あの後、清宗さんは仕事に戻り、家を出た。俺はというと、どう元貴の口から聞き出そうか悩んでいた。
別に、元貴本人から聞かなくても清宗さんからほとんど聞いたから、どんなことがあったのかは知っている。
だけど、元貴の口から聞きたい。どんなことが辛かったのか、気に触れたのか……全部、全部聞いて、一緒に受け止めたい。そう心から思った。
俺がソファに座ったその時ーー
涼架『ただいまぁ!!』
涼架くんの元気な声が響き渡る。帰ってきた。
俺が立ち上がると、涼架くんに手を引っ張られている元貴が目に入った。
元貴『委員長、ただいま』
滉斗『………っ、、』
そう言ってにこっと微笑む元貴の笑顔が痛かった。
こんなにも心の底から笑っているのだと勝手に思って、元貴の裏に隠された事実なんて知らずに、ただ“普通”に接していた自分が嫌になる。
元貴『委員長…?』
やめろ。そんな目で見るな。
元貴がどんなに辛い思いをしてきたのか気付くことが出来なかった俺は、元貴と一緒にいる資格なんてない。
涼架『?おにぃちゃん!りょうかお部屋戻るね!!』
元貴『ん、……委員長、?大丈夫、?』
この場の空気を和ませるように明るい声色で言い、部屋に戻る涼架くん。そして、俺を心配するように、不安そうな目で見つめてくる元貴。
滉斗『………元貴、』
元貴『……何、、?』
俺の声に、元貴の表情が少し強張った。
滉斗『……なんで、言ってくれなかった、』
元貴『…何を、?』
滉斗『………中学の時、学校に行けてなかったこと…』
元貴の目が揺れる。けれど、すぐに伏せた。
元貴『聞いたんだ……お父さんから、』
滉斗『……、』
元貴は黙ったまま、無表情を装っていた。けれど指先が微かに震えていた。
その震えを見て、胸がぎゅっと締めつけられる。
滉斗『なんで言ってくれなかった…俺、お前のことなら——』
元貴『だから言わなかったんだよ』
その言葉が、冷たく突き刺さった。
滉斗『……どういう意味だよ、、』
元貴『別に…お前に言ったって、何も変わらないだろ、』
滉斗『変わらないわけないだろ、俺は——』
元貴『違うんだよ!!お前には関係ない、!!』
声が跳ねた。
思わず言葉を失う。元貴は唇を噛みしめて、俯いたまま続けた。
元貴『……俺の過去の話なんて、聞いたって面白くもねぇし、重いだけだろ。そんなの……話す必要ねーだろ、』
滉斗『勝手に決めんなよ、俺は、お前の隣にいたいって——』
元貴『だからうるせぇって言ってんだよ!!』
元貴が顔を上げた。涙が滲んでいた。
その目は怒りと悲しみが混ざっていて、まるで崩れそうなガラスみたいだった。
元貴『お前に…俺の何が分かんだよ、』
滉斗『何でも分かる。先に言ってくれたら俺だって授業に出ろとか、サボるなとかなんて、、言わなかった、』
元貴『分かった気になるなよ、!!』
元貴が声を上げる。
滉斗『…っ、』
元貴『俺はちっちゃいときにお母さんがいなくなって、慣れない家事だって自分なりに努力したし…涼架の面倒だって見てきた、』
元貴『俺がどんなに苦労してきたか知らねーくせに……勝手なこと言って…っ、!』
滉斗『そんなことーー!!』
元貴『あるんだよ!!お前には分かんねぇだろ!!!』
元貴の瞳に涙が溜まる。息が荒い。元貴は顔を歪め、声を震わせながら叫んだ。
元貴『帰って…っ、』
滉斗『……元貴、っ……』
元貴『もう帰ってよ……、お願いだから…これ以上優しくしないで、、壊れそうで、怖い……っ、』
喉の奥が詰まった。
何か言わなきゃと思っても、言葉が出てこない。
そのまま、重たい沈黙の中で、俺は鞄を持って立ち上がる。
扉の前で振り返ると、元貴は小さく背を丸めて、涙を拭っていた。
その姿が、胸に焼きついて離れなかった。
……俺は、なんで、守れなかった……?
玄関の扉が閉まる音が、やけに大きく響いた。
今戻ればまたやり直せる。また一からちゃんと元貴の話を聞けばーー
なんて、思っても足が強張って動かなかった。元貴の今の気持ちが、鎖のように足に絡み付いて俺を縛り付けていた。
伝えられるのに俺は壁を作って逃げた。こんな俺と、元貴は一緒にいていい人間じゃない。
不安だった。いつか壊れるのは、なんとなく分かってた。でも、いざとなると胸が痛い。
俺は準備ができていなかった。
もっと、もっとちゃんと準備ができていたら、、元貴と向き合えていたら、、こんなことにはならなかった。
色が付いた。色が褪せた。
今の俺と元貴の関係を引き裂くように、外は大粒の雨が降っていた。
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歌詞入っとんの気づいた???(温度差えぐい)
コメント
16件
続きが読みてぇ~💦
うわぉ………… ここからどう巻き返す(?)のかな🤔 わかぴー、がんばれ‼️‼️
主さん、タイトルがumbrellaになってますよ…(幻覚) すれ違い…見てて辛いぜ…😭 wkiさんが傍に居ないとomrさんは笑えないんですよ🥹 私は静かに見守ります。