見かけたその人は 、ずっと探していた人で ……
“ ハック ” 。名前を聞くだけで 、胸が高鳴る 。
「 先輩 !! 」
肩を掴んで 、声を掛ける 。
分かってたことなのに 、話したら 私が悲しむだけだって ……
「 ? 」
案の定 、その人は 不思議そうな顔で 振り返った 。
昔と 少し感じが変わった 先輩は 、不思議な程かっこよくて 。
「 あれ 、俺達 何処かで会いましたっすか ? 」
きょとん 、とする先輩に 、胸が締め付けられる 。
「 …… すみません 、少し可笑しな言動させて下さい …… 」
ぎゅ 、と 先輩を 抱き締める 。
「 ちょ !?!? 」
「 先輩 、! 無事で良かったっす …… !! 」
涙が 溢れる 。嬉しさと 、悔しさと 、悲しさの 入り交じった涙は 、先輩の カエルパーカーを 濡らした 。
「 え ? な 、何の事っすか !? 」
「 ごめんなさい 、先輩 ! もう会っちゃいけないのに 、あっても何も変わらないのに 、! 」
分かりきっていたことだ 。会っても 、話しても 、何にも変わらないのに 。
私が 苦しくなるだけだ 。
「 は ? えっと 、大丈夫っすか ? 」
意味わからないよね 、ごめんなさい 。
呼吸が苦しい 。胸が痛い 。
私は するりと 先輩を抱く力を緩めた 。
「 すみません 、可笑しくて 。もう 、忘れてるんすもんね 。私のことなんか 、覚えてないんすもんね …… 」
自分で言っていて 悲しくなった 。
私は 、そんなに ちっぽけな人間だったのか と 。
「 ありがとうございました 。もう 、会わないので …… 」
さよなら 。
そう言って 立ち去ろうとした 私の手を 、先輩の手が 掴んだ 。
「 えっ 、? 」
「 な 、つ …… 」
目を見開いた 。覚えてる筈がないのに 。
「 先輩 、? 」
「 あれ 、なんすかね 、それ 。“ なつ ” ? 」
「 私の名前 、ナツ …… 」
か細い声に 、今度は 先輩が 目を見開いた 。
「 …… あの 、変なこと言っていいっすか ? 」
先輩が そういった 。
「 あの 、“ 友達 ” に 、なってくれるっすか ? 」
ポロリと 涙が落ちた 。
“ 友達 ” 。また一から 、やり直し 。
嗚呼 、なんで 。分かっていたのに 。
前に戻れるわけじゃない 。また新しく 築くしか無い 。関係は 、もう戻らないから 。
思わず 膝から 崩れ落ちた 。
分かってた 。分かってたのに 。
会わなきゃ良かった 。話さなきゃ良かった 。
涙が止まらない 。
苦しい 。痛い 。辛い 。
「 先輩 、…… ! 」
「 ナツさん ? 」
『 ナツ ? 』
私の名前を もう 呼んでくれないんだ 。
もう 、あの頃には 戻れないんだ 。
分かっていたのに 。私は ……
「 何やってるんだろう 、、 」
先輩が …… いや 、ハックさんが 出してくれた 手を 握って 立ち上がる 。
「 ええ 、是非 。友達に …… 」
声が上手く出ない 。
「 友達に 、なりたいっす …… 」
顔をほころばせるハックさん 。
その笑顔に 、心が締め付けられる 。
なんで 。なんで 話しかけたの ?
私の馬鹿 。分かってるくせに …… !
涙に視界が歪んだ 。目の縁に 黒いモヤが広がる 。
痛い 、苦しい 、辛い 。もう嫌だ 。死んでしまいたい 。
優しかった先輩 。かっこよかった先輩 。
先輩を 思い出す度 、今の ハックさんが 嫌いになる 。
理不尽な 怒りは 、悲しさは 、辛さは 、苦しさは ……
何処に 吐き出せば いいっすか ?
嗚呼 、これが 、分かりきった結末 。
名前をつけるとしたら 、なんだろう ?
そうだ 、きっとこれは ……
【 分かりきった結末 】。
コメント
1件
うぅ…好きぃ…でも辛いぃ…