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この場は、ただでさえ空気が重い。
ロボロさん含め、幹部様たちはその中で静かに腕を組み、目の前に座る新人兵――僕を観察しとった。
ぽつんと置かれた椅子に僕、反対側にはコネシマさんと、ショッピさん。それからゾムさんを除いた幹部様がおる。
目の前にいるのは紛れもなくあの憧れた幹部様たち。
あの戦闘試験から翌日、医務室におったしんぺいさん伝いでこの大会議室に来いと言われた。
なんとなく、合否なんかなって予想しとったけど違ったらしい。
ピリピリとした空気感で、息を吸うのが苦しい。
せやけどこの段階で潰れるなら、きっと幹部候補どころか兵士としても終いや。
ci「そんなに固くならんでも、もう少し気楽にで大丈夫やで〜」
くすくすと笑うチーノさん。
初めて見た幹部様やけどこの人は、ショッピさんがたまにこんな感じの人の話しとるから、なんとなくチーノ?さんなんやろな、と予想はできた。
rp「あっ、えと、、、はい」
その言葉で張り詰めとった自分の気が少し抜けたんか、表情筋が緩む。
少し緊張がほぐれたところで、次はオスマンさんが口を開いた。
優しい声色やけど、それに甘えたら油断してもうて逃げ場がなくなる。
os「戦闘試験、見たよ。」
1人で悶々と葛藤していたら、そんなことを告げられた。
rp「あ、ありがとうございます、?」
os「さすがシッマの愛弟子なだけあるな。あのゾムに一撃喰らわせるのは只者じゃないんよ。
シッマとの出会い、聞いてもええかな?」
まずは誰もが気になる点を探るところから。
自分の中の幼い記憶をなぞりながら言葉を紡ぐ。
rp「僕がコネシマさんと初めて会ったのは、、、
孤児院に預けられてから割とすぐなので大体5年前ですね。」
os「なるほどなるほど。訓練は君から頼んだのかな?」
rp「はい。孤児院にあった新聞とか、映像とかでコネシマさんの顔は知っとって。たまたま通りかかった時にお願いしました。」
os「すごい度胸やなぁ。そん時10とかやろ?」
rp「あはは、、」
確かに今考えてもすごいことしとるよな。我ながら。
ci「俺からもええかな?」
rp「あっ、はい。」
ci「部長との出会いはわかったけど、ショッピとはどうだったん?」
rp「ショッピさんは、コネシマさんと出会ってから一年後くらいやったかな、、、。
コネシマさんが連れてきてはった人でしたね。」
ci「ショッピが、、、訓練とかもしたんやろ?」
あ、やっぱ僕の事しっとんねんな。
rp「そうですね。、、しばらく経ってから「実践」
言われて稽古つけてもらいました。」
ci「なるほどなぁ。
俺的に、戦闘試験見とって、一旦下がる戦術的撤退はショッピに似とんねん。」
聞いた理由を返すかのように、チーノさんは言う。
確かに、戦術面はショッピさんに色々教わったから、かもしれへん。
os「じゃあ次、レパロウ君……ちょっと過去のこと、聞かせてほしいめう。」
過去のこと。
ここからは嘘の記憶を辿るしかない。
それが見抜かれて仕舞えば?と言う不安。
あ、
それを聞かれて、気づけば
ほんのすこし手をぎゅっと握ってしまった。
これ、きっと見逃されへんわ。
rp「……僕の過去、何言えばええんでしょうか」
それでもオスマンさんはにっこりと笑って
os「せやな、、孤児院入る前のここととか、ご両親のこととか、、
辛い話させるかもしれへんけど、ご両親はどんな人で、どうして預けられたのか聞きたいな。」
両親。
「父と母は、、温和な人でした。よく僕は、性格も容姿も両親に似とるって。」
os「、、、、」
「母は病弱で、僕が9の時に病死しました。父はそれが耐えられんかったのか、僕が川遊びから帰ってきたら首吊ってそのまま助からんかった。
立ち尽くしてたら、父が死ぬ前に手配したであろう孤児院の先生が来てそのまま、ですね。」
なんて、そんなん嘘や。
俺は結局、5年前拾われた時点から今まで両親がどうなったのかなんて知りもしない。
どこにいたのか、いるのか。生きているのか、死んでいるのか。
鮮明に思い出せるのはもう、顔と小さな頃の思い出の一つや二つくらい。
虚無感が流れる心の中で、自分はこう言う来歴で間違いない。と記憶を塗り替える。
ある種の自己暗示。
これが本当だと、見せかけるために。
os「、、辛いこと、しゃべらせてもうたな。」
rp「いえ、大丈夫です。」
os「俺もな、もう両親おらへんねん。」
「あ、えと、、?」
os「急に言われても困るよな。、、随分前やけど、
Ein Feind、、
虐殺の国言うたらわかるかな。
至って善良で優しい2人はそこの兵士に頭すぱーんとやられてんねん。」
Ein Feind
虐殺の国
僕の
うまれたくに。
