それから数年が経過した
叶は来る日も来る日もオレの館を訪ねてくる
最初はうざったいと思っていた行動も、習慣も
なんだか今は心地よくて
悪い気はしていない
でもこれは恋心とかそういうのではなくて
そう。そういうものではない
日に日に叶が与えてくれる愛情に喜びを感じたり、叶に特別な何かを感じたり…する、
でも、違う認めない
認めたりしない絶対に
今日も今日とて叶が訪ねてくる
いつものように話して、笑い合って
そしてまた帰って、翌日
そんな日々を繰り返していた
しかしある日から叶の表情が暗くなった
いつものように話しても笑顔が少ない…気がする
何かあったのか、どうしたのか
何度事情を聞こうとしても話そうとしてくれない
『僕は大丈夫。』
何度聞いても下手くそな笑顔で誤魔化してくる
なんだよ、俺にはいえないことかよ
俺だったらなんでも聞いてやるのに
そんなに俺は信用できないかよ
心の中で心配と悲しみが交差した
そんな日々が数週間続いた
話してくれないことが悲しくて、俺は意地を張って叶を突き放すような発言をしていた
[まぁでも俺には話してくれないんだよな?]
[もういいよ、勝手にしろ]
心の中では意地を張ってるって俺にもわかっていた
それでも悲しそうな顔をして頑なに話してくれない叶に
俺は苛立ちが止まらず、何度もこのやり取りを繰り返した
そんなある日
その日は大雨だった
この日叶は館にくるのが遅かった
いつもならお昼時には必ずくるのに
今日は午後5時をすぎても一向に姿をあらわさない
なんで来ないんだよ…
ガシャ
そう悶々と考えていると館の扉の音が聞こえる
…やっと来たのか
[おぅ、遅かったじゃねぇか…って、]
叶の方を見ると雨にずぶ濡れの状態で片手に花を握りしめていた
[おい!なにしてんだよ、風邪引くぞ?!]
叶は俺の声が聞こえていないかのように
俺に花を差し出し
ふっと笑った
綺麗な黒のチューリップ
雨の水滴がちらほらついているが
それでもキラキラと美しい
[この花が…どうしたんだよ]
『葛葉に、受け取って…欲しくて』
[どうしていきなり?どうしたんだよ]
『受け取って!』
叶が少し大きな声を出す
俺が仕方なく花を受け取ると
叶は安心しきった顔になった
そして
“ゲホッ”
は…?
バタン
突然俺の目の前で叶が血を吐き、
その場に倒れ込んだ
え、は?
理解できない
[おい、叶、!]
叶を抱き寄せ息を確認する
呼吸をしていない、
まてよ、おい
[叶、叶!!!!]
目を開けろってなぁ、
ど、どうして?なんで、こんな
[かなえぇ゛!!!!]
コメント
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え、!こっからどうなるんですか!?