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「ギリセーフ!」
「ギリアウトです,アメリカさん」
「えぇ~…先生見逃して~!」
「減点はしませんから,早く席に着きなさい」
「はい…」
あの後,結局教室には間に合わなくて,始業式の日からやらかす羽目になった。
「アメリカ,どんまいアルー」
「うるさい中国…それより次の時間何?」
「次は全校集会アル」
「それでは,体育館に移動するので,廊下に並んで下さい」
「はぁー!?この暑い中体育館で集会とかあり得ねー!」
「それな~アル,リモートがいいアル…」
生徒の達の口々にごねる声。
そんな俺たちを見かねてだろうか,先生は誰もが心をくすぐられるであろう話題を口にした。
「静かにしてください。全校集会が終わったら転入生の紹介があるので,それまで我慢です」
転入,生。
って,今朝の?
「うちのクラスなのー?男かなー女かなー」
「何かすっごい美人な子らしいよ」
「でも転入生も1人じゃ無いだろ」
一気にクラス中が騒がしくなった。皆,転入生という少し非日常的な存在に胸を踊らせている。
(そうだな,今朝の美人っていう子なら…)
「皆さん,早く並んで下さい!」
皆,先程とは打って変わって足早に廊下に並び始める。どうやら,暑いだの面倒だの雑念は,転入生というワードで吹き飛んでしまったようだ。
「_____皆さん,夏休みはどうでしたか?」
校長のつまらない挨拶から,集会は始まる。
と,普通の学校に通う奴なら言うだろう。けど,うちの学校はその逆。
校長の挨拶が入った瞬間的,女子達が黄色い悲鳴を上げる。何たって,うちの学校の校長_____国連校長は,容姿端麗,頭脳明晰,運動神経抜群,人間関係に置いても如才無し。
加えて,学長のEU先生と来たら。こちらも容姿端麗,頭脳明晰,運動神経抜群。けど人懐っこくて,生徒と笑顔で下らない話をし合える。四字熟語で表すなら天真爛漫,とでもいった所だろうか。
そんな,世の中の理想を詰め込んだみたいな人達だ。歓声が上がるのだって無理は無いだろう。
「それでは,今から全校集会を始めます。」
校長が会釈して壇上を後にすると,続いて,校長の後ろに佇んでいたEU先生も会釈する。更に,人懐っこく笑って見せる。…それだけで体育館内は沸き上がる。
あー,イケメンっていいなー…。
いや,さ?
自分で言うのもだけど,それなりに顔はいい方。けど,やっぱああいう人達を見ると格が違うなぁとつくづく思う。
その後は先生達の話とか,校歌斉唱とか。やっぱりここら辺はつまらない。
「…早く終わんないかな」
「最後に,今日から我が校の仲間となる転入生の紹介です」
あ。
じゃあうちのクラスに来る奴も紹介されんのかな?
そう思って,転入生の姿を何とか捉えようと身を乗り出す。が,自分の位置はどちらかと言えば後方で,転入生がはっきり見える訳では無かった。
ひとり,ふたりと自己紹介が終わっていく。
最後の1人の自己紹介が終わる。体育館内は申し訳程度の拍手に包まれて,やがて静かになった。
…そんな美人居たかな?
はっきり見えなかったせいか?けど,特定の人が美人だとか言われたり騒がれたりした様子も無かった。
なんだ,やっぱただの噂に過ぎなかったんだ。そう思うと拍子抜けした。
期待して馬鹿みたいだ。
「はい,さっさと席着いてー!転入生を紹介します!」
先生の声が教室に響く。
もう大して興味は無いな,と思いつつ,やはり視線は教室のドアへと吸いつけられる。
ガラッ
_____その時,俺たちの教室で時間は果たして流れていただろうか。
皆が目を見張った。
「自己紹介,できる?」
「はい,大丈夫です」
「初めまして,日本国と言います」
「分からない事は多いですが,仲良くしてくれると嬉しいです」
短くて簡単な自己紹介。皆食い入るように聞いていた。勿論,俺も例外じゃ無い。
「日本さんは体調が悪くて休んでたから集会では紹介が無かったけど,転入生だからねー」
先生の話す声がとても遠く感じた。
だって。
_____日本国
吸い込まれるような真紅の瞳,夏の日差しで影を落とす長いまつげ,滑らかな輪郭,少し触れれば溶けてしまいそうに白い肌,不安になるほど華奢で繊細,この歳にしては少し低い身長…
何処を取っても,美しい以外の言葉は出なかった。
その上,声も美しかった。
ふわふわとしていて輪郭のはっきりとしない声のようにも聞こえるけど,とても凛としていることは分かった。甘くて心の中に溶け込んで来そうな声。この場合,美しいと言うか可愛いと言うのだろうか?とにかく,不思議と引き込まれてしまうことは確かだった。
息をする事すらも躊躇われる程の静寂を切り裂き,日本は歩き出した。
「お隣,宜しくお願いします」
「…え?」
隣?隣って何の?
日本が近い。綺麗。綺麗だ。綺麗なんて言葉で足りるだろうか。
「席,隣です」
席。確かにこのクラスで空いてる席は一番後ろの席しかない。俺は身長が高いから席替えで後ろになってラッキーで_____
隣!?
「身長高くて良かった…」
「え?」
「あ,隣,よ,宜しく!」
「…はい,宜しくお願いします」
そう言って,日本は微笑んで見せた。
驚くぐらい優しくて,綺麗だった。
「…アメリカって言うんだ。」
気付けば日本に話しかけていた。
「アメリカさん,ですか?」
こてん,と日本が首をかしげて確認してきた。
それ,天然なの…?
「うん。アメリカって呼んで」
「…ありがとうございます,アメリカさん。僕の事は日本って呼んで下さい」
「分かった,日本。」
そこで,俺はふと引っ掛かった事を聞いてみた。
「日本って,僕っ娘なのか?」
絶句。
何その顔。
「…あの,よく勘違いされるんですけど」
「僕は男です…」
その一言で,クラス中に衝撃が走った。
「嘘だろ!?」
「本当です!ほら,これ,保険証!よく勘違いされるから持ち歩いてるんです…」
恐る恐る日本の保険証を確認すると,…間違い無く,男。
ショックというか,何と言うか…。物凄い衝撃。
「あ,うん…ごめん叫んで…」
「…いえ」
気まずい。
「…あ,今日一緒に帰ろうぜ!」
から,とんでもない発言をしてしまった。
案の定日本は目にはてなを浮かべてたけど,こんな状況だし…とにかく何か話してないといたたまれない。
沈黙。
永遠に感じるほど長い沈黙の末,日本は顔を上げて言った。
「…分かりました」
「…うん」
そうして,俺たちの関係は何とも微妙なスタートを切ったわけだ。
_____前回より多少は長くなってる筈です。
三話にして日本が登場ですね。可愛いですね。日本の美しさをもっと忠実に表現できるように語彙力を上げたいです…
国連とEUも登場です。最強のペアです。かっこいいですね。
↓おまけの国連とEU
コメント
4件
えめっちゃ文章うまくないですか!?もう最初っからああ神だなあと思いながら読んでたらめちゃくちゃ破壊力がエグい神絵を出してくんのは反則ですって…
にぎょわ…、 日本の美しさの例え表現が上手すぎる…🥹 もう文才がありすぎて私にも分けて欲しいぐらいです😢 しかも絵も上手いとは何事ですか?? もう全て揃えていてほんと羨ましすぎる.