「なんか…急に辞めるのに送別会とか、普通に嬉しい…!」
ありがとう…!と、集まってくれた皆をぐるり見渡して言う。
「…カフェの仕事好きだったのに、なんで辞めちゃうの?
確かに。
就職で辞めるにしてもあともう少しだったのに…本当はシフトを減らしても最後まで続けたかった。
「…いろいろやってたから…体力的に無理が出ちゃって…」
うそーちっちゃいくせに体力オバケのくせに〜というイジりを適当にかわし、長く続けたバイトの終わりを実感する。
「…琴音の彼氏って、武者小路なんだな」
皆酔ってきて、席を移動し始めた頃、端の方にいた玲が隣に座って言った。
響のことを武者小路と言って、すでに名前もわかっているということは…幼なじみというのは本当らしい。
「…うん。…ていうか、私も幼なじみなんだよね」
あんなすごい人を恋人だなんて、たいして親しくない人に言ってもいいのか…一瞬悩んで曖昧な事を言う。
「…なら、俺に乗りかえない?」
「…は?」
玲がグッと顔を近づけてきた。
「お前、うちの会社に就職するんだろ?俺…そこの2代目だから」
「…?!」
確かに、私の就職先はバイト先のカフェの運営会社、FUWARIコーポレーション。
玲があの会社の、2代目?
「…どした?驚いちゃった?」
「…うん、まぁ…」
昨日響はそこまで言ってなかった。
流石に知らなかったのか…それとも私の就職先を知っててわざと言わなかったのかな…。
「確かに響の方がバックはデカいけどね。でも…旧財閥の武者小路グループの御曹司だよ?琴音ごときに本気になるかね?」
何も言わない私に、玲は違う言い方でこちらの気持ちを確かめてきた。
「…それとも、やっぱりバックのデカさで選ぶ?…うちだって相当なもんだけど…?」
「…別に、響が御曹司だから惹かれたわけじゃないから。同じように…玲のことも、就職先の次期社長になる人だからってだけで、好きになることはない」
それだけ言って席を離れようとした。
すると急に手首を掴まれて引き寄せられ、至近距離に…綺麗な顔が…。
「…次期社長って言うと目の色変える子ばっかなのに…琴音は違うんだぁ」
新鮮…と言われ、不意に近づいてきた唇に、口づけられてしまった。
「…ちょっ…と!」
思い切り胸を押して離れ、そのままトイレに駆け込んだ。
なに?キスって御曹司の間では挨拶なの?
誰も彼もチュウチュウと…!
もう帰りたい…けど、せっかく開いてくれた送別会。
先に帰るなんて言えない。
…こんな時響が来て、有無を言わせず連れ去ってくれたら…なんて、一瞬頭をよぎってしまう。
…………
玲のせいで居心地が悪い送別会になってしまった。
二次会だ〜…なんて声がかかるけど、私は明日早いということにして、離脱することを伝える。
見ると、玲は二次会組の方にいてホッとする…と同時に、何となく腹が立った。
だって…不意打ちでキスするってなに?
こっちの意向も聞かずに失礼じゃない?
私は無意識に、二次会組が歩き出す方に向かってツカツカ歩いていった。
「…玲!」
…そこにいた皆が振り返る。
「さっきの、謝ってくれない?」
ニヤっと笑顔になって「皆喜ぶのに…」なんて呟いてる。
「…全員が全員、そうじゃない!
別に、就職してから意地悪されてもいいよ?でも、FUWARIコーポレーションは、そんなこと許さない会社だって信じてるから!」
まだニヤニヤ笑ってる…。
胸ぐらでも掴んだろか?…と思いながら近づいていこうとすると…
「わかった…!ごめんね。琴音」
正面を向いて、頭を下げた玲。
急に素直になるから調子が狂う…
「それと…琴音のこと、ホントに好きだわ。」
…は?
皆が聞いてる前で、なに言ってるの?
「初めて見た時から可愛いと思って…つい意地悪しちゃったけど…本気で好きになった」
ニコニコ顔で言われても困るんだけど…と言おうとしたけど、玲は軽く手を挙げて、二次会組と歩いて行ってしまった。
コメント
4件
3人のイケメンに好かれてしまった琴音ちゃん....🤭 これからどうなる⁉️ でも、ちょっと羨ましい~❤️
玲…。 俺様じゃないんだけど、その気質も持ちつつの、甘めありの〜(ᗒᗣᗕ)՞ 琴音ちゃんは響だろうけど、悩まないのかなぁ? 3人ともハイ✨イケ🤩だよ⁉️ まぁ真莉ちゃんはちょーっとちょっと横に置いといて…うん?いや!わかんないよね〜(*´艸`*)ウシシ