テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#片想い
あるも
3,100
ムム☆
2,791
#キャラ崩壊、口調迷子注意
番外編
ーーーーー
「えーと…これは一体??」
目の前の少年…否、青年を見る。
「あー、説明が難しいんだが…」
「別世界の僕がこの世界に来ちゃったみたい⭐︎」
「「「「ええーーーーー!!!」」」」
遡ること十分前…
「中也、あーんして」
「ほれ。」
(((今日もいつも通りいちゃついてる‼︎)))
1-Aは今日も通常運転である。
ガッッタン‼︎
そんな平和な空気を壊すが如く、オールマイトが教室の扉を強引に開け、叫んだ。
「大変だ‼︎太宰少年が…太宰青年になった‼︎」
…
一瞬の静寂。そして、
「「「はぁ?!?!」」」
「元気だねぇ」
「元気だな」
本人たちは気にも留めないようにいうが、意味のわからない言葉に皆が叫んだ。
「一体どう言うことですか⁈」
「それが、ワタシにも分からなくてな…取り敢えず太宰少年のところへ連れてきたんだが…あれ?太宰青年⁇」
オールマイトが後ろを見て探すも、その太宰に似た人はいない。
「そこの美しいお嬢さん、是非私と一緒に心中しませんか?」
バッッッとその場にいたものが皆黒板を見ると、そこには八百万の手の甲にキスしながら口説く(?)太宰の姿があった。しかしその服装と背丈は異なっており…
「だっ、太宰が、二人…だと⁈」
「えーと…これは一体??」
「あー、説明が難しいんだが…」
中也がバツが悪そうに頭を掻く。
「別世界の僕がこの世界に来ちゃったみたい⭐︎」
そんな中也とは真逆にあっけらかんとして言う太宰。
「「「「ええーーーーー!!!」」」」
その声が教室中に響いた。
「そっ、それはどう言うことだい⁈太宰少年‼︎」
「おそらくこの世界の個性…いや、これは異能力だな。まあ、個性事故のようなものだと思ってよ。」
「その見た目だと…あっちの世界の太宰か。あの服装からしてすでに探偵社に入った後みたいだな。」
もちろん、あっちとは前世という意味である。
あまりにも淡々というので、その場の空気が呆気に取られる。
「な〜るほどね〜…。私は別世界に飛んできてしまったというわけか。しかも昔の私の姿をした少年と、少女になった中也がいる世界。…面白いじゃないか‼︎」
「「「いやアンタはなんでこの状況でそんなお気楽なんだよ‼︎‼︎」」」
まだ八百万の手を離していない青年太宰にクラス中からツッコミが走る。
「いやぁ、素晴らしい世界だ‼︎こんなにもたくさんの美女がいるなんて‼︎それに、個性という異能力に似たものが殆どの人に備わっているというのも興味深い‼︎」
「いっ、異能力⁇」
「なんでもねぇ‼︎‼︎」
中也の声が響く。異能力のことは生徒たちにはまだ言っていないからだ。
「うっわ〜、この時の僕ってこんな胡散臭かったっけ?」
「手前はいつもこんなんだよ。」
現在の二人の格好は、窓側の席の中也の方に太宰が寄りかかるというまさにイチャイチャスタイル。
「ひっどーい。それが愛するダーリンに言う言葉かい?」
「キッショ。誰が誰のダーリンだ。」
「……」
太宰と中也がいつものようにイチャイチャしているのを黙って見る青年太宰…。
(((カオスだコレ!!!!!)))
