テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
湿った空気が部屋に滞り、窓の外では夜の静寂が街を包んでいた。
「明日から1週間か…長いな」
ぽつりと呟き、肩をすくめる。
年に一度開催される「スターライトフェス」。
ライバーたちの“甲子園”とも呼ばれるこの舞台では、オリジナル曲の制作権と、有名アーティストの年越しライブへのゲスト出演という二大プライズを賭けて競い合う。
勝敗はリスナーから贈られる“投げ銭”=アイテムポイントで決まる。
「この中から2人か…いや、さくらもちさんはもう確定みたいなものだし…あと1枠…」
ミィコはスマホをスクロールしながら、ある名前で指を止めた。
「…音葉さん…」
以前から人気ライバーとして名を聞いていた。
一度、身に覚えのない噂に悩んでいたとき、彼女の配信アーカイブを見た。
しかし、画面越しの笑顔には違和感があった。
『純粋に頑張ってる人が報われる世界であってほしいな…。』
優しげなその言葉に、演じている気配を感じた。
「この人が…仕組んでるのかも…」
悪意を知るミィコだからこそ気づけた、裏の匂い。
スマホを握る手に力がこもる。
《ミィコ、明日からだね!》
《チャンスだよ!頑張って!》
ファミリーの言葉が画面に溢れる。
「ありがとう、みんな…」
《頑張るね!》
と返し、スマホを膝に置く。
深呼吸し、冷たくなった指先に気づく。
月は雲に隠れ、街は深い暗闇に沈んでいた。
彼女は立ち上がり、照明を調整する。
「明日、私の歌で勝ちに行く」
その声は静かに、心の中に届いていた。
#ライバー小説 #配信者の物語 #オリジナルストーリー #スターライトフェス #ミィコの決意 #音葉の真実 #沈黙は嘘を映す #ファミリーの絆 #歌で戦う物語 #今夜が始まりの夜
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!