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私
にとって一番身近な女性といえば、母である。
母は、私にとっては理想の女性像に近い存在かもしれない。
よく気がつき面倒見がよくて、いつも穏やかで優しく微笑んでいて、家事全般が得意で料理上手でセンスが良くて、おしゃれが好きで、綺麗好きで、掃除洗濯片付けが大好きで、買い物が好きだけど浪費家ではなく倹約家で、趣味が多く社交的で交友関係が広く、子供にも理解があり寛容で包容力があって、仕事では上司部下からも頼りにされていて人徳もあり、尊敬され愛される人で……。
こんな女性と結婚できたら、どんなに幸せだろうかと思う。
けれど、それが夢物語だとわかっているからこそ、僕は諦めているのだ。
――だって、僕には無理だから。
そうしてまた今日も、僕は現実という名の悪夢を見る。
****
「うーん……」
目が覚めると同時に、思わず声が出てしまった。
なんの夢を見たのか忘れたが、ひどく気分が悪い。まるで胃の中に石を詰め込まれたような感じだった。吐き気すら感じる。
まだ眠たい目を擦りながら上半身を起こすと、ベッドの横に置いてあったスマホを手に取った。時刻はまだ午前七時半。起きるにはかなり早い時間である。
「あぁ、そうだ……」
昨日は深夜まで動画編集をしていたせいで寝不足気味なのだ。それにしても、どうしてあんな夢を見てしまったのだろう。我ながら嫌になる。
「はぁ~」と溜息をつく。しかし、いつまでも落ち込んでいても仕方がない。とりあえず顔を洗ってさっぱりしようと思い立ち上がったとき、「ガチャッ!」と部屋の扉が開いた。
「おはようございます、兄さん」
「おわっ!?」
突然現れた妹の美優を見て驚きの声を上げる。まったく予期していなかった出来事だったので心臓が激しく鼓動していた。
「ど、どうしたんですか!?」
目の前にいる女性は突然俺の腕を掴みそう言った。
「えっと……?」
俺は訳がわからずにいた。なぜこんなにも動揺しているのかすらわからない。ただわかるのはこの女性に見覚えがないということだけだ。
「あ!ごめんなさい!」
女性は慌てて手を離すと恥ずかしげもなくスカートを押さえながら後退った。
「いえ……」
気まずくなった俺はとりあえず自分の現状を確認することにした。
まず服装は普段着ているスーツではなく白衣のようなものを羽織っている。
そして右手を見るとそこには真っ黒なグローブがあり左手は白い手袋をしている。そしてその下はいつものように黒い靴を履いている。
「あのーここはどこですかね?」
俺は一番疑問に思った事を質問してみた。すると女性は驚いたような顔をしたあとクスッと笑いこう答えてくれた。
「ふぅん……」
「うーん……?」
「よくわかんないけどさぁ……」
「とりあえず、あたしたちみたいに、誰かが犠牲になる必要なんてないんじゃねーかな」
「えぇ!?」
「それじゃあ、あの人、死んじゃうんですか!?」
「だって、ほら、あいつらは別に悪い奴じゃないじゃん!」
「だからって……」
「そいつらもさ、あんまりやりすぎないようにしてればいいんだよ!きっと!」
「えっと……そうなんでしょうか」
「それに、こんなこと言ってたらアレだけどさ……」
「今更、止められっこないしなー」
「あ、確かに……」
「なんかさぁ、こうなった以上、最後まで見届けたいっていうかさ」
「わたしもです」
「はい」
「……ですね」
「あと、やっぱり、あんなヤツらに好き放題されるのってムカつくもん!」
「おぉ~!」
「おおー!」
「すごいです!こんなに早く解呪できた人なんて見たことがないですよ!」
「えぇっと……はい?」
ここは王都から少し離れた森の中にある小さな村――『アネモネ』にある診療所の一室。
俺の担当医である女性医師が興奮気味に声を上げたことで俺は困惑していた。
確かに呪いの解除に成功したことは嬉しいけどさ、そこまで喜ぶほど珍しいのか? そう思ったのは目の前にいる白衣を着た黒髪の女性医師が原因だった。
見た目二十代前半くらいに見える容姿をしているんだけど、実は二百歳を超えているらしい。
なんでそんな年齢なのに医者になれているかというと、エルフ族だからとのこと。
しかもハイエルフと呼ばれる種族らしくて、魔力量が多いだけでなく魔法に対する知識が豊富だと自慢げに言っていた。
ちなみにハイエルフは人間族の国ではお目にかかれない希少種らしい。
「ふふん♪ 私が優秀な証拠ですね」
「さてと……」
「えっと……」
「あー」
「うぅん?」
「ああ!」
「おぉ!よし!!」
「わぁ~!!!」
「やったね♪」
「よっしゃ☆」
「ひゃほー!!いえぇーい♪」
「ふっふっふ」
「うんうん」
「うむ」
「おお!?」
「ほっほう」
「なんぞこれ?」