テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
大役をこなした結が、ぽっかりとあくびをして、貴仁さんが、眠っている誓の隣へ、その身体をそっと下ろした。
「どうぞ、こちらでおもてなしを致しますので」
そこへ、源治さんから呼びかけられ、皆でテーブルに着いた。
「あっ、これを父からもらって。クッキーみたいです」
源治さんに紙袋を差し向けると、「では、これもお出ししましょうか」と、厨房の方へ引っ込んだ。
程なくして、いつもながらに薫り高い紅茶に加え、旬の果物をふんだんに使ったシェフお手製のフルーツサンドに、フレッシュなキウイやパインなどをあえたフルーツサラダ、ふわふわでメープルシロップのたっぷりかかったパンケーキにと、カフェさながらのメニューが並んだ。
パンケーキを切り分けながら、揃ってティータイムを過ごす。
父の持って来てくれたラングドシャ(フランス語で猫の舌を意味する、薄焼きのクッキー)もすごく美味しくて、会話もにぎやかに弾んだ。
「しかし本当に二人とも可愛らしくて。これから結と誓に、じいじーと甘えてこられたりしたら、じいじの財布のひもはますます緩んでしまいそうだな」
もう既にでれでれな父に、
「あんまり甘やかし過ぎないでよ、本当に」
と、口を酸っぱくして言う。
「節度はわきまえるさ、そりゃもちろん」
父は胸を張って自信満々に話すけれど、当の私は、プレゼントの山にチラリと目をやらずにはいられなくて──。
「大丈夫だって、父さんはいつだって落ち着いていると、そう言っているだろうが」
私の視線に気づいたらしい父がそうもっともらしく言ってのけるも、無論やすやすとは信じられるはずもなくて、なんだか可笑しくなってきてしまった。