os「きっと一生、俺は許せへんし、憎んでも憎み足りないくらいあの国の滅亡を心から望んどった。
あの国が消えても、まだ殺し足りないくらいに苦い思い出は消えない。」
心臓がどくどくと、脈打つ。
オスマンさんの話すことが、頭からすり抜けてなにも内容が入ってこない。
平静を装え。
目を背けたらあかん。
これは、尋問や。
俺が敵でない証明の為の。
os「なぁレパロウくん。」
「君はどうしてそんなに震えとるん?」
口が、開かない。
喉がひどく渇く感覚と、何が正解なのかわからない不安感。
オスマンさんは、どうなん?と言わんばかりの不敵な笑みで問いかけてくる。
猫みたいな鋭い瞳孔が、自分を見つめる。
そこに被せるように、シャオロンさんのバットが床を叩きつけた。
ガンッ、と硬質な音が響き渡り思わずびくっとする。
sha「何思い出して震えとるか知らんけど、過去フラッシュバックして動けんやつに誰が戦場で背中任せたい思うん?」
声が冷たい。
でも、核心を突いとる。
「それ、、は、、
そんなわけない、、て思います。」
やっと絞り出した言葉はそんな稚拙で、言い訳じみた否定だけ。
シャオロンさんは、呆れたように続けた。
sha 「本地では、お前の迷い一つで優秀な駒もゴミになる。
これくらい即答できんで、幹部務まると思っとるんか。」
随分とご立派なんやな、とシャオロンさんは吐き捨てた。
僕は、何も言い返すことができへんかった。
空気が、沈む。
重い重い沈黙の中で、シャオロンさんがなにか言いかけた。
sho「、、、もう、、
その時やった。
ut「待ってやシャオロン。」
シャオロンさんの言葉を止めて前に出てきたのは、鬱先生。
めまぐるしく回る状況と、緊張感で頭ん中が真っ白になる。
次は、何をどう答えればええ?
いや、その前にさっきの問いの返答をしなあかんか。
考えれば考えるほどわからなくなる。
その間にカツカツと足音を立てて鬱先生は近づいてきた。
なんだろうと思うのも束の間、瞬き一つした瞬間、目の前には赤い火種があった。
「は、、、」
目に付いて押し付けられそうなそれは、タバコだと理解するのに少し時間がかかってもうた。
ut 「目ぇ逸らすな、瞬き、すんなや。」
赤い火種がじりじりと近づくのを見て、目も喉と焼ける気がした。
ut「ここで怯むなら、戦場じゃもっと濃い“死の煙”に呑まれて終いや。
見たないとか、通じん。
戦場じゃ親しい奴が目の前で死ぬことだってあんねん。
目背けた奴から負ける。
そんくらいの根性があらへんと、死ぬで。お前。」
部屋は煙に満たされ、鼻をつく匂いが広がる。
目も煙が染みて、痛い。
でも、戦場ではこの痛み以上のものを負っていかなきゃいけない。
ut「(目、逸らさんな。……おもろい奴や。普通すぐ顔を背けるもんやのに。)」
しばらくして、目がしんどくなってきた時やっと、鬱先生はタバコを下ろし、
「俺からは十分や。」
といって下がった。
僕は数秒目を瞑って、再び顔を上げる。
今ので変に震えや動揺が収まった気がする。
すると、次はロボロさんが椅子に腰掛けたまま問いを投げかけた。
rbr「…もしもの話やで。戦争中、お前の目の前に“善良な市民”が数人おる。
片や軍の任務は緊急で、こなさんと全体が危険に晒される。
その二択しかない状況で……お前はどっちを選ぶ?」
部屋が静まり返った。
空気はまるで糸のように張り詰めて、色んな人のの呼吸音さえ響く。
rbr「(――一、二、三。)」
「軍の任務をこなします。」
変に収まった動揺のおかげか、
はたまた無意識下なのか。
ようわからんかったけど、僕は気づいたらそう答えとった。
「……理由は?」
僕は、わからんうちに、心の従うままに食い気味に答えた。
「僕を拾ってくれたのは軍や。
僕に価値と機会をくれたのも軍や。
軍は正しい……俺は、それを疑わん。
だから市民を見捨ててでも、全体の成果を得る為に任務を果たす。
それが
……僕の答えです。」
自分でもすらすら出てきて、わけがわからんかった。
でも、言うてることは間違いなく僕の本心でだからこそ、言い切った時に謎の達成感があった。
rbr「(……なるほど。
こいつ、軍を「信じてる」んやなくて「信仰」しとる。
忠誠って次元を飛び越えとる。)」
os「…君は忠誠心って次元を超えとる。
危ういくらいに、軍に信仰しとる。」
オスマンさんがため息混じりに笑う。
鬱先生も煙を吐きながら「ほらな。まあ、ええんちゃうか」と少し笑ったように、言った。
チーノさんとシャオロンさんは、、、、
なんか引いとらん?
「お前ヤバいな」
みたいな視線で僕を見る。
後ろで見ている幹部様たちは互いに視線を交わす。
そして一言、どしっと椅子に座り僕を眺める統領様は
「おもろいやん。気に入った」
といって笑った。
俺の胸の奥で、得体の知れん感覚が広がった。