俺を見て「魂が老けてしまった。」と嘆く程である。
仕方あるまい。
俺はきっと人生の最終幕まで飛んでしまったのだ。
こんな風に使い尽くしてしまったので、ワープを行使する機会は本当に激減した。
ただでさえ半透明になった俺は橋本の押し入れとガルドの坑道に分裂して存在している。
用事がある者は押し入れか坑道に来訪する。
俺の顔つきはドワーフの様に気難しくなったらしい。
皆が言うならそうなのだろう。
遠藤がインスタに上げた【妖怪半透明】は勿論俺である。
3日程バズったが、慶一郎氏が選挙利用を目論んだ頃にはブームは終わっていた。
「ねぇ、ヒロヒコ。」
『何ですか、エヴァさん。』
「子育ても落ち着いたし、昔みたいに自由にしてくれて構わないのよ?」
エヴァは微笑を浮かべているが、人間種の俺がドワーフの様に坑道の奥に籠りっ放しなのを危惧しているのだ。
俺がここでくたばる事を秘かに決意したことも、きっと彼女には伝わってしまったのだろう。
『もう十分に自由にさせて貰いました。』
この言葉は半分嘘である。
結局、振り返ればワープを得てから俺が飛んだ場所は恐ろしく限られている。
きっと俺は目的の為にしか能力を行使出来ない性質なのだ。
その証拠にあれだけ海外旅行への夢を村上翁に語りながら、結局はドバイと香港以外に足を運ばなかった。
「でも、男の人は一生自由で居たい生き物なのでしょ?
叔父さんもいい歳までフラフラしていたし、ロキ先生なんか未だにアレよ。」
『きっと俺は皆の元に残るという自由を行使しているんだろうな。』
エヴァにもたれ掛かった俺は傍らで寝ている嫡男ガルドの頭を撫でた。
相変わらず右手の感触はないが、息子は俺に撫でられて珍しく笑ったような気がした。
「パパが邸宅に戻ってくれれば、もう少しこの子も懐くのにね。」
『…。』
「…。」
『…安心して欲しい。』
「ん?」
俺は飛ばない。