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「鹿島どうする?」
「んん〜レモンサワーかな」
「山笠くんは?決まってる?」
「あ、僕は麦茶で。お願いします」
あぁ、そうか。未成年だから。
そう心の中で思う。
「お2人は決まってます?」
そう根津姉妹に尋ねる。
「私ビール飲みたい!」
「ダメです。良かった1人で来させないで」
「ちぇっ。じゃあお姉ちゃんのビール1口頂戴」
「あげないし、私ビール飲まないし。アスピスサワーとアスピスお願いします」
「つまんないの」
姉妹らしい会話でつい聞き入ってしまう。
「了解しました。あのっ!すいませ〜ん!」
と僕は左手を高々挙げて店員さんを呼ぶ。
座敷席やテーブル席へ注文を聞きに2人の店員さんが立っていた。
キッチンの奥から3人目の女性の店員さんが
「はいぃー!今行きますね!」
とこちらに来てくれた。
「ご注文お伺いします」
「アスピスサワーとアスピス。あと麦茶とレモンサワーと紅茶ハイお願いします」
1つ1つ確認するように「はい」と相槌をうつ店員さん。注文が終わろうとしたとき
「あっ、枝豆とフライドポテトと唐揚げもお願いします」
と奥から鹿島が追加で注文する。
「食べ物のほうは後ほどお持ちする形になってますのでご了承ください」
と女性店員さんが言う。
「はい、お願いします」
と鹿島が言う。女性の店員さんは手元の注文用紙に書き込み
その紙から顔を上げこちらに笑顔を向けると
「了解しました。少々お待ちください」
と言い
「今伺いまーす!」
と他のテーブルに向かった。
「そっか。2人は18歳だもんね?」
と鹿島は山笠くんとヒメちゃんの顔を見て言う。
「そうなんですよ〜しかもお姉ちゃんもお母さんも厳しくてお酒飲んだことなくて」
「当たり前だから。未成年なんだからね?」
「ほら、ね?お姉ちゃん堅いんですよ」
「まぁ法律もそうだしね?」
「えぇ〜鹿島先輩もお堅い人ですかぁ〜。
でも鹿島先輩は未成年のときから飲んでそうですよね」
「お酒まだかなぁ〜」
「あっ!話逸らした」
と2人が笑った。その様子をみて山笠くんも笑っている。
妹の横では少し心配そうなお姉ちゃんが微笑んでいる。
厨房からは食器同士が触れ合う音が聞こえてくる。
それぞれのテーブルでなにかしらの会話がなされ
「居酒屋」という雰囲気が出来上がってきた。
やがて各テーブルに店員さんがジョッキやグラスを持ち向かう。
程なくして僕たちのテーブルにも先程の女性の店員さんがやってきて
「はい、こちらアスピスサワーと」
と言われキサキさんが手を挙げ
店員さんがキサキさんの前にアスピスサワーの入ったグラスをスライドさせる。
「アスピスと」
今度はヒメちゃんが手を挙げる。一度キサキさんの前に置かれたグラスを
キサキさんがヒメちゃんにスライドし渡す。
「麦茶と」
僕の前に置かれたグラスを左の鹿島にスライドさせ
その鹿島がさらに左の山笠くんへスライドさせて渡す。
「紅茶ハイと」
軽く手を挙げ、自分の前に置かれて軽く頭を下げる。
「レモンサワーになります」
僕は鹿島にパスをする。
「お、さんきゅ」
「あと枝豆とフライドポテトと唐揚げですね。後ほどお持ちしますね」
そう言い華麗に去って行った。
「とりあえず飲み物手元に来ました!?まだ飲み物ない人ー!?」
座敷の奥の4年の先輩が立ち、他の席を見渡している。僕も周りを見渡す。
2つのテーブルで7から9人くらいの人が手を挙げていた。
すると程なくして2人の店員さんがその2つのテーブルに飲み物を持って訪れた。
それを見た先程の4年の先輩が
「はいっ!どうやら今いる皆さんには飲み物が行き届いたようなので
とりあえず乾杯をしたいと思います。では僕が代表して。
えぇー1年生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
きっとこれから楽しい4年間が待っています。
まぁ4年じゃ済まない人もいるかもしれませんが」
各テーブルからクスクス笑い声が聞こえる。
「それに加え、我がテニスサークルに入ってくれてありがとうございます。
皆さんの楽しい4年間をより楽しくできるように
今回のこの新入生歓迎会で先輩たちや
同じサークルの新入生同士で交流し仲良くなってください!
皆さんのキャンパスライフに幸あれ!カンパーイ!」
「「カンパーイ!!」」
各テーブル、恐らく全員が乾杯の音頭に合わせてて言う。
もれなく僕も大きな声でではないが言った。
「意外と良いこと言ってたね」
鹿島がレモンサワーを1口飲み、グラスをテーブルに置いて僕に言う。
僕も鹿島のその言葉を聞きながら紅茶ハイを1口飲み、グラスをテーブルに置いて
「まぁ良いことではあったな」
と鹿島に返す。恐らく心の紅茶のストレートティーを使っているのだろう。
飲み覚えのある味、香りだった。
しかしその飲み覚えのある味、香りを手で包み、握り潰すように
アルコール独特の苦味と重さが口に広がる。
「山笠くんはテニスやるの?」
鹿島が山笠くんに尋ねる。
「あっ、そうですね。一応高校3年間はテニスやってました」
「じゃあテニスサー本家の方だ?」
「本家って」
「まぁあるじゃん?名ばかりのサークルで中身は飲みサーってやつ」
「あぁ、まぁ聞いたことはありますね?」
「オレと怜ちゃんはそっちなの」
と鹿島は左にいる僕を親指で指して言う。
「そうなの。でもこのテニサーはちゃんとテニスの活動もあるから安心して?
オレとか鹿島はいないし、ここに来てる人のほとんどいないと思うけど」
と微笑みながら山笠くんに説明する。説明を終えると同時にタイミング良く
「お待たせしましたぁー。こちらフライドポテトと
かっらっ揚っげっとっ、枝豆になります。こちら取り皿ですねぇ〜。では失礼します」
と店員さんが颯爽と去って行く。
店員さんの「唐揚げ」の言い方が妙にリズム感があって耳に残った。
僕の対面に座っていたキサキさんが取り皿と箸を配ってくれようとしていた。
「あ、ありがとうございます。箸は僕がやるんでお皿お願いしても?」
と言うと
「あ、ありがとうございます。じゃあお願いします」
とキサキさんがお皿をみんなに配り始める。
僕も鹿島にプラスチックの黒い箸を4本渡す。そこから2本を鹿島が山笠くんに渡す。
「ありがとー」
「あ、ありがとうございます」
返事の代わりに軽く頭を下げる。
「ヒメちゃん」
と一声かけヒメちゃんにも箸を渡す。
「ありがとうございます!」
テンションの高いお礼だ。
「いーえー」
そう言いながらキサキさんの箸を手に取り対面のキサキさんに差し出すと
同時にキサキさんもお皿を僕に差し出した。
あまりのタイミングの良さに驚き、少し顔を見合わせる。
「あっ、ありがとうございます。ナイスタイミング」
と言い僕は左手でお皿を受け取る。
「めっちゃいいタイミングでしたね」
と言いながらキサキさんは僕から箸を受け取った。
「サラダでも頼んだほうが良かったですかね?」
「あぁ〜そうですね?もうちょっとしてから頼みますか」
と微笑みながら答えてくれる。ふと右の3人を見るとこの短時間の間に
鹿島かヒメちゃんを中心に3人がなにかの話で盛り上がっていた。