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「いいか、雅輝。こういうときは迷うことなく、抵抗しなきゃいけない場面だろ! このまま襲われてもいいのか?」
目を釣りあげて自分を叱る、橋本の顔はかなり怖いものだったが、宮本としてはかなり嬉しさを感じる瞬間だった。自分の身を案じ、こんな場所で卑猥なレクチャーをわざわざする橋本の優しさに、涙が滲みそうになる。
「雅輝、どうして笑っていられるんだ。俺は心配して、こうして身をもって教えているんだぞ」
笑っていても、滲んだ涙が流れそうになったので、慌てて両手で拭い、湿気ったその拳を握りしめながら豪語する。
「ほかの人ならいざ知らず、陽さんに誘われて抵抗するなんて、全然頭になかったです!」
「……俺に掘られてもいいのかよ?」
少し間を置いたあとに告げられたセリフを聞いて、宮本は迷うことなく大きく頷いた。
「だって当初の予定では、俺が陽さんに食べられるハズだったんですよ。今更そのことについて、文句や抵抗なんてものはありえません」
キッパリ言い切る宮本に、橋本は額に手を当てながら首を垂れた。
「あ~なんか心配損した。無駄すぎるだろ、俺の行動……」
「無駄なんかじゃないですよ。むしろ愛が深まったと思います」
「愛が深まった……だと?」
宮本が満面の笑みで告げると、橋本の頬が一気に赤く染まった。俯いていてもわかるくらいに顔を赤らめる恋人に、背中を向けてお尻を突き出しながら説明する。
「陽さんが俺を想う気持ちが、すごく伝わってきました。これからここで、掘られてもいいと思うくらいに」
「まっ、雅輝、いきなりそんなことを強請るとか、なにを考えてるんだ」
「ここから別々の車で帰るのは寂しいなぁとか、明日仕事あるけど、さっきの続きがしたいなぁなんてことですけど?」
橋本は無言のまま、宮本の背中に抱きつく。
「えっ?」
「雅輝、あのさ……」
耳の傍で語られる橋本の声は、どこか戸惑いを感じさせるものだった。
「なんですか、陽さん」
橋本の気持ちを察して、前を向いた状態で返事をした。恥ずかしがり屋の恋人が思ったことを口にできるように、宮本なりの配慮だった。
「俺も同じ気持ちでいるから……このまま別々に帰ったあとで、俺の家に来ないかと」
「陽さんってば、明日朝早くから仕事があるっていうのに、俺を誘っているんですか?」