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「お前は初恋を引きずってるからなあ」
「うるさい。でも美里さんの結婚式なら彼女も来るかな」
「まさか。嫌な思い出の学生時代の奴らと会うわけないだろ」
結婚すると報告された居酒屋で、真琴は俺に衝撃的な真実を告げた。
「ボーイッシュってやつかな。綺麗な子は髪が短くてもお洒落で可愛いよ。中学時代の黒髪ロングの清楚系じゃないけど――」
「え?」
「高校まで女子高で、しかもネイル系の専門学校も女子ばっかだろ。美里に聞いたら、彼女、男性恐怖症になってるらしくて」
「それってやっぱ俺が髪を切ったせいか?」
彼女は今も髪を伸ばせていない。
男性と接触するのを避けている。
それは俺が関係ないと、美怜さんは言うのか。
関係ないから忘れろと、俺に言うのか。
「気になるなら、ほら住所」
真琴は彼女の仕事先の住所を教えてくれた。
「遠目で見てくればいい。自分の目で確かめて来いよ」
自分の目で。
気づけば、居酒屋から飛び出していた。バケツをひっくり返したような大雨の日。
走るたびに足に水が撥ねてしみ込んでいき、体温を奪われていく。
けれどどうしても、彼女に会いたかった。
仕事中の彼女を見て、今まで女性に興味を見てなかったり疑心暗鬼になって恋愛に発展するのが億劫だった理由が分かった。
微笑む姿は凛として美しく、短い髪は太陽のように明るくきらめき、ふっくらした唇は可愛らしい色で整えられ、俺の心を魅了した。
なのにまだ、彼女は髪を伸ばせていない。
再び玲華さんのもとへ向かった。
「彼女は男性恐怖症なんですか」
直球で聞くと、仕事中にもかかわらず仕事を抜け、話を聞いてくれた。
「そうね。華怜は一人で生きていくと決めたみたい。誰かを必要とせず誰かを求めることない。傷つくことはないし楽しい人生かもしれないわね」
ヒステリックに叫んでも効果はないのに、強くいってしまった私も悪いと玲華さんは言う。
「誰かを好きになる気持ちを、誰かに愛される幸せを知らずに生きていく娘をどうにもできない。幸せならそれでいい。いつか、もしかしたら」
「いつか、ではなく。俺でもいいですか!」
気づけば叫んでいた。俺はどうしても彼女の目の前でもう一度姿を見てほしかった。
玲華さんは俺を頭の先からつま先まで見た後、微笑んだ。
「一年で華怜に好きになってもらわなかったら、諦めなさい。一年しか私は協力しない」
「協力?」
「ここまで華怜のことを思ってくれてるなら、一年だけ協力してあげる。強制的に一緒に住める、もしかしたら結婚もしてくれる。でもあなたを恨むところからスタートよ、どう?」
最初、彼女が何を言っているのか分からなかったが、だんだんと話を聞いているうちに理解した。
華怜さんが男性恐怖症を克服するために俺を利用したいと。
原因の俺がなんとかできるなら、自分は悪者になっても構わないと。
一年だけ。それ以上は苦痛になってしまうかもしれないからと言われた。
「娘に嘘をつくの。それぐらい私も覚悟を決めるのよ。貴方が生半可な気持ちで言いだしてるなら、絶対に許さないから」
砂原 紗藍
#再会