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夜の外壁は、異様なほど静かだった。
ロボロは血に濡れた手で、コンクリートを掴む。
背後では警報が鳴り、追跡部隊の足音が近づいていた。
「対象、逃走中!」
銃声が闇を裂く。
肩に走る衝撃。だが、体は止まらない。
(……まだ、動ける)
自分の体が“普通ではない”ことを、ロボロは嫌というほど知っていた。
だからこそ、あの研究所から逃げなければならなかった。
数値で管理され、
結果だけを求められる場所。
男であることも、人であることも、意味を失う場所。
再び銃声。脚が崩れ、地面に倒れ込む。
視界の端に、別の軍旗が揺れた。
(……我々軍)
最後の力で外壁を越えた瞬間、
銃声は止み、代わりに統制の取れた声が響く。
「侵入者確認。生存反応あり」
無線越しの声は、冷静で、無駄がなかった。
ロボロは薄れゆく意識の中で思う。
――捕まるなら、あの国じゃない方がいい。
次に目を開けたとき、白い天井と消毒の匂いがあった。
「しんぺい神、容体は?」
「……命は助かったが、身体構造に不審点が多すぎるんだよねぇ」
複数の足音。
その中に、書類をめくる音が混じる。
「名前は?」
ロボロは、かすれた声で答えた。
「……ロボロ
あの場所から逃げてきた……」
その言葉を、
我々軍総統――グルッペン・フューラーは、静かに受け止めた。