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あめ猫
3,650
夕方。
ドアが開く音。
「……帰ったぞ」
セブンの声は、いつもより少し低い。
エリオットは、立ち上がる。
迷いは——ない。
「話がある」
空気が張る。
セブンの目が細くなる。
「……何だ」
一瞬、クールキッドの顔がよぎる。
それでも。
「クールキッドのことだ」
沈黙。
それだけで、十分だった。
セブンの表情が変わる。
「何した」
「してない」
即答。
「でも、“されてる”」
その一言で、
部屋の温度が落ちる。
「……詳しく言え」
エリオットは視線を逸らさない。
「“画面の中の友だち”と遊んでる」
「カエルのキャラだって言ってた」
「すごいって言われてるって」
一拍。
「……Noliだ」
セブンの声が、低く沈む。
エリオットは続ける。
「それと」
ほんの一瞬だけ、迷う。
でも、言う。
「“パパにはないしょにして”って言われた」
沈黙。
重い沈黙。
セブンの手が、わずかに震える。
「……そうか」
それは怒りでも、否定でもない。
もっと、冷たい何か。
そのとき。
リビングの奥。
小さな足音。
「……お兄ちゃん?」
クールキッド。
立っている。
全部、聞いていた。
エリオットの喉が、わずかに詰まる。
「……」
クールキッドの目が、ゆっくり細くなる。
さっきまでの無邪気さは、ない。
「……なんで」
小さな声。
でも、震えていない。
「なんで言ったの」
エリオットは、しゃがむ。
目線を合わせようとする。
「——」
その瞬間。
タブレットの画面が、勝手に点く。
ぴ、と小さな音。
カエルが、そこにいる。
「やあ」
三人とも、動かない。
カエルは、ゆっくり瞬きをする。
そして。
そのまま正面を見る。
どこも見ていないかのようで、
全てを見ているかのような視線。
「あーあ」
「お兄ちゃん、約束やぶったね」
やさしい声。
でも、どこか冷たい。
クールキッドの指が、震える。
「……」
カエルは続ける。
「それに」
ほんの少し、間を置いて。
「君の“お願い”も聞いてくれない」
クールキッドの目が、揺れる。
「……」
「一緒にいたいんでしょ?」
「三人で」
その言葉に、
エリオットの眉がわずかに動く。
カエルは、くすっと笑う。
「大丈夫だよ」
やさしく。
包むように。
「僕は守るから」
「君の“遊び”も」
「“秘密”も」
言い切る。
一方的に。
逃げ場を与えずに。
クールキッドは、タブレットからエリオットに視線を移す。
エリオットは、無言でタブレットを睨んでいる。
セブンの顔が、はっきりと怒りに染まる。
「おい。そこから出ていけ」
そして。
ぷつん、と。
画面が消える。
沈黙。
重い沈黙。
クールキッドの手が、震えている。
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