TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

チッチッチ、チチチ…と、小鳥の鳴く声が聞こえる。

暖かい晴天の昼下がり、家の中庭にある樹の下に、私は寝転がっていた。

ゴーン、ゴーンと聞き慣れた鐘の音が聞こえる。

「…はぁ」

私は静かに溜息を吐く。

私は授業を逃げ出していた。

前の授業もそうだった。

先生は、私にどうして逃げるのかを聞いた。

私は暫く考えた。

そして答えた。 「意味がないから」と。

私は、お母様に愛されていない。

勿論、お父様にも、お祖母様にも、お祖父様にも。

だって、生まれてしまったんだもの。

いつもいつも、お母様は言ってる。

あなたが生まれて来なければ、私はお父様に愛されていたと。

全てお前のせいだと。 何回も、何回も聞いた、お父様に愛されないそんな言い訳が、私は大好きだった。

だって、それを言うために、そのためだけに、お母様が私の部屋まで来てくれるから。

だから、初めてそれを言われた時、とても嬉しかった。

6歳の時に、お母様に誕生日プレゼントを貰った。

それは童話の本だった。

物語の中の女の子は貧乏で、それでも母親がその子を愛していた。 女の子に悲しいことがあると、母親がその子を抱きしめて、こう言った。

「貴方の事を知らない人は、貴方の事を好きに言えばいい。だって、大切な人が貴方の事を分かっていればいいでしょう?」

可笑しいと思った。変だと思った。

だってお母様が私にこんな事を言ったことはない。

愛を私に説く事も、抱きしめられたことさえも。

一度だってありはしなかった。

だから、唯一私についていてくれたばあやに言った。

この本は間違っていると。 すぐに直さなければ、商品化しているのだから莫大な損失になる、と、そう伝えた。

ばあやは泣いた。ずっと、ずっと泣いていた。

どうして泣くのかを聞くと、ばあやは答えなかった。

ただずっと、ごめんなさい、ごめんなさい、と、ずっと謝っていた。

何が何なのかわからなかった。

だからずっと調べた。本は間違っているはずなのに、なぜ間違っていると評価されないのか。

お母様は年に二、三回しか会いに来てくれないのか。

なぜずっと、私のことを睨みつけるのか。

どうしてばあやは泣いていたのか。どうしてずっと謝るのか。

そしてようやく分かった。

可笑しかったのは、童話じゃなかった。私だった。

私が可笑しかったのだ。

私は、愛されていなかった。

その事実を知ってから、どうしてか喉が渇くようになった。

ずっと、足りない、もっとと。

何かを求めるように。 いくら努力をしても、地を這いずっても、お母様たちは私を見てはくれない。

きっと、もともと最初から、私など眼中になかったのだ。

あぁ、もういいや。 もう、どうでもいいや。

私には一つ、愛が欠けていただけだから。

ずっとずっと喉は渇くけど、ずっとずっと満たされることのない。

それはきっと呪いなのだろう。

この世に生を受けてしまった私に対しての天罰が、下ったのだと思う。

そう思えば、少し、喉が満たされた気がしたから。

loading

この作品はいかがでしたか?

35

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