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神殿を出ると、聖騎士候補生たちの声が空気を震わせていた。前線の話を聞き終えたばかりなのだろう。
「ついに、あの憎い悪魔を倒せるんだな!」
「ちょっと…怖いな…」
さまざまな声が入り混じる中、セリスの姿もあった。しかし少年は彼らに目を向けることもできず、ただサリエルのいる地下牢へ向かった。
地下牢は湿った空気が重く、石壁に当たる水滴の音だけが静寂を切り裂く。冷たい石の匂いが鼻を突く。鎖に繋がれたサリエルは、いつもの気だるげな姿勢で鉄格子の向こうから少年を見上げた。
「…サリエル、私は明日には前線に戻ることになった。」
少年の声は小さく、しかし決意の重みを帯びていた。手には戦士としての覚悟が滲んでいる。
サリエルは一瞬目を細め、微かに口角を上げた。
「ふ〜ん…寂しくなるな。まあ、僕がここで暇してるだけか。」
その笑みには、皮肉と、ほんのわずかな温かさが混ざっていた。
少年は鉄格子に手をかけ、冷たい金属を握りしめる。指先に、戦士としての覚悟と恐怖が絡み合う。
「でも…サリエルの仲間である悪魔たちを…倒さなきゃいけないんだ。私は…迷わず切れるのか…。」
胸の奥が締め付けられ、言葉に出すたびに自分の決意が揺らぐ。
サリエルは、少し肩をすくめて寂しげに笑った。
「仕方ないよな…僕の仲間だもんね。あなたは正しいことをするだけだ。」
その笑いには、諦めと哀愁が混ざり、少年の胸に刺さった。
「もう逃げられない…仲間たちが待ってる。」
少年は鉄格子に手をかけ、冷たい金属を握りしめる。指先に、戦士としての覚悟と恐怖が絡み合う。
「へぇ、仲間か…真面目君だね。」
サリエルはくすくす笑い、鎖に縛られた体をわずかに揺らした。
「…前はそうじゃなかった。でも今は違う。私が信じるもののために戦う。」
少年の声は震え、胸の奥に熱い光がともっている。
サリエルは笑みを消し、真剣な目で少年を見た。
「そうか…なら止めはしない。でも忘れるな。あなたの言う『正義』は、時に人を縛る鎖になる。誰を守りたいのか、その心を見失うな。」
その言葉が胸に突き刺さり、少年は無意識に鉄格子を握りしめた。冷たい金属が痛いほど手に伝わる。
「…サリエル…」
サリエルは肩をすくめ、いたずらっぽく身を乗り出した。
「まあ、心配しなくていい。当分は消されることは無いだろう。」
少年は小さな光を宿した瞳で微笑む。
「…ありがとう、サリエル。あなたがいてくれてよかった。」
サリエルは目を細め、少しふざけた口調で答えた。
「珍しく素直だね〜。でも僕も…あなたがいてくれて、悪くないかな。じゃあね、不器用な天使さん。」
鉄格子越しの二人は、冷たい空気の中で言葉の重みと温もりをそっと噛みしめる。湿った地下牢の冷たさも、わずかな光も、二人の別れの時間を止めることはできなかった。