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このアパート、変人だらけ!

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このアパート、変人だらけ!

31 - 第31話 不毛すぎる、アタシの一日~迫る危機感

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2024年02月01日

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日曜の朝、ゆるやかなまどろみが突然破られる。

大声が響いてきた。何層にも重なって。


まずはうらしまの例のやつ。


「あふんっ!」

「あっふぅん!」

「あぁっふぅっっんん!」


夢の中でお姉に虐められて喜んでいるのだろう。


小人の声も微かに聞こえる。

誰のか分からないイビキも。


その中で一際激しく叫んでいるのはかぐやちゃんの声だ。

たまに朝早いねん、あの人。


「シーアイエスモデル40ジーエルグレネード・ランチャー! シーアイエスモデル40エージーエルオートマチック・グレネード・ランチャーッ! シーアイエスモデルエスエルダブルエージーエルオートマチック・グレネード・ランチャーッッ!」


……うわぁ、今朝はグレネード・ランチャー編や。

大声で銃器の名前をひたすら、ただひたすら叫び続ける、

ものすごく近所迷惑な人。

一体何の訓練やねん。


それでもゴロゴロまどろみ続けるアタシ。


午前10時。ようやく目覚める。

ああ、今日もいい天気や。


30分ほど布団の中でゴロゴロ。

横目で見ると部屋の隅に座り込んで桃太郎、寝ぼけ眼でパンかじってる。


先程の騒音が嘘のようにアパート中がシン……と静まり返っていて、何だか心地いい。


ああ、日曜って素晴らしい!


もっとも学校に行くワンちゃんと、サラリーマンのうらしまを除けば、このアパートは平日でも極端に朝が遅い。


ゲーマーの|性《サガ》でお姉は夜が遅く、従って朝はグーグー寝てる。

かぐやちゃんも夜中に違法放置家電ゴミを漁るので、眠りにつくのは夜明けらしい。

オキナもダラダラ暮らしている。この人、何で生計立ててるんやろ。


カメさん来ない日は完全に寝静まっている午前のオールド・ストーリーJ館。


「アカンやん、アタシらっ!」


こうやってみると、散々バカにし、蔑んできたうらしまを、逆に尊敬する思いや。


「リカ殿、ご飯を食べたら見回り隊の時間ぞ?」


「あぁ、もうそんな時間?」


そこでアタシはようやくムクリと起き上がる。


12時前。テレビを見ながら朝・昼食を食べ、ついついテレビを見すぎてしまう。


2時前。ようやくアタシらは重い腰をあげた。


アパート一周、街一周。

桃太郎の世直しの旅(日帰り)や。


近所の見回りといって良い。

的確な表現をすればただの散歩だ。

まぁ運動にもなるし、買い物がてらアタシも付いていくのが日課なのだ。


4時くらいまで商店街をウロウロする。

変な格好で、時に変な歌を口ずさみながら。


完全に不審者や。しかも名物や。


時々アタシと桃太郎は揉める。

アタシが信号無視すると奴は怒るのだ。


「そちは屑人間か。社会の規範を守れい!」


「うるさいわ! アタシかて周りは見てるで。でも車通ってへんやん。そんな時は渡って当然やろ! 関西人はみんなそうしてんで!」


「おのれ、御奉行様の前に引っ立ててやるぞ!」


「お、御奉行様って警察のこと? も、もうイヤや。警察はカンベンして!」


ダラダラと言い合いを続け、疲れてきたら近くの川原に向かう。

散歩中の犬の相手をし「本物のワンちゃん」と名付けたりする。


それからアパートに帰ると、うらしまが風呂場の屋根から声をかけてきた。


「おかえり。リカちゃん、桃太郎くん」


「ただいまぁ。修理か? ご苦労さん」


そう、宇宙からのオレンジの光は隕石だったのだ。


直径5ミリ弱の小さな物だったが、アパート風呂場の屋根は大破した。

これだけの被害で済んだのは、むしろ奇跡的だったという。

新聞にも小さく載ったし、近所の噂もものすごい。

見物人が押し寄せる始末。


アタシ的には感電少女の家だとバレないか冷や冷やものだ。

だって何だか恥ずかしい。


壊れた屋根は業者に頼むこともせず、うらしまが毎日コツコツ修理させられている。

奴はご主人様(お姉)の役に立てると心底喜んでいるらしいから、アタシは何も口出ししてないけど……何か不憫な男やで?


お姉と言えば、かぐやちゃんとのデートにさすがに懲りたらしい。


「あの方とのデートは、また別の機会に敢行するわ」と力なく言っていた。


かぐやちゃん騒動が一段落し、アタシは久々に自室で穏やかな時間を過ごしていた。


「はぁ、せっかくトーキョー来たんやし、国技館で相撲見たいわ。そろそろ五月場所が始まるやん。アタシ、大阪では毎年行ってて、けっこう詳しいねん。なぁ桃太郎、聞いてる?」


後ろを向いたら桃太郎、鏡を前にブラシで頭──特に頭頂らへんをペチペチ叩いている。

頭皮を刺激しているようだ。

真剣な表情で、アタシの話なんて聞いちゃいない。


「ももた……?」


見ちゃいけないものを見てしまったようで、声をかけるタイミングを失ってしまった。


──コイツ、一体何歳なんやろ?

──ほんま、謎多き桃太郎やわ!

……このナゾはアレやな。解明するかせんか言うたら、どっちでもいい系やな。

……ほんま、もぅどうでもいいし何もかもどうでも……ふぁぁ、眠い……。


「ってアタシ、何やってんの! こんなんしてたらアカン!」


ようやく気付いた。


アタシ、駄目な暮らししてる。

どんどん駄目な人間になっていく!


アカン!

アカンやん!



「21.さんすうのべんきょうからはじめよう! ~アタシの脳ミソ→不毛?」につづく

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