A組の心は一つになった。次の瞬間…
「おっぅえーーーーー!!きっもちわる‼︎」
青年太宰の声が響く。
「「「⁈⁈」」」
「なんだいこの状況は⁈私が⁈この蛞蝓に⁈愛してるだって⁈⁈」
その台詞に驚いたのはA組である。なにしろ太宰はいつも呼吸をするように愛してるとか、好きだとか、そんな言葉を轟いでいるのだ。
青年太宰は思わず一歩後退した。
「そこの緑頭の少年!なんかあったのかい⁈精神系の異能力でもかかった⁈いや、でも無効化されるはず…は⁇」
太宰が中也を拒絶することなど、あり得ないに等しい。この状況に理解が追いつかないのは、A組も同じなのだ。
「弱みでも握られた?私がこんな帽子置き場のセンス皆無の阿保馬鹿蛞蝓中也に弱みを握られるなんてあり得ない。(ブツブツ)…」
小声で話しながらそう言う青年太宰。
「あっ、あの…」
質問された緑谷が答えた。
「太宰君…いや、太宰さん?はいつもあんな感じですよ。」
「そうだ、死のう。コレは夢だ。」
その言葉と同時に青年太宰は窓に足をかけた。
「「「ストップストップストープ!!」」」
「離せ!!こんな悪夢なら早く覚めた方がいい!!」
窓枠に足を掛け、今にも飛び降りそうな青年太宰を、峰田・切島・飯田・上鳴の四人が全力で引きずり下ろす。
「自殺しようとしないでください!!」
「夢じゃないから!!」
「現実逃避早すぎるだろ!!」
「離せぇぇぇ!!こんなの現実じゃない、そもそも私は中也のこと大っ嫌いなんだ‼︎中也も同じ‼︎だからこんなことがあり得るわけがない‼︎」
その言葉がその場に落ちた途端、空気が止まった。
(太宰君が…)
(中也ちゃんのこと…)
(((嫌い⁈⁈)))
「だから、こんなこと天地がひっくり返っても、夏に大雪が降っても、空から槍が降ってきてもあり得ないくらいのことなんだよ⁈私が中也とイチャイチャしてるなんて考えられない‼︎たとえそれが女になった中也だとしても‼︎」
ここまで言うのだ。確かにこの青年太宰が中也のことを嫌いなのは確かなのだろう…と言うのがA組の総意見である。
「確かに、ここまで嫌いなんだったらこの…その、ここの世界の二人のこと密着具合はきちいよな…。」
切嶋がそう言うと、青年太宰はキョトンとした顔で答えた。
「そんなことはどうでもいいさ。それくらいなら私達もやってるし。」
…
「「「は????」」」
「わー…君たちほんと仲良いんだねー。」
青年太宰は棒読みでそう言った。
「確かに、このクラスの仲の良さには毎度驚かされるよね〜。」
太宰が中也の手をいじりながらそう溢した。
「いや、待ってください。」
飯田がメガネを押し上げる。
「今、とても重大な矛盾が聞こえた気がします!」
「うん?」
青年太宰が首を傾げる。
「嫌いなんですよね?」
「もちろん。」
窓にかけていた足を皆下ろした太宰がそう言った。
「私は中也をどうやって殺すかを中也と出会ってから365日、ずっと考えてきたからね。」
空気が凍るような気がした。
(殺す…なんでそんなこと…)
そんな言葉、当たり前に使っていい言葉ではない。それも、毎日そんなことを考えるなんて…
(嫌いのレベルが違うでしょ…)
「おー安心しろ。俺も十五のあの時出会ってからずっとお前を殺すことだけを考えて生きていたからな。」
中也がそう言う。
(過去形なのは触れないでおこう)
太宰は自然とそう言っている中也にツッコむことはなかった。
「私は中也の全てが嫌い。趣味も悪いし暴言暴力ばっか。ほーんっと大っ嫌い。たとえここの世界の中也みたいに女の子だったとしても、絶対にあり得ない。」
絶対に…ともう一度付け足した。
「…過去の僕に一つ忠告しておこうか。」
ずっと黙っていた太宰が青年太宰を見た。
「後悔をしたくないなら、素直になることだよ。」
いつの間にか中也の横から青年太宰の前に立っていた太宰。
「ずっと隣にいるなんて、そんな保証はどこにもないんだ。織田作のように…ね。だから、絶対に後悔しないように、素直になるべきだよ。若人よ。」
その場に沈黙が走る。太宰の目は、冗談の色もない、ただただ真剣な瞳だった。
「……ふーん。最年少幹部様が随分と丸くなったもんだね。」
「それ自分で言ってて悲しくないの?」
「だって私だもん」
太宰と青年太宰の間には火花のようなものが見える。
コッソリ…上鳴が中也に耳打ちする。
「なー、中原。コイツら同一人物なのになんでこんな歪みあってんだ?」
「同族嫌悪ってやつだな。」
「あぁ〜なるほど。」
上鳴や、周りのクラスメイトも納得する。
(こういうタイプが一番)
(おんなじタイプを嫌うんだよなぁ)
「てか、中也ちゃん的にはこの状況治めなくていいの?」
「なんで?」
“なんで?”その言葉が何度も繰り返される。
(((なんでって何?!?!)))
