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世間ではセクハラがなんやかんやで騒がれているが、此処は金を払ってセクハラをしに来る場所。世間とはかなりズレている。
いや、私から言わせて貰えば今の世間が過剰になっているだけで有って、少しばかりセクハラをさせてやるだけでOLの何倍ものお金がもらえるんだぞ? 逆に有難い。
とかく浮世は色と酒。腰に手を回す此奴《こいつ》はキモイが味方に付けて置く分には悪くないだろう。このまま色香に酔わせて泳がせよう。恋の道には女がさかしい……
「ちょっと、てんちょっ、ダメ! 」
両手をゴブリンの胸にそっと這わせ、上目遣いに恥ずかしそうに見上げる。少し股間に太腿を差し込んでやると恍惚《こうこつ》の表情を浮かべた。
―――完堕ち……
手綱さえ握ってしまえばこっちのものだ。後は私の思うままに踊ってもらうぞ、成り上がりは此処からだ……
「これ…… 見られたらマズイですよぉ? てんちょ? 」
風呂を知らないゴブリンが異臭を残しサッと退く、咄嗟にドアがガチャリと開き、社長が事務所に入って来た。
「おや、お疲れさん」
社長とは名ばかりの雇われではあるが、実質この店のトップで、この下に店長と部長、マネージャーと言われる者達が続く。此処までが黒服と呼ばれ社員となる。次は此奴《こいつ》を狙う……
アルバイトはボーイと呼ばれ小間使いをする若い男の子達の事を言い、キャストと話をする機会は殆ど無い。女の子と仲良く成れると思い入ってきたが現実は女の子達からの風当たりも強く、ギャップに耐え切れず辞めて行く者が絶えなかった。此処は戦場…… そんなに甘くない。
「やぁ、元気そうだね。どう? 此処には慣れてきた? 」
年の頃、40間近の社長が優しく微笑む。
「お疲れ様です社長。実はその件に関しましてお話が…… 」
私は、不安そうな表情を見せるゴブリンを他所に、社長に促されるまま店の外へと出て行った。