knkz 吸血鬼と人間

[かなえぇぇ゛！！]

何度叫んでも

何度呼びかけても

叶は目を開けない。開けてくれない

叶は死んだんだ

幸せな日常が崩れていく音がする

死んだ…？

二度と声を聞くことも

笑顔を見ることも、名前を呼んでくれることもない

俺に好きだと言ってくれない

[なぁ…叶]

俺…まだお前と…

[目…開けろって、]

お前と毎日笑い合ってたいよ

[すき…だよ…]

わかってる。わかってた、

俺は叶に恋してる

そんなこととっくの昔に気がついていた

知らないふりをしてた

甘えてたんだ叶に

いつも俺に愛していると伝えてくれていた叶に

言わなくてもずっと、そばにいてくれるって

このままでもいいだなんて、

今更になって伝えてももう遅いのに

顔を染めて喜ぶ叶はもういないのに

いつかこうなるってわかっていたのに

人間は短命だってわかっていたのに

もっと…

もっと早く

[伝えれば…よかったのかな…]

目から水滴が落ちる

[好きだ、]

大好きだ

もう二度と笑いかけてはくれない亡骸を

愛おしく抱きかかえて何度も伝える

[好きだよ、]

だから笑いかけてくれよ

誰にも伝わることのない言葉が

ぽつぽつと地面に落ちる

もっと叶が生きている間に

もっと叶と笑い合っている間に

もっと叶が愛を伝えてくれていた間に

もっと…

あぁ、

あぁ

[愛せば…よかったなぁ、]

“愛してる”

もしも未来があるのなら

もう一度叶に会うことができたなら

必ず叶に伝えたい

何度だって繰り返し伝える

愛おしい君に、何度だって

だから俺は待ち続ける

叶がまた現れるまで何千年だって待つ

叶…忘れてなんてやらないからな

叶の持ってきたチューリップに口付けをし、

決意を固めた