そんな日和美を見下ろしながら、中途半端に着ていたワイシャツをバサリと脱ぎ捨てた信武から「初めてなのに悪ぃーな」と申し訳なさそうに頬を撫でられて。
服を脱ぐ際一旦抜かれた指が、再度蜜口を割ってきて、まるでその言葉に呼応するみたいに今までよりもさらにグッと奥へ突き入れられた。
「んんっ」
実際、慣れない行為の連続で自分の方がしんどいはずなのに、日和美を攻めている信武も同じくらいどこか辛そうな顔をしているのは何故?と思ってしまった日和美だ。
(そういえば……)
日和美からは良く見えないけれど信武の下腹部だって、随分前からパンパンに大きくなって、張りつめていたのを思い出す。
日和美に見せつけるように布地越し、そこを擦り上げた信武の姿に、ただならぬ色気を感じてあわあわと唇を震わせたのを日和美は覚えている。
「し、のぶ……も限界?」
頬に触れる彼の手にそっと手のひらを重ねたら「ああ、かなり」と肯定されて。
膣内に埋められた指を、一旦極限まで引き抜かれてから、日和美のなかで温められた人差し指に寄り添うような形で、少し冷んやりした中指が追加された。
「あ、っ。待って。……ダメっ」
いきなり増やされた指に、ほんの少し侵入されただけなのに下腹部の異物感が半端なくて……。
慌てて静止の言葉を発して足を閉じようとした日和美だったけれど、信武の身体が邪魔で出来なかった。
「なぁ、日和美。さっき言っただろ? 俺もゆとりがねぇんだって」
信武は日和美の抗議の声を受け入れるつもりはないのだと明言してから。
それでも日和美のなかの具合を確かめるようにゆっくりと蜜壺の中へと指が進められてくる。
「んーっ」
我慢が出来ないほど痛いわけじゃない。
だけど怖くてたまらない日和美は、必死で自分に伸し掛かっている信武を押し戻した。
「……日和美。俺の背中に爪立ててもいいから……頼む。こらえてくれ」
言葉と同時。
違和感を逃そうと、必死でに喘がせていた唇を塞がれて。
ぬるりと舌で口中をかき回された。
口蓋を撫でるように信武の舌先で擦られるたび、ゾクリとした快感が這い上がってきてだらしなく唇が緩んでしまう。
信武から与えられるディープキスは、いつも信じられないくらい心地よくて……。日和美の思考能力を鈍らせる。
クチュクチュと淫猥な水音を立てているのは上の口なのか、下の口なのか、日和美にはもう分からなかった。
キュッと指の間に胸の飾りを挟まれた日和美は、余りの気持ちよさにビクッと身体を震わせて。
それと同時、ある一点をゆるりと指の腹でこすり上げられた下腹部から、ぞわぞわと強い刺激が這い上ってきた。
「んんっ、んーっ!」
唇を塞がれたままで何も言えない日和美に、信武が執拗にそこを攻め立てるのをやめてくれないから。
身体の中心から湧き上がってきた快感に身体を貫かれそうなった日和美は、信武の背中へ回した腕にギューッと力を込めた。
――何か……来ちゃう!
そう思った矢先、まるでそれを見計らったみたいにスッと指が引かれて。
「ふ、ぇっ!?」
日和美は思わず信武の口付けから逃れると、間の抜けた抗議の声を上げた。
大きな波が来て、何もかもが分からなくなるくらい気持ち良くなれそうな気がしたのに。
「――ィかせねぇよ」
寸前で快感をお預けにされた日和美が、非難がましく信武を見上げたら、どこか余裕のなさそうな口調でそう吐き出された。
「え……?」
下腹部でくすぶる熱が解放を求めて身体の中で暴れまわっている。
それをどうにかして欲しい日和美は、正直恥も外聞も捨てて目の前の信武に縋りつきたいのに。
どこか拒絶するみたいに告げられた信武の言葉に、突き放されたと感じた日和美は、にわかに不安になる。
(私、こんなところでやめられちゃったら……自分じゃどうにも出来ない……)
胸に触れる自慰しか知らない日和美は、自分で膣内を擦って、その続きを出来るとは到底思えなくて。
涙目で信武を見上げたら、
「――聞えなかったか? 達かしてやんねぇって言ったんだよ」
とか、どんな意地悪だろう。
「な、んで……?」
もう少しで訪れそうだった、身体の中心から競り上がってくるような何とも言えない感覚が〝達く〟ということなのだとしたら――。
その一歩手前まで日和美のことを追い立てておいて、最後まで責任を取ってくれないと言うのはあまりにも酷すぎる。
「……バーカ。んな不服そうな顔すんな。何もこのまま放置しようってわけじゃねぇよ。――ただ……その……何だ。ゆ、指なんかで達かれたくねぇって思っちまっただけ……だ……から」
言っていて段々恥ずかしくなったんだろう。
しどろもどろになりながらそう告げた信武が、そっぽを向いて、「俺もこんなん思ったの、お前が初めてで正直戸惑ってんだよ。察しろ」と付け加えてくるから。
日和美はこういうことには至極慣れていそうなくせに、やたら初々しくさえ見えた信武の様子に瞳を見開いた。
そんな日和美の眼前で。
信武がベッド横へ置かれた半円型のサイドテーブルに手を伸ばして、避妊具を手に取ったのが見えた。
「――どうせなら俺ので気持ちよくなって欲しいって言ったら、引く?」
信武の言葉に半ば条件反射。
日和美がフルフルと首を横に振ったら、安心したように微笑まれた。
余裕のない手つきで性急に前立てを寛げた信武が、雄々しくそそり立った局部へゴムを装着する姿から目が離せなくなった日和美だ。
