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「鳥の呼吸 参の型 鵜飼っ!」
ザシュッ……
「使い勝手が悪いような気もするなあ」
正直、腰に刀を差すのが動きにくい気がする。
宇髄さんみたいにしてもいいけどあれもあれで大変そう。
というか身長的に無理じゃない?
「キョウ!次ノ仕事ニ行ケ!」
「分かった」
「霞柱モイルッテ!」
「え、無理なんだけど……」
「え、あの昆布頭?竈門隊士大好きやろう?差別的反社会的野郎?」
堂々と悪口を吐いていると、後ろからゆっくりと冷めている声が聞こえてきた。
背筋がゾッと凍る。
「誰が差別的反社会的野郎だって?」
「意味分カラナイコト言ッテンジャナイワヨ!」
「げ。銀子」
まあもちろんかもしれないが、銀子も居る。
霞柱だけならまだしも、銀子も居るから、色々面倒になりそう。
「峰、行こ」
くるりと背を向けて、私は走り出す。
「アイツ早イ」
その峰の言葉でチラッと後ろを見ると、もうほとんど距離が無かった。
「もっとダル……」
「誰か代わってくれないかな……」
「無理ィ!」
「無理かあ……」
「というか柱2人も要らないでしょう!下弦でも居るの?」
「マア頑張レ……」
「わかった……」
そう言うと私は走るスピードをぐんとあげ、商店街へと急いだ。
次の任務の場所に行くにはどのみち通らなきゃだし。
人だらけの商店街に入ると、いい路地を探した。
「じゃあそこの路地裏から飛ぼう。峰は銀子より速いよね。じゃあ私1人でいっか」
そう言って、さっそく見つけた路地裏に入る。
よし、誰も居ない。
「鳥の呼吸……じゃなかった。血鬼術 斬視!」
体からまとうオーラが消え、自分の体も透ける。
「あれ?ねえ峰。これって霞は使えんの?透明化みたいなの」
「……知ラン。デモ血鬼術ミタクハデキナイダロ」
「ん。りょうかーい」
そのまま真上の家の屋根に飛び乗り、いくつかの家の屋根をつたって走る。
羽蛾山……
ここかな。
「よし!血鬼術 繋視!」
「戻った〜」
「ちゃちゃっと殺して帰ろー」
「空気がなんか気配で染まってるね……」
山の中腹あたりに来たところで、木に身を預けて休むことにした。
もう結構鬼は切ってきたけど、正直まだまだ奥にいると思う。
下弦かな……
でももう無惨に殺されたのでは?
じゃあ雑魚鬼か。
たくさん喰ってるらしいから、多分もうすぐで十二鬼月くらいだろう。
ん?
「あ……そっちか…」
人の声…
「ザシュッ」
どうやら雑魚鬼だったのか、そのまま呼吸なしに刀を振る。
少し木から離れてよく見てみた。
すると、そこには霞柱が居た。
どうやら私に気付いたのか、こちらにやって来る。
「任務ちゃんとやりなよ。それでもほんとに柱なの?」
「昆布頭に言われたく無いなあ。それと鬼は殺したよ。気色悪いのばっかだったけど。無惨は虫も鬼にしてるのかってくらいね」
まあ実際してるんだろうけどね。
「聞いてないことグチグチ言われても困るんだけど。ちょっと黙っててくれない?」
「それを言うなら銀子だね」
銀子が、ワーワー騒いでいる。
私の悪口でも言ってるのだろうか。
霞柱のこと好きすぎない?
