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その日も私は薬部屋で忙しく調合に励んでいた。シャルルダルク様は今日は来てらっしゃらない。
珍しいな、と思いつつも、これが当たり前か。
と、自分に言い聞かせた。
しばらくすると、ダーニャ様が薬部屋にやってきた。
「ダーニャ様、ご機嫌麗しく…」
「世辞は良いわ。
中々本格的な薬部屋になったのですね。」
「はい、ダーニャ様や皇貴妃様、エリアス様のお陰にございます。」
「それは嬉しいわね。
ところで、最近めまいが酷いのだけど…
診てもらえるかしら?」
「もちろんにございます。
ではそこの椅子にお座りください。」
椅子を引き、ダーニャ様に座っていただく。
「まずは、手を見せてくださいませ。」
「手がめまいと関係あるのですか?」
「爪の色を見たいのです。
なるほど。
では、次は舌を出してくださいますか?」
「こうかしら?」
ダーニャ様の舌は色が薄く、苔がほとんど無かった。
「疲れやすかったり、手足の冷えはございませぬか?」
「そう言われてみれば、疲れやすいわ。
手足は元々から冷える体質だけれど。」
「恐らくダーニャ様は血虚の状態でございます。」
「ケッキョ?
初めて聞く言葉だわ。」
「血虚とはその名の通り、血が不足している状態を指します。
そのために、貧血のようなめまいや冷え、疲れを引き起こすのでございます。
このような証には、四物湯や十全大補湯などの補血剤が効果的でございます。
今調合しますゆえ、少々お待ち願えますか?」
私は急いで調合する。
「マリーナ、あなたの知識は素晴らしいわ。
一体どこでそんな調合術を覚えたのですか?」
ダーニャ様は尋ねる。
「とある村の秘伝の薬を受け継ぎましてございます。」
適当な嘘をついた。
「そう…
それはそうと!」
ダーニャ様のオレンジの目が輝く。
「どうしたのでございますか?」
「シャルルダルク様とレガット様がこの部屋に入り浸りとか!
マリーナ、あなた、どちらを選ぶつもりなのですか!?」
「は、はぁ…
どちらと言われても…
相手の気持ちもございますし…」
「そんなものは好意があるに決まっているわ!
どちらも捨てがたい麗しさですものねぇ。
あなたが迷う気持ちも分かるわぁ。」
ダーニャ様が言う。
「しかし、私は奴隷身分の召使いでして…」
「あら、シャルルダルク様やレガット様と一晩共にすれば、女官に格上げされてよ?
女官であれば、世継ぎを産むこともできるのよ。」
「今のところ、どちらも好きではありませぬ。」
「あら、マリーナったら、贅沢者ねぇ。」
「では、これがお薬でございます。
お大事にされてくださいませ。」
私はなんとか、誤魔化してダーニャ様を見送った。
シャルルダルク様にレガット様か…
そして…
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