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お風呂から上がり、髪を乾かしたら、私は男性陣の部屋に呼ばれた。
そして、朋也さんが私に言った。
私達が一緒に住んでいることを一弥先輩に話したと。
びっくりしたけれど、ずっと隠しておけないだろうと思っていたし、少しホッとした。
「恭香ちゃんが本宮君と一緒に暮らしていたなんて、とても驚いたよ。本当に、全然気づかなかったから。今思うと、だから僕と一緒に帰ることができなかったんだね」
一弥先輩が言った。
「す、すみません……。誰にも言ってなくて」
「恭香ちゃんが謝ることないよ。さっき、本宮君といろいろ話したんだ。恭香ちゃんを好きになったきっかけとか、今の気持ちとか。お互い全部話して、気持ちがわかりあえて良かったと思ってる」
「……そうだったんですね」
「うん。それでね、とにかく今は、恭香ちゃんの気持ちがちゃんと決まるのを待とうって……。焦っても仕方ないし、ちゃんと考えてもらえたら、僕達はそれが1番嬉しいから」
「ごめんなさい。私なんかのために……。なんだか本当に申し訳ないです」
「恭香。また、『私なんか』って言った」
朋也さんに注意された。
つい自信の無さが言葉に出てしまう。
「僕達は、2人とも恭香ちゃんのことが大好きなんだよ。それだけでも自信にならないかな? 僕はともかく、本宮君みたいな最強な男に好かれてるんだからさ。充分自慢になると思うよ」
「俺は最強なんかじゃない。普通の男だ。でも、一弥君は……女性にモテる雰囲気と魅力がある。一弥君の言う通り、俺達が恭香を好きだという事実を自信にしてくれ。『自分なんかダメだ』って、思わないでほしい。それだけ、お前は……可愛いってことだ」
言われ慣れていない言葉に、心からキュンとして、体が熱くなる。
この感覚になるのは、もう何度目だろう。
朋也さんと一弥先輩には、ずっとドキドキさせられている。それこそ心臓が持たないくらい、今だってずっと……
「私のことを精一杯励ましてくれて、とても嬉しいです。ほんの少しだけなら……自信にしていいですかね?」
厚かましい言葉だと思った。
自分で言って恥ずかしくなる。
だけれど、やっぱり、ほんの少し嬉しかった。
「当たり前だろ。俺と一弥君が言ってるんだから」
「その通りだよ」
「……ありがとうございます」
「それから、恭香の気持ちが決まるまでは、俺は実家に戻る。一弥君にズルいって言われたからな」
「そりゃそうだよね。本宮君だけが恭香ちゃんと一緒に住んでるなんてズル過ぎるよ」
「そうなん……ですね。わかりました。梅子さん、きっと喜ばれますね」
「梅子さん?」
「ああ、確かにな。梅子さんは俺を育ててくれた人。母親代わりの大切な人だ。父さんにも、たまには顔を見せろって言われてたし。良い機会かもしれないな」
「あの、でも、私……すぐには……」
「もちろんわかってる。すぐに答えが出るほど簡単なことじゃないって。俺達はずっと待ってるから。な、一弥君」
朋也さんの言葉に、一弥先輩もうなづいた。
「ありがとうございます。本当に……ごめんなさい」
いつ答えが出せるのかなんて、本当に自分でもわからない。
2人は優しすぎるから……
いったいいつまで待ってくれるのだろう……
「俺は恭香の部屋を出るけど、前にも言った通り、恭香のことを誰よりも想ってる。本当に……誰よりも大切だ。いつまでもずっとそのことだけは忘れるな」
朋也さんの優しい声。
本当にドキドキしてしまう。
「僕も悲しい思いをさせたこと、本当にごめんね。でも、今は恭香ちゃんしか見えてないし、これから先も、もちろん恭香ちゃんだけを見てるから。一生、ずっと……君を守るよ」
一弥先輩まで……
体がとろけてしまいそうなほど、あまりに甘い言葉の連続で、私の思考回路は停止しそうだった。
「本当にありがとうございます。私のことをそこまで大切に想ってくださって……。胸がいっぱいでうまく言葉にできないですけど……私にとって2人はとても大切な存在です」
「俺も……恭香はかけがえのない存在だ」
「僕もです。こんなに大切な人に出会えたこと……本当に幸せです」
今日は、2人からもらった宝物みたいな言葉たちを抱きしめて眠ろう。夢の中にも出てくるかもしれないな……
「じゃあ、私は部屋に戻ります」
「ああ、また明日。おやすみ」
「ゆっくり休んでね。おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
私は、隣の部屋に戻り、すぐに布団に入った。
「まだ体が熱い……。眠れるかな……」
今夜は、暖かい温泉につかり、体がリラックスしているからか。
それとも……
ふかふかの布団の気持ちよさに負けて、心配することもなく、あっという間に眠ってしまった。
大切に想ってくれてありがとう――
と、2人に深く感謝しながら。