「なんでって、太宰くんと、大人の太宰くんのこのバチバチの空気止めなくていいの⁈」
A組側からしてみれば、中也は彼氏が二人になったも同然なのである。なのにこの落ち着きようはなんなのか。
「いや、どっちかっつうと、止める気力がねぇ」
「はぁ?!?!」
爆豪のイラついた声が響いた。
「うざいの代名詞の太宰が二人…つまりうざいが二倍になったんだぜ?もう俺にこれを止めようという気もねえよ。」
(まだマシなのは、あっちの太宰が俺ではなくこっちの太宰に構ってるとこだな。)
しかし、いつ飛び火するかわからない。いつでも逃げれるよう、窓の近くから離れる気はない。
「中也って女の子になっても蛞蝓度は変わらないんだね。口うるさくて手を出すのが早くって、そんでもってちーっちゃい」
「おし、地獄に落としてやる。」
「ストーップ!ストップ中原ーーー!!!全員で中原を止めろーー!!!」
「ちょっと〜中也ってば、こんな昔の僕に構わないでよ。どーせ、あっちはあっちであっちの中也とどうにかなるんだから。」
「あっちあっちうるせえんだよ‼︎夏か⁈糞太宰‼︎」
「うわー…飛び火してる」
青年太宰は他人事のように一部始終を見ていた。←原因
「さて、そろそろ私も帰る時間だ。」
「「「帰り方わかるんかい‼︎」」」
(じゃあ今職員室に事情説明しに行ったオールマイトいらなかったってことじゃん‼︎)
可哀想なオールマイト。無駄に走らされて何も知らないまま事態は終わるのだ。
「まぁ、おそらく直前まで戦っていた能力者の異能ってとこだろう。」
「なんで帰り方わかるのに止まってたんだよ⁈」
「せっかくだし、観光?」
「「「異世界観光みたいにいうな‼︎」」」
クラス全体からツッコミが走る。
「あぁ、でも少し残念なのは、女性になった中也を写真に残せなかったことだ。笑いのネタにでもしたかったのに。」
電子機器が使えないからガラケーも使えない、と付け加える。
「こんな可愛い可憐な少女になってるって言ったら笑いのネタどころか…って」
「おお、本音を言ったか」
ニヤニヤと笑う中也の反面、青年太宰は手で顔を隠している。しかし顔が赤いのは隠せていない。
「…あぁそうだよ!!客観的に見て、客観的に見てそういう分類に入るんじゃないかい⁈中也は‼︎」
…
(((照れた…)))
「開き直ったな。」
静かに中也を後ろからハグし、中也の頭の上に顎を乗せ、青年太宰に静かなる威嚇をする太宰。
「それに、あれだね。こちらの中也は随分と私に笑顔を向けるらしい。私の中也も君のようなら、心中の誘いだって、一度くらいはしただろうね。」
(まっじで開き直ったなコイツ)
ハッと軽く笑ったかと思えば、中也は青年太宰の首元を掴み答えた。
「お生憎様、そんなつまらねえ死に方はしたくないもんでね、マシなプロポーズ考えてきな。丁稚。」
沈黙が走る。
(ちゅ、中也ちゃん…)
(かっ、かっけぇ…!!!)
「…は⁈私がこんな事中也に言うの今後一生ないからね⁈むしろこんな色男が蛞蝓に言ってあげてるんだ。感謝をしてほしいくらいだね‼︎」
顔は平常を保っているものの、耳はまだほのかに赤い。
「太宰よぉ、大事な彼女を大人の自分が口説いてるの見てどんな気持ちなんだ?」
峰田が太宰の肘を突く。
「…当たり前じゃないか。すこぶる機嫌が悪いよ。中也を虐めていいのも、口説いていいのも、僕だけ。同一人物だとかそんな事関係ないね。」
青年太宰を見つめるその瞳に光はなく、口は不気味に微笑んでいた。
「ヒョエッ」
「自分だからって見逃してあげてたけど流石に我慢できない。コレを強制送還させる。」
「「「お前も帰る方法わかるんかい‼︎‼︎‼︎」」」
「早くしろよ…太宰は二人もいらねえから…」
中也が疲れ切った声で太宰を睨む。
「はいはい」
そう言って青年太宰に近づき、
「異能力“人間失格”」
青年太宰が光に包まれ消えていく。
「過去の若人へ、玄人の僕の忠告は忘れないでね。後悔したくなければ。まぁ僕は興味もないけど。」
「聞く気はないけど、覚えといてあげる。」
(ここでも過去でも、コイツの捻くれ度合いは変わらないらしい。)
中也はそんなことを考えながら、消えゆく青年太宰を見ていた。
青年太宰の姿が光の粒となって消えた。
教室は、しん……と静まり返る。
「……。」
「……。」
「……帰った?」
最初に口を開いたのは麗日だった。
「帰ったね。」
あくびをしながら答えたのは太宰であった。
「なんて言うか、嵐みたいだったな。」
切島の言葉に、皆が同意した。
「てかてか!!聞きたかったんだけど、なんで大人の太宰が過去なんだ?どう見てもお前の方が子供じゃんか‼︎」
「確かに…」
「ずっと不思議に思っていましたの」
「何故なんだ?太宰」
障子の問いに、全員が太宰を見た。
(前世とか言い出すなよ!頼むから!)
