テラーノベル
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無名kちゃん
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#降谷零
#風見裕也
コナンくん。博士のところに名前さん行ってない?安室さんが聞きに来たの。
また喧嘩したのかな?連絡がつかないんだって…。心配だね…。
蘭からのメールに、コナンは返事した。
来てないよ。と。蘭からは、じゃあ博士のところに泊まるなら博士によろしくね!と返ってきた。
灰原はパソコンから振り向いた。
「それで?」コナンは何も答えない。うつむいたまま。
はあ、と灰原は阿笠に肩をすくめる。
「本名はレディ・マルコム・カクタルア・スミス?」パソコンを再び見る。英字で書かれたそれには、In the name of justiceーー正義の名の元に……燃えるFBIの庁舎と、爆発しているマスコミのヘリの新聞記事。
「アメリカ海兵隊特殊部隊、ネイビーシールズの【違法特殊訓練】の生き残り…ね」
灰原は続ける。
「当時、それはまるで都市伝説みたいにネットなんかでは話が出回ってはいたみたいだけど…本当に存在したなんて」
「うむ」と頷く阿笠。「基本的に…」「アメリカの機関は警察でさえ」
「生死問わずっていうんだろ」ようやく喋り出すコナンは、自分の家の明かりのついている寝室を見上げる。
「自分の家族を殺されれば」という灰原はくる、と椅子を回してパソコンに戻った。
「そこに理由はいらないわ。どんな制裁をもっても天秤にはかけられない」
「哀くん…」
「死をもって……償わせるわ………」わたしならね。と肩をすくめる。
「わかってるわよ」口を開こうとしたコナンに、灰原は黙らせるように続ける。
「当時、マスコミのヘリは狙撃されたと報道されたみたいね。しかも、FBIに」
「それなら……世論は彼らには味方しないじゃろ?向こうは自由、という名前がつくもののためには民衆が団結しやすい」と阿笠。
「ああ…だがおそらく……彼女が手を回した」
「そうね」と素直に頷く灰原。「頭のいい人ね。世論を動かせば、国が動かざるを得ない。1匹の蟻が運べないミミズでも、集まれば運べる。例え自分にされたことを国が揉み消したとしても、それとは別に、FBIは壊滅的に国民の信用を失うわ。当然」
灰原は手のひらをあげる。
「【お偉いさん】たちはおかんむりね」
「ああ、全部これでつながった」
安室さん、もとい公安部が彼女の生活拠点を管理している。目を離さないわけだ。そしてアメリカも。
「屋形船の事件に関しては…」
「あの花火が上がった瞬間、私にもバイクの音はしていたから」灰原はまた向き直る。
「…何か、を橋の上の人物に投げた」
「そう考えるのが妥当だが、安室さん…バイクの件は証言していないし…それに、屋形船で出た食事」
「うまい肉じゃったのぉ」とうっとりする阿笠。
「…たしかに」灰原は続ける。「屋形船では不自然ね」肩をすくめる。「前2隻だけ魚…魚…?」コナンは首をかしげる。ただ、あの船の殺しは彼女だ。間違いない。だが証拠がない…。
「もし」とコナンは人差し指を窓に向ける。「スミスが安室さんに…」「え?」
「本気……なら?」コナンは2人を見やる。灰原と阿笠は目を合わせあった。
「お前なら?」
「はあ?」と言う灰原は腕を組んだ。
「させないわよ」はあ、とため息をつく。「女ならまず【男】が人殺しになんて耐えられるとは思わないわよ」肩をすくめる。「愛していてもいなくてもね」
「なら……」と灰原をしばらく見るコナンに、灰原は目を開いていく。
「まさかーー」
「組織が関わっていて彼女も知っていたら…?」
「月がきれいね」
灰原は空を見上げている視線を、赤い茶髪を揺らし探偵へ戻した。
「……死んでもいいわ」
コナンはふぅ、とため息をつく。
「そう……愛しているなら、なんにでも彼女はなる」
あなたたち男とは違って。と阿笠は見上げられ「わし!?」素直に辺りを見回す。
「それも証拠はないが…」
「ならとにかく」と灰原。「スミスの身体能力は並外れてるってことは確かね。科学者としては、申し訳ないけどデータが見たいわ」
「照準の正確さ、薬物耐性、接近戦にも強いとあった。何より…」
「獲物を狩る罪悪感のなさーーこれは本当に戦地の兵士と同じよ。舞台がどこでも、認識できない」
「PTSDになるほどの訓練だからな」
そんなのは……正義じゃ……
コナンは拳を握りしめた。
「やるか、やられるか……人間の生に対する執着は桁外れなんだから。【特殊】に訓練すればするほど…」強くなる。と顎を引く灰原。
「兵器として使えば…」
「灰原」と強めにコナンに言われ、はいはい。と灰原は肩をすくめる。
「でも…そうなるわよ……彼女が命を捧ぐほうに、勝利の女神は微笑む」
「天使って…」
「え?」
天使って呼ばないでーー
「あぁ、よくわかったよ……」コナンは窓際に移動する。「彼女がニトロを使用する理由もな」「ニトロ!?」灰原は椅子を勢いよく降りてくる。
「ニトロは爆発物として使用すれば1滴で地獄をつくるーー!そんな危険なものを彼女がなぜ扱うの!?」
「ベンデッタだ」
灰原は力なく立ち尽くす。
「親の……仇……」
