テラーノベル
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🌷🌀儚📷🍒
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まず初めに貴方に問います。
あなたは死後の世界がどのような世界だと思いますか
辛いことから解放された《天国》か
逆境への転落となる《地獄》か
貴方が選ぶとしたら どちらにするのでしょうか 。
そしてこの物語は _____
いえ 、それはまだ秘密にしましょう。
さて、いよいよ幕が開きますよ。
「ねぇ 、天国と地獄に行けるとしたらどっち選ぶ?」
『いや、決まって天国だろ』
放課後の夕焼けが差し込む中教室で雑談していると突然問われた、迷いなくそう答える。
「え ー 、やっぱそっちか」
やっぱりね、と言いたげな表情で彼女は頬杖をついた。
『逆にあいちゃんはどうすんの』
幼馴染の藤野 愛叶に問い返した。
「んー、私も天国選ぶ。」
『俺の真似すんなよ。』
「真似してないし ! 笑」
クスクスと笑う愛叶を横目に、僕はカレンダーに目をやった。今日は部活をサボってしまった。プロ野球志望のくせにサボるなんて、明日監督から受ける長時間の説教は覚悟のうえだ。
……本当は、説教なんてどうでもよかった。
最近、全力で走ると右の膝の奥が、骨の芯まで響くようにズキズキと痛む。
今日もバッティングの瞬間に激痛が走り、バットを握るのが怖くなって、逃げるように部活を抜け出してきたのだ。
ただの打撲だ、少し休めば治る。そう自分に言い聞かせながら。
『あいちゃん大学きめた?』
「まだ、すけこうは?」
『俺はプロ野球かな』
「それ人生で何回聞いたんだろ、私。てかブレないね」
そして俺は すけこう こと佐伯 幸介。
すけこう呼びされるのは中学からで、愛叶が勝手に考えた呼び名。
「…てか 5月のくせして28℃とかなに」
『あいちゃん暑いの嫌いだもんな、季節関係なくアイス食うくせして』
「あれは美味しいのが悪い、最近じゃ板チョコアイスしか食べてないけど。」
眉間に皺を寄せてうちの幼馴染は言い訳をした、あぁ、この子は変わらない。
どんなに歳を取ってもあの頃のままの、ちょっと舌足らずな口調で話して。
『腹壊すなよ。』
「壊さない。」
ふふん 、と愛叶は意味深の笑みを。
『お前,言ったそばから…』
「駄菓子屋、いこーよ。」
『じゃん負けラムネ奢りな』
「じゃんけん強いんだからね、私。」
また、笑みを浮かべた、今度は余裕の笑みを。
「お、自信満々だな。」
『いつもでしょ、自信満々なのは。』
「それはどうなんだか。」
軽口を叩き合える関係、そんな関係だったはずなのに 。 最近はどこか違う、この感情はなんなんだろう。
そして結局、俺は負けて30円のラムネを二本買った。
「60円今度返すねー。」
『いや、俺が負けたんだし。じゃん負けで奢りって決めたの俺ろ。』
「そうだけど60円返さないと気が済まないの、私の性格上。」
『やっぱ律儀だな、あいちゃん』
「律儀っていうか、貸しを作りたくないだけだよ。」
西日に照らされた通学路を歩きながら、愛叶は手の中のラムネ瓶を小さく振った。カラン、とガラスのビー玉が涼やかな音を立てる。
『水臭いこと言うなよ、幼馴染だろ?』
「幼馴染だからこそ、だよ。すけこう」
愛叶は立ち止まり、夕焼け空にラムネ瓶をかざした。透明なガラス越しに覗く世界は、茜色と群青色が混ざり合って、まるでどこか遠い世界の景色のようだった。
「ねぇ、さっきの質問の続き」
『天国と地獄のやつ?』
「そう 。なんで天国を選んだの ? なんとなく、は無しだからね 」
『それは』
そこで途切れた 、まるで水中にいるようで。
「…. こう … ! すけこう !」
『え、ぁ、なに。』
「もー、ちゃんと話聞いてた?」
『ごめん、聞いてなかった』
真っ白な個室に心電図の音が響いている。
机の上にはノートが広げられていて 、殴り書きされた文章があった。小説もどきの 。
そして俺は、確かあの夏以降骨肉腫になって 転移が早くて….. 。
それで 、俺。
『「退院したらアイス食べよう」』
「っはは、被った!笑 」
『希少の癌だから治るかはまだ分からない。』
それでも俺は。
『俺は漢だし 、野球パワーでなんとかなる。』
「なにそれ 、変なの。」
下手くそな愛叶の笑顔に心臓が跳ねた気がして 。
『あと俺、退院したら』
絶対言いたいって思ってたことを、退院したら必ず言う。こんな弱々しいダサい闘病中の患者の姿でじゃなくて。
そして俺が〝天国〟を選んだのは
愛叶 が居るかもしれない世界に行きたいから。
そして来世にはプロ野球選手になって、母さんと父さんを幸せにしたいのもあるけど、 愛叶にも、幸せでいてほしいと言う気持ちが強いのも本音で。
「すけこう 、外出許可が出たらさ。連れて行きたいところいっぱいあるの。」
『連れて行きたいところ ?』
ステージ4の骨肉腫っていうのもあって 、正直外出許可が出るのは厳しいかもしれない。
でも、愛叶が連れて行きたいっていうのなら俺は永久についていく 、 旅行でもなんでも。
「外出許可が出てからのお楽しみ、だから治療頑張ってね。弱音も吐いていいけど。」
この子には知り尽くされている 、俺が弱いことも 。
俺が痛みに対しての耐久性が零なのも。
でも 、そんな愛叶が俺は大好きで。
そして2023年の春 。
私は大学生になった 、こうすけと最期に約束を交わした 。
「こうすけみたいに辛い思いしてるヒトを絶対救える女医になる。」と。
対して頭も良くないくせにそんな約束を交わしたけれど 、その日以降休日には10時間の勉強をした。
かつて想いを寄せていた彼はこの世界にはもう居ない。
彼は無事望んでいた天国という名の世界に行けたのだろうか 、それは私にも分からなくて。
医学部の1年生として仲間入りした藤野 愛叶こと、あいちゃんは女医という夢に向かって駆け続ける。
もう 、この世界から消えるヒトが多くならないように。
そしてこの物語は 、よくある恋の話でもあり。
夢を抱えた少年少女の話でもあり。
そして 《天国》 と《地獄》という2択の質問に対する答えのオハナシでもあった。
コメント
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第1話、読ませていただきました。日常の軽いやりとりの中に、すでに“別れ”の影が落ちているのが切なかったです……「退院したら」って言葉が、二度と来ないかもしれない未来を思わせて、胸がぎゅっとなりました。最後に愛叶が医者を目指すと誓うところ、彼女にとってすけこうがどれだけ大きな存在だったか伝わってきて、涙が出そうになりました。続きがすごく気になります!