テラーノベル
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ジェニは朽ちかけたビルのエレベーターに閉じ込められ、ヒステリーを起こしかけていた
真っ暗闇の中、聞こえてくるのは水が浸水してくる音だけ・・・水はもう腰の高さまで来ていた、しかもこの水は土と油の混じった匂いをしていて、脚も腰も水に浸かって冷え切っていた
肩にかけたバッグの中から、ノートパソコンを取り出し、電源を入れた、インターネットにつながるがどうか確かめたが、スマートフォンと同じように、このエレベーターの中は圏外だった
ついさっき・・・宗一郎に奇跡的につながったので、救助に来てもらえるのを願うしかない、しかし救助に来る前に、水が自分の背の高さより上に来たら・・・ジェニはゾッとした
このエレベーターの中には、手すりも掴まれるものも何もない、そしてジェニは金づちだ、パソコンを濡れないように両手で頭上にかざし、天井を照らしてみる
少なくともパソコンの画面の明かりで、真っ暗闇だけは避けられる
「助けてっっ!!早く!誰か来て!」
天井を見上げると、白い脱出パネルに4つのビスが打ち付けられている、もし救助に来てくれたら、きっとあそこが開くはずだ、パソコンを掲げながら、水をかいていって、重厚な胴の扉にパンプスを片方脱ぎ、そのヒールでガンガン扉を叩いて音を立てたし、大声で叫びもした、とにかく自分がここにいると助けを叫び続けた
しかし扉を叩いて騒ぐにも疲れて来た時・・・水はもうジェニのブラジャーの下まで来ていた、体は冷えきり・・・寒さで震え始めた・・・膝やストッキングだけしか履いていないむき出しの脚や、腰の骨の芯まで冷えてきて、ジンジンする
ジェニはこれが真冬なら自分はとっくに凍死しているだろうと思った、そして最後のあがきで、もう一度パネルの前に行って非常ボタンと、すべてのボタンを押した、もう一度ヒールでもガンガン叩いてみた
オフィスのコピー機のように、何かショックを与えると動き出すかもしれない、ノートパソコンを掲げている腕も疲れて、もうビリビリ痺れて限界だった
「誰かーーーーーーーーーっ!」
ジェニは二分置きに叫んだ
「たーーーすーーーけーーーてーーーくーーーだーーーさーーーいいーーーーーーっっ」
声の限り叫んだ、あたりは静まり返り、水が流れ込んでくる音以外何も聞こえなかった、本当にひとっ子一人いる気配がない、そして徐々に、気分はあきらめモードに入って行った
ブラジャーに水がいよいよ浸透してきた・・・ジェニの頭の中に、タイタニックで溺れている人たちのシーンが蘇った
―なぁに・・・息ができなくて、苦しむのはほんの1分ほどだ・・・後はもう何もかも分からなくなるはず―
そう思ってジェニは最後の時を覚悟した
ヒック・・・「もっと、ひどい死に方はいくらでもあるじゃない・・・」
そう自分に言い聞かせた、自分が死んで悲しんでくれる親はもういない・・・そりや同僚の藤子達は悲しんでくれるだろうけど、大学を諦める時に、色々考えていた人生でやりたいことのまだ10分の一も出来ていない
仕事が落ち着いたら大学の経営学を学びたかった・・・藤子の結婚式にも出たかった・・・そして何より自分が愛する人と結婚式を挙げたかった・・・
猫を飼いたかった・・・もっと理想をいえば、恵まれない人々の手助けなどもしてみたかった・・・可愛い赤ちゃんを産みたかった・・・
―竜馬さん・・・―
・.。. .。.:・
何を考えているの・・・彼は私が死んだところで悲しむはずが無い・・・だってあんな素敵な婚約者がいるんだもの・・・それにくらべて私は・・・27歳にもなってセックスさえしていない
死に瀕した人間は、もっと高尚な事を考えると思っていたのに・・・私の死ぬ間際に後悔していることがアホすぎる
情けなくてポロポロ涙が出てくる・・・それでもジェニの頭に浮かんでくるのは・・・彼の優しい笑顔と、筋肉質の温かい体・・・彼に抱かれてプリンセスと呼ばれたあの時・・・
あの時こそ人生で一番幸せだった・・・ずっと立ったまま爪先はジンジン痺れている・・・とにかくどこでもいいから座りたかった・・・ジェニはとうとうこらえきれずにパソコンを力なく離した
パソコンはドボンッと音を立てて、水の底へと沈んだ・・・そして数分後・・・画面の光は消え、ジェニはとうとう冷たい真っ暗闇に包まれた
ヒックヒック・・・「こんなことなら・・・こんなことなら・・・」
ジェニは思いっきり叫んだ
「竜馬さんとセックスしておけばよかったーーーーーーーーーーっっ!」
うわーーーぁん「竜馬さんのバカバカバカーーーーーーッどうしてあの時セックスしてくれなかったのぉーーー!!」
ジェニは声のかぎり叫んだ
「竜馬さーーーーーーーーーんッ!」
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その時、ドカンッとエレベーターが揺れた
「キャァッッ!!」
ジェニは慌てて水をかいてエレベーターの隅に逃げ込んだ、ふと天井の上で何やら話し声が聞こえる・・・人の気配がしている!そしてバーンッと天井から衝撃音が鳴った
「ヒィッ」
一瞬エレベーターのロープが切れたのかと思った、そして続く激しい金属音
―バーンッバーンッシュイ----ンバリバリバリッッ―
天井がバリバリはがされ、途端に眩しいライトの光が天井から降って来た
「ここよっっ!ここ!!」
ジェニは心臓を高鳴らせて大声で叫んだ、真っ暗闇から差し込んでくる光があまりにも眩しくて、目を手で覆った
エレベーターはグラグラ揺れている、くぐもった人の声がどんどん聞こえる、明らかにエレベーターの天井に何人かいる、けたたましい金属音を出しながら、何やら必死に作業している
―ああっよかった!助かるっっ―
ジェニは泣きながら怪我をしないように、降ってくる火花や木の破片をよけるようにエレベーターの隅に逃げて、必死で天井を見上げる
「ここよっっ!閉じ込められているのっっ!助けてっ!!」
必死に叫んだ、やがて天井のパネルがメリメリはがされ、眩しい光が真っ黒なエレベーターの中を照らした
そして一人の男性がひょこっと中を覗き込んだ
「よぉ、ジェニ」
竜馬が後光のように光を背負っ、て闇の中でジェニを見つめた
「聞こえたぞ!セックスしてやるから泣くな」
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コメント
1件
わあ、第104話読みました!ジェニの絶望と本音がもう切なくて笑っちゃいました…「竜馬さんと♡♡♡しておけばよかったー!」って叫ぶシーン、必死すぎて愛おしいです。そこからの竜馬の登場、「聞こえたぞ!♡♡♡してやるから泣くな」って、もうカッコよすぎますよ!光背負って現れるヒーロー感、完全に持ってかれました。次が気になります!
latte
732
芙月みひろ
494
#溺愛
桜咲かな
592
#長編
結愛
319