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俺は春千夜くんの見舞いに、マイキーに連れてきてもらった。
しかし…道が長い…。
「なんかおかしくない?」
「何もおかしくない。ここの奥に春千夜の病室がある。」
「いや、道が長いんすよ…。」
俺はそうつぶやく。
すると、マイキーが振り返って答える。
「だって、普通のやつとは別の病棟にいるから。」
…は?
聞いてない。隔離病棟とか、聞いてない。
「俺も一回ここ来たな…。」
そういって、マイキーは懐かしむ。
なんで来たの?全く知らないよ?
…そうだ、今のうちに頼んどけば知れるかも?
…いや、このことは本人に直接がいいか?
何にせよ、なにかありそうだった。
「春千夜、開けろ。」
マイキーは容赦なくそう言う。
すると、ドアがゆっくり開いた。
「今はいねぇぞ、またあとで出直し…」
奥にいたのはものすごく大人の人。
見慣れない服。特攻服?おしゃれ。
マイキーは硬直していた。
一方のほうも硬直している。
…すると、マイキーじゃない方が話し始めた。
「…部屋違いじゃねえか?」
「ここで合ってる。」
マイキーはめげずに即答する。
でも、待って。
隔離病棟って、病室に入れなくない?
なんで当然のごとくいるの?
「おかしい…。」
「「何がだ?」」
二人の声が被る。
俺は説明した。
「だって、隔離病棟って自傷他害をする可能性がある人たちが入っていて、監視室みたいになっているはずなんだよ。だけど、当然のように出入りしてる。それがおかしいなって。」
「あー…事情があってな。あいつ、俺かマイキーかじゃないとすぐ近くの物使って人を殴ったりするんだよ。」
…何があって!?
「春千夜、いるか?」
「…今、キレかけてるぞ。」
「別に。どうでもいい。」
知り合いですか…俺が入っていいものじゃなかった…。
俺も後を追って入ろうとしたとき、その人に呼び止められた。
「あー、名前。」
「…武道。」
「俺は明司武臣。千咒が世話になったな。」
そう言って、彼…武臣は去っていった。
なんで千咒の名前も…?
俺は疑問が絶えることがなかったが、マイキーに「何やってる?」と呼ばれ、足早にマイキーのもとへ向かった。
病室は静かだった。
環境も劣悪で、トイレとベッドぐらいしかない。
そこで、何日かぶりに春千夜くんを見た。
しかし、姿は変わっていた。
包帯がたくさん巻かれていