テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
プロローグ
春は出会いと別れの季節。
春の出会いが僕の人生を変えてしまった。
その日は、暖かい気温だった。
暑くも寒くもないというのは最高と能天気に考えた。
一人でさっさと下校しながら。
もうすぐ家につく、という所で、僕は頭が漂白されてしまったかのように、何も考えられなかった。そのまま停止して、気絶。
痛いとか、わからなかった。
暖かい……なんだ、この温もり。
[大丈夫?]
まだ、目がぼやけてる。目が霞んでよく見えない。
目をこすると、さっきよりは幾分か見えるようになった。
瞳に映ったのは、美しい少女。
[わっ……!]
[あ、驚かせちゃった?ごめんね。倒れてたから、寝かせてたんだ!]
なんだ、この少女。少女といっても同い年ぐらいだけど。
[驚いてはねぇけど。助けてくれてありがとな]
[どういたしましてー!]
はにかんだ少女は美しかった。無邪気に鈴のように笑いかけてくれたら、男なんて全員いちころだろ。
[ねえ!名前なんていうの?]
[俺は……鮫島カイ。そっちは?]
[榊原魅和!]
魅和は、自分の存在をアピールするかのようにぴょんぴょんと跳ねた。
[魅和な。おんにかぎる。俺、もういくな!本当ありがと!]
俺は少女から翻って、自分の家へ急いだ。