父親や祖父以外の男性の裸なんて見たことがなかったから、ダラリと力なくぶら下がっているわけではない状態の〝ソコ〟を見たの自体生まれて初めてで。
服越しに膨らみを見せつけられた時にも感じていたけれど、信武のソコは大きすぎるんじゃ!?と思って不安になった。
「……あ、あのっ、信、武さん……」
「信武、――な?」
ゴムを付け終えた昂りに片手を添えたまま、信武が日和美の上に覆い被さってくる。
距離を詰められて、視界からは見えなくなった信武のアレだけれど、太ももの辺りに触れている硬いのがきっと……。
「し、のぶ。あの……ホントにソレ……挿入……る、の?」
「ああ」
言っているそばからスリスリとラテックス越しの欲望を蜜口に擦り付けられて、日和美は思わずその感触から逃れたいみたいに身体をヘッドボード側へずり上げようとして。
「……逃がさせねぇよ」
ゆとりのない、だけどいつもより低く艶めいた声とともにグイッと信武の方へ引き戻された。
そうしてそのままひざ裏を抱え上げられた日和美は、恥部を空気にさらされて。
信武の両肩へ両足を掛けるみたいになったその格好へ驚いて、日和美は懸命にイヤイヤをする。
「や。しの、ぶっ、これ、恥ずか……、――ああんっ」
恥ずかしいからやめて欲しいと抗議の声を上げようとしたけれど、信武は聞いてくれる気はないみたいだ。
そればかりか、熱く滾った肉棒で無防備な入り口付近をこすられた日和美は、信武の指で散々いたぶられてツンと勃ち上がったままだった肉芽を信武のモノで擦り上げられて、言葉半ば。
ビクッと身体を跳ねさせて嬌声を上げた。
***
日和美の反応を見ながらそれを二度、三度繰り返して日和美を散々喘がせてから、信武は硬く反り返った屹立に手を添えると、角度を変えて先端を日和美の蜜口に当てがう。
そうしておいて、日和美の意識がそこへ向かわないようスリスリと指の腹で陰核を優しくこすりながら、日和美の身体から力が抜けるタイミングを見計らってグッと隘路をこじ開けた。
「はぁぁんっ、――や、ぁぁぁっ、……しの、ぶさっ、痛ぃっ」
あえてくびれの辺りまで一気に侵入させたからだろう。
熱に浮かされたみたいに快感を享受していた日和美が、腰を進めた瞬間、ギューッと目をつぶって「痛い」と喚いて身体を強張らた。
慣れない異物を無理矢理受け入れさせられた膣口を守りたいみたいに、日和美が信武の胸元へ手を伸ばして目一杯突っ張ってくるから。
信武は分身にあてがっていた手を離すと、日和美の耳殻を優しくたどるようにスリスリと撫でた。
「日和美……」
そうしながら「ごめん」とも「許せ」とも「我慢しろ」とも言わないで、日和美を見下ろしてただただ名前を優しく呼んだら、日和美がギューッとつぶっていた目を恐る恐る開けてそんな信武を見上げてきた。
「し、の……ぶ?」
「ああ、俺だ」
今、日和美の体内へ入ろうとしているのは他でもない。 信武自身なのだと言い聞かせるみたいにうなずいて見せたら、日和美がゆっくりと身体から力を抜いてくれて。
代わりに信武の胸元へついていた手をおずおずと信武の頬へ伸ばしてから、
「……もう全部……入っ……た?」
確認するみたいにそう問いかけてきた。
***
感覚的にはもう一杯一杯。
(これ以上は無理だよぅ)と思うのに、非情にも信武は懇願するように問い掛けた日和美に、小さく首を横に振った。
「うそ……っ」
信武の反応に、泣きそうになった日和美だったけれど、信武が彼の頬に触れたままだった日和美の手を包み込むようにして、「けど……一番しんどいところは通過したはずだから心配すんな」と微笑んだ。
(一番しんどいところってどこ? 心配すんなって何?)と思った日和美を置き去りに、信武が包み込んだ日和美の指先にチュッと口付けを落としてくる。
信武の柔らかな唇の感触に「んっ」と思わず声を漏らしたら、信武にニヤリとされた。
そのまま指先から手首の方へ向けて、信武に見詰められたまま舌を這わされた日和美は、くすぐったさと心地よさの融合にキューッと手指をすくませて。
それと同時、いきなりグイッと下腹部を押し付けられるようにして、一気に結合を深められたからたまらない。
「ふ、あぁぁっ!」
手の方へ神経を持っていかれていたのもあって、何とも間の抜けた声とともに、お腹の奥にズンとした重みが響く。
「んんーっ」
思わず眉根を寄せてくぐもった声を上げた日和美だったけれど、実際はそんなに痛くなかった。
信武が言った通り、〝一番しんどいところ〟を通過していたからだろうか?
「日、和美、……大、丈夫か?」
むしろ、思ったほど痛くなかったことに安堵した日和美を労わるように問い掛けてきた信武の声の方が、何故か途切れ途切れで辛そうに感じられてしまった日和美だ。
心配になって涙にかすむ目で信武を懸命に見上げたら、切なそうに眉根を寄せた信武と目が合った。
その表情が余りに艶めいて見えたから――。
半ば無意識。信武を受け入れた場所にキュッと力がこもってしまって、信武に一層苦しげに呼吸を詰めさせてしまう。
それはもう、自分のせいで信武が痛い思いをしているようにしか見えなかったから。
「ごめ、なさっ。……痛い、よねっ。私、私っ……」
締め付けを緩めなきゃと思うのに、信武のことを考えれば考えるほど彼の分身を包み込んだ部分がその圧倒的な圧迫感を逃がしたくないみたいに容積を狭めて。
日和美はどうすれば良いのか分からなくなる。