顔が好きなのかは知らんけど。
「それに」
「あいにく黙れと言われても黙れる人間じゃないんだ、私」
「へー」
「へえ…」
「ねえ峰。この人って脳みそどうなってると思う?」
あまりにもつまらなくなってきたので、コソコソ話をするように峰に尋ねる。
「バサッ」
峰は頭上から舞い降りてくると、私の耳元で何やら囁いた。
“鬼ヲ狩レ”
あ。
まあ言われても当たり前なんだけど。
「あーはいはい。鬼ね、鬼」
今は違う問題なんだよなあ。
「鬼でももういるじゃんそこに」
ピシッと無一郎の方を指差す。
「人に指差すのは失礼だって習わなかったの?」
指を掴まれ、危うくへし折られそうになる。
完全に煽り復活してるー。
「習ったよ。多分」
習ったよ。
鳳来家で人に指を指すなってこと言われないわけがない。
「でも怪しいんだよなあ」
品定めをするように言う。
「誰でもあり得る事だけど」
「先祖に上弦が居る」
霞柱に向けてズバッと言う。
「おちょくってるのかな。根拠をはっきりさせてから言いなよ」
相変わらず顔色を変えない。
「はあ…そうしとく」
そう返事をすると、霞柱はまた別の方向へと去っていった。
根拠はある……はず。
神職の家系の娘だからかは分からないけど、たまに、相手の祖先が見える事がある。
今、霞柱からは、うっすらと鬼の気配を感じた。
普通の鬼くらいじゃ見えないはずだから、上弦だろう。
上弦の気質だったし。
気配が鋭すぎた。
そう考えながら歩いていると、
「人間か……」
鬼が出た。
またか。
私を品定めするかのように見つめてくる。
「いいえ。ここに多分純な人間居ませんよ」
だから、嘲笑気味に言ってみてやる。
「なんだと?どうみても人間だろうが!」
「あーはいはい。そうですか。どうぞお好きなように」
刀に手をかけ、一気に鞘から抜く。
そして、わざとおぼつかない足取りでゆっくりと歩く。
「……何だ。その歩き方。お前何をする気だ」
「……」
もう少し。
あと少し。
徐々に鬼へと近づく。
よし。ここだ!
「鳥の呼吸 肆の型 鳳凰舞い!」
「ザシュッ」
「哀れだね。思いとどまれた時はあったんじゃない?」
「この子娘め!」
首が放り出されて消えかかってる口で鬼は罵ってくる。
まあそんなこと知らないけどね。
「でも残念。もうお前は塵となって消える。無様に死ぬってこと」
「じゃあね」
しばらくして、鬼は完全に塵となって消えた。
「ーーポツ」
「雨?」
「峰!一旦そこのお堂の屋根の下に行こう」
とりあえず、山の中にあった、古いお堂で雨宿りすることにした。
下駄を履いたまま、お堂の階段の1番上に座る。
たった3段しかないお堂の。
無一郎目線_____________
無一郎は、一番大きい鬼を倒した後、鳥柱とその鷹を探していた。
「あの人達どこ行った?」
帰りは生存確認しておかねばならないというのに。
「なんか雨降ってきたし。早く帰りたいんだけど」
「めんどくさいなあ」
すると、何処からか、人の声が聞こえてきた。
声の方へ行くと、お堂で鳥柱とその鷹が雨宿りしていた。
「何里も先に日は落ちて 巡る鬼と対峙する 二間の間合いは最低限 積めずに焦らず距離を詰め 頃をみはかれ刀振る
逃げるは終わりに使ふべき 休みは木の上 下を見ろ」
何やら、鬼との戦い方を誰でも解るようにまとめた歌みたいだけど……
童謡みたいな歌だな…。
歌詞はそんな感じないけど。
「一尺先に死は迫る 巡る絶望直視する 後悔しようが消えたもの 取り替えすなどできやしない 逃げる鬼と消える鬼
逃げる鬼を恨んだら 時は過ぎ去る 雨は闇」
これって替え歌?
すごい暗い歌詞……
鬼に襲われた話?
キョウ目線_____________
「雨は闇」
手が震え、悪寒がする。
いつもそうだ。
雨の日にこうなる。
雨は恐怖だ。
降らなきゃ良いのに。
「ねえ」
誰かから声をかけられる。
時透……無一郎……
霞柱…だ
あ。
そうだった。
今、任務終わりで。
それで今、何をしてたんだっけ…?
虚空を見つめていると、
「何してるの?早く帰りたいんだけど」
と言われたので、謝ることにしておいた。
「何も。ごめん。帰ろ」
そう言って、スタスタと下山していく。
けれど、すぐに霞柱に追いつかれて、結局無言で並んで下山した。
その後ろをついて来ながら、銀子と峰はまた揉めていた。