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「ああ、もう昼過ぎだ…ごめん、こんなことに巻き込んで…」山を降りながら彼は言う。
「いいえ、大丈夫です。」
いつの間にかウトウトしだして足取りが危うかったディアさんを抱え俺は星霜とともに降りている。
「…そんなことが?」「なるほどね。」
会話を弾ませながら降りていた。
しゃくしゃくと葉っぱを踏みながら降りる。
少し暖かい昼下がり。たまに吹くそよ風が涼しい…
とりあえず帰ったら2課のみんなに今日あったことを話さなければ。そして俺もこれからちゃんと下界で生きるために努力しないと…
と考えた。
ピピッヂヂ…
鳥のさえずり。ぶわっと吹く風。本当にこの山は自然が多いなあ…
と思っていた時。
トスっと音がした。
「かはっ」
と横から声がした。
え?
「星霜さん?」
横を見ればどさっと音を立てて座り込んだ星霜がいた。
その心臓を貫くように矢が刺さっている。
「え、」
奇襲だ。でも…矢から霊力を感じない。これは…
うつ伏せになった星霜からは赤い血が流れている。
「人間…?」
矢は彼の背中の方から前にかけて向いている。つまりこれは後ろからの奇襲…じゃあ後ろにいるのか?これでは俺も危ない。
ばっと後ろを向けば、日に照らされて光るクロスボウが奥に見えた。
でもどうすれば?星霜はどうなる?
どうしよう…
いや、もうそんな事は考えない。
眠っているディアさんを星霜の近くに置いてこうつぶやく。
「すぐ戻りますから。」
するとゆっくりとうしろを向き、人間の形をしたものを視界の隅に確認する。
「…」
走りながら、俺は銃を取り出し構えた。大丈夫、殺せばどうなるかくらいわかってる。
どうせ逃げたって無駄だ。
俺はクロスボウの見えるところまで来た。低い木の下に投げ捨ててあったクロスボウの近くに人がいる。そして俺に背を向けて走っている。
俺はその人間の後頭部に銃を当てて言った。
「撃ったのはお前か」
黒い服に黒い帽子、そしてやたらとごつい服装をしたその人間に話しかける。
一瞬見るにこれは普通の人間じゃない。殺し屋かなんかか…ていうかそんな職種があるとかこの街物騒すぎん…?
「…」
何度も不意打ちを食らって死んで行った仲間を見た。俺は何度も死にかけた…多分こいつも、最悪の想定をすれば死体処理のために仲間がいるはずだ…
そもそも依頼されたのか?それとも猟奇的なあれか?いやいやそうすれば向こうのふたりが危ない。生死うんぬん言ってる場合じゃない。
彼はきっと次、刀を取り出したりして俺をも殺す気だ。
とりあえず…
俺は銃を持ちかえ、そいつの後頭部にがんっとぶつけた。俺も力が弱まってるので手応えは微妙だが…とりあえず気絶させておこう。
しばらく殴ったがダメだったようで、抵抗するのでとりあえず肘で背中を強く突いて失神させておいた。最初からそうすればよかった。
「…」
急いで向こうに行かなくては…
俺は走ってディアさんたちの方へ向かった。こんな状況でも寝ているディアさんがすごい。…
星霜の血がつかないようにディアさんを持ち上げ、
きょろきょろと当たりを見る。誰もいないように見えるが…
というかとりあえず星霜を…でもここで誰かに見つかったら?冤罪は免れない…
ぐるぐると精一杯考えていた。多分パニックになっている。
でも命がいちばん大切だ。とりあえず肌を触って確かめる…あれ?
「星霜さん…?星霜さん?!」
まだ生きているようだ。めっちゃ暖かい。
と思えば、なんだかもごもご聞こえてきた。
「…全く、一体誰?ああ、君たちの前でこんなにもあっけなく死ぬなんて…」
のそのそと起き上がった。
「ええっ、えええ…」
俺は後ずさりした。森の中に俺の声が響く。
星霜は心臓に矢が刺さっているのにぐったりとなった体を起こした。
「あっ、ちょっと目つぶってて。ん…」
星霜が弓を引っこ抜く音がして、思わず目を閉じた。
めちゃくちゃ痛そう…
「っ…やっぱりこれ気持ち悪いよ…」
その音がしなくなって目を開ければ、刺されていた胸のあたりは黒くうねり、そして元に戻った。
足元に溜まっていた赤い血が光っている。
「はあ、はあ…ごめんね、急にびっくりさせちゃって」
「ひっ」
「でもね、僕天界人とかじゃないから…これは天命のせいなんだよね。…よいしょ。とりあえず僕を殺そうとしたやつの居場所を教えてくれない?わかんないならいいよ。」
いやいやいや、どういうこと?!
「あっ、えっ…こっちです…」
ディアさんを抱えたまま俺は気絶しているその人間の方へ行った。
「こいつを失神させときました…あの、警察かなんか呼ばないと…」
「うーん、これは殺し屋だ。依頼されたのかな。」警察呼ばないとと思っていた俺をフル無視で考察に入った。
「ああっ確かに警察呼ばないとね。でもね…」
「君たちは天界人だ。まだ君たちの存在をあいつらに伝えたらどうなるか分からない。とりあえず帰りな。」
「えでも…」
「いいから早く」
「ああ、はい…」
「ちょっと待って。」
星霜は止めた。
「このこと、まだ2課には言わないで。普通に過ごしたって言って置いてね。おおごとにしたくないから…」
いやあなたの見た目の方がおおごとだけど…
星霜は心臓からありえない量の出血をしていた。服は血まみれだし…
こんなのが森の中にいる方が怖い…
とりあえず何も見てない振りをして山を後にした。
ーーーー
どこかのだれか
「何?仕留め損ねた?」
「ええ、生体反応が消え…ああいや、弱まっています。」
「ふむ…」
黒いコーヒーを啜ってその人物は言う。
「カメラから見えるものは?」
「…葉っぱ」
「いや葉っぱかよ!んんっ…」
大きな咳払いが響く。
「とりあえず、彼はもう死んだも同然だろう…駒にならない、『選択肢』を与えてこい。」
「はい。」
「痕跡を残したからには警務官に知られる確率も高まる…そうなっては困るのだよ。」
「いつも言ってるじゃないですか。」
「そんなこといつ言ったかね…?」
「…とりあえず!我々は星霜とやらのデータを取るためだ。わかったか。」
「はあ…」
「返事は『はい』だろうがああ」
ーーーー
つづく
星霜の天命はいつか分かります。いつか。
今日調子いい!でも明日から3日お休みします