──着てきた服を紙袋へ詰めてもらっていると、
「あっ、CEOが来られたようですよ」
スタッフさんがそう教えてくれて、後ろを振り返って見た。
「わぁー……」
現れた彼の姿に、思わず感嘆のひと声が口をつく。
涼やかなぺールグリーンのスーツの上下に同系色のネクタイを結び、同じグリーンの濃い色味のベストを合わせた彼のスリーピース姿は、いつにも増してファッショナブルで格好良かった。
「オレンジ色がとても似合っていて、綺麗だな」
「いえ私より、蓮水さんの方がもっと……」
言いかける私に、「主役は、君だから」と、彼が口にして、「グリーンにして良かったよ。君のオレンジとよく合う」にこやかに微笑んだ。
「それでは、楽しんでいらしてくださいね」
スタッフさんにお店を送り出されると、
「あの、こんな素敵なプレゼントをありがとうございます」
と、改めて彼に頭を下げた。
「いや、いいんだ。言っただろう? 何よりも君が、私への最高のプレゼントだからと」
彼はそう言って、
「本当に綺麗だよ、鈴」
私の耳元にふっと唇を寄せた……。
「君を、エスコートしよう」
彼から肘を折った左腕が差し出されて、右手を回してそっと腕を巻き付けた。
ホテルの廊下を一緒に歩くと、いやが上にも注目を集めて、たくさんの人たちに振り返られ、身の置きどころに困りうつむき加減になる私に、
「顔を上げておいで」彼が前を向いたままで口にして、
「私は、愛する君をこうして伴えることを、誇らしく感じているよ」
優しげに告げた──。
誇らしく……そうだ、さっき私も感じたように、愛する人への想いは、とても誇らしく幸せなものなんだと……。
「はい……」こくっと頷いて、顔を上げた。
「うん、それでいい。綺麗だよ、鈴」
「……はい」と、もう一度頷くと、愛しい彼と共にいられる悦びを胸に深く噛み締めた……。
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