桜が全て散ってしまう前に。新しい青葉が咲く前に、あの人に会わなければ。
もうほとんど自暴自棄になっていた。
まだ握ったままの花びらを胸に、水の中で呼吸をした。
体中が水に包まれて苦しかった。きっと太宰さんも同じ気持ちだったのだろう。
朦朧とする意識の中、優しいあの人の声だけを求めて、最期の呼吸をした。
…目を開くと、そこには僕の大好きなあの人がいた。
太「ばかだ。本当にばかだよ君は」
そう言いながらも、今までよりもずっと強く強く、僕を抱きしめてくれた。
忘れかけていた太宰さんの体温がひしひしと伝わってきて、僕は正しい呼吸も忘れて泣いた。
太宰さんは泣きそうな顔をしただけで、涙は見せなかった。
そういう強がり。死んでも変わらないんですね。と心の中でぼやく。
太宰さんは
太「泣き虫なとこ、死んでも変わんないね」
と呟いた。
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