中也は祈っていた。太宰が本当のことを言わないことを。うまく誤魔化すことを。
「まぁ世の中、知らなくていいこともあるんだよ。」
太宰はにこりと笑って、人差し指を唇へ当てた。
「企業秘密♡」
誰も、それ以上は聞かなかった。
太宰の笑顔はいつも通り。
なのに、その笑顔だけが“ここから先は立ち入るな”と静かに告げていた。
「……はいはい。」
上鳴が両手を上げる。
「企業秘密ならしゃーない!」
「俺も気になるけどな!」
切島も苦笑する。
「まあ、本人が言いたくないなら仕方ねぇよ。」
「そうですわね。」
八百万も静かに頷いた。
「もう一個質問いい⁈」
葉隠が中也に近づいて問う。
「大人の太宰くんはさ!太宰くんが中也ちゃんに『愛してる』とか、『可愛い』って言ってることに対してうわぁー!!ってなってたけど、二人の距離感については特に何も言ってなかったよね⁈」
葉隠の一言に、教室中の視線が一斉に中也へ集まった。
「……あ。」
芦戸が手を叩く。
「確かに!!」
「言われてみればそうじゃん!」
上鳴も身を乗り出す。
「『愛してる』とか『ダーリン』とかにはあんなに拒否反応だったのに、肩組んだり、寄りかかったりしてることには何も言ってなかったよな?」
「そこ、俺も気になってた。」
切島が腕を組む。
「普通そこも『気持ち悪い!』ってなりそうなのによ。」
二人は一拍も置かずに答えた。
「別に変じゃないからだろ。」
「そーそ、昔から僕たちはこんな感じだし、別に好きとか関係ないから、これ。」
「「「………」」」
教室が静まり返る。
そして、
「「「「嘘つけぇぇぇぇぇ!!!!」」」」
A組総ツッコミだった。
「でも良かったね。もしここに来たのが僕じゃなくて中也だったら多分、この学校潰されてたよ。」
「俺だったら比喩じゃなく死んでただろうな。」
「その場で嘔吐くらいはしそうだね。」
「太宰で良かった。」
その一言に、A組全員が顔を見合わせた。
「……つまり。」
緑谷がおそるおそる手を挙げる。
「中也さんの過去版が来た方がもっと大変だったってことですか?」
「「うん/ああ」」
二人同時だった。
「えぇ……。」
「想像できねぇ……。」
切島が頭を掻く。
太宰に比べると、中也はあまり愛情表現をしていない。否,むしろ全くと言うほどしていない。だからダメージは少ないと思うが…
「中也はめっちゃめっちゃツンデレだから。今も変わらずだけど。」
「俺はツンデレじゃねえ。今だって変わらねえ。俺はこの青鯖が大っ嫌いだし、コイツも俺が嫌いだ。」
「それはもっちろん。世界で一番嫌いさ。」
「ただ、前と違うのは、大切だって言う気持ちをお互いが認めただけだ。」
…
「ちゅーやがデレた!!!」
「デレとらんわ!!!」
また、二人の喧嘩が始まる。
(((もう、考えることをやめよう…)))
ガラッ!!
「諸君!! 太宰青年はどこだ!!」
息を切らしたオールマイトが飛び込んできた。
教室中が一斉に振り向く。
「「「さっき帰りました。」」」
「…………え?」
オールマイトだけが、ぽつんと教室の中央で固まっていた。
「帰りました。」
飯田が姿勢よくもう一度答える。
「え、帰った?」
「はい。」
「もう?」
「はい。」
「ワタシ、職員室で校長と相澤君と説明をまとめていたのだが……。」
「その間に全部終わりました。」
「全部?」
「はい。」
「えぇ……。」
オールマイトはその場で膝をついた。
「ワタシの二十分は……。」
「無駄だったね。」
太宰があっさり言う。
「言わないでくれぇぇぇ!!」
教師とは思えない情けない叫びが教室に響く。
A組から小さな笑いが漏れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき
本当は本編を書こうと思っていたんです。ちゃんと投稿しようと思っていたんです。なのに!なのに勝手にこの手が番外編を書いていました。恐ろしい!!
近々ちゃんと本編の方の第七話も出そうと思っています。
あと、別で「ドス君の妹」という名前通りの小説も出しているので、是非見てみてください。
作者が話してくる系の小説は苦手なので、あまりあとがきを書かずにいましたが、今後もたまに出てくると思います。付き合ってやってください。
今後とも、「夕照と東雲と」をよろしくお願いします。
コメント
3件
読了しました!番外編とはいえ、情報量がすごくて楽しかったです……! 一番ぐっときたのは、太宰が過去の自分に「後悔をしたくないなら素直になることだよ」と告げるシーン。冗談のない真剣な目が、今の関係性の重みを感じさせて、胸が熱くなりました。そして、A組の総ツッコミ「嘘つけぇぇぇぇぇ!!!!」がすべてを物語ってる(笑)。オールマイトの二十分が無駄になったオチも、優しい気持ちになれました。面白かったです!