「彼女の両親と兄はニトロに噛みつかれて死んだ。海兵隊員のエドワード・グリーンが……そうやった」
「なら…FBIの爆発物もおそらく…それってことよね…」書いてはないけど。と灰原。
「あぁ、だから…」
赤井さんは彼女をニトロと呼ぶし、飲まされたのか。
「だからFBIは彼女を兵器として認識してる。だから新しいーー」と灰原を見て目をそらす。「何?」「いや…まぁ、お前に黙っていても仕方ないから…ただ言いにくいだけだよ」コナンはポケットに手を突っ込んだ。
「人間に投与する薬を…」
「あぁ」灰原は珈琲を注いだ。「アポトキシンはね」と語り出す灰原はソファに座る。
「もちろん…ラット、ラビット、豚、ありとあらゆる動物に投与してる」カチャとカップを鳴らし傾ける。
「そして…人間にも」
阿笠は目をそらした。
「もちろん…」とカップで口元は隠れる。「全員死んだわ」だから、灰原はふう。と天井を見る。
「あなたからしたら私もーー」
「お前の場合も、スミスの場合も。許されることじゃない、だがなーー」
コナンは隣に座る。
「お前もスミスも、人間だよ。だから…それにつけこむ組織も。FBIも…間違ってる」
灰原はしばらく眼鏡の奥を見ていたが
ふ、と笑ってそらした。
「あとは…」
「ん?」
これはスミスーーあなた自身にしか決められない……
あなたが人間か兵器か……自分の運命は自分で切り開くしかないわ……
「?」とコナンは阿笠を見上げた。
「……」
「わたし」とスミスは髪をかきあげた。
赤井が洗面所で歯ブラシをくわえていたところに、スミスは入ってきていた。
何も身に付けずに。
足音も気配もないのはわかる。だが、と素直に思っていた。
あれだけの薬を投与されて3日で起きてくるなんて、と。
「何日いったい昏睡してた?腹はペコペコだしからだは汗だくだ」
どけ、と押し退けらればたん、と浴室が閉まる。シャワーの音がしだして、赤井はすぐにキッチンに戻った。
「レディさんが!?」
座っていた小さな探偵が行こうとするので止めた。「今は行くな。行ってもいいが素っ裸だぞ、シャワーを」
「すっ」キャメルが紅茶を詰まらせ咳き込む。
コナンから痛いほど視線を感じ、手をあげる。「俺は何もしてない。きみが手を出すなと言うからな」家を借りている弱味で。と思う。
「今日で3日だな…副作用もなく、か?」ジェームズが言う。「さあ…話すどころか何もしていないからな…わからないどころか、俺の命の心配は誰も?」
コナン以外が揺れ動く。
「いや…どうするんです。これから」
「当然」とコナンは立ち上がる。「解放するよね?」
赤井は何も言わない。
「赤井さん!」とコナンは叫ぶ。
「事実上は…な」
2人はそのまま目を向けあったままでいた。
事実上は解放しても、我々はまた、再び交わることになる……
そうだろ……安室くん……
「はあ」と赤井はわかりやすく壁に手をついた。
その仕草に皆は顔を見合わせる。
「厄介だ」
「は?」
「…女に関わるのは、本当に…最も、ニトロは女の皮をかぶっているだけだがな…」
この場にいないジョディを思って、ため息が出た。
ドアが開き「ああっ!」キャメルは部屋の端にがたがたと下がる。
ジェームズが胸元に手を入れたのを、コナンが飛び付き首を振った。
前だけ隠すようにタオルを垂らして、スミスが入ってくる。
冷蔵庫を開け、牛乳をぐっと傾けごくりごくりとすごい勢いで飲み干し、ぽいと床に捨てた。
「はあ……」赤井を見ながら口元を拭う。
「……脱水症状は?」
首を振るスミス。
「筋肉の萎縮は?」とまだ飛び付かれたままのジェームズにも、肩越しに首を振る。
「…彼女でテストしても」とコナンに囁くジェームズ。「彼女の薬物耐性はA+どころじゃないからな…あまり参考にはならないような気もするが……」
「おい」と言う赤井に、噛みつくような視線をスミスは送る。
たったっ、と赤井の前に出てくると、スミスはぐいと顎を上げた。
「わたしを、気安く、呼ぶなーー」
ぶっ!と音がして、スミスは赤井に唾を吐く。
「…!」とジェームズは動こうとするが、赤井は手でそれを止めた。
かかった唾で開けられない片目を拭いながら言う。
「…エンドルフィンの量」
「!」スミスは後ろに下がる。
「突き上げてくるほど快感だったろ?」
コナンはジェームズの胸元で目を閉じ、がくりと頭を垂れた。やがて振り出す。
何をしたかわかったから。
「必ずーーまた」す、と赤井は手を伸ばす。
「俺に抱かれたくなるぞ……」
ぎり、とスミスが奥歯を噛んだ音がした。ばん!とそのままキッチンを出て行く彼女に、コナンはようやくジェームズから離れた。
「赤井さん…」
というコナンの顔は見えない。「ごめんね」とコナンは言う。
「……最低だよ」
そのままスミスを追うコナンの足音が遠ざかる。
どさり、とソファに座り、赤井は頭を後ろに垂れた。
最低以下で構わない。勝つのなら誰の心でも粉々にしてやる……。
コメント
2件
ありがとうございます!
「月がきれいね」のあの台詞、すごく重かったです……。スミスの過去が明らかになるにつれて、彼女の「兵器」としての側面と、それでも人間であろうとする葛藤が浮き彫りになって、胸が締め付けられました。赤井さんの「最低だよ」というコナンの一言にもグッときましたね。続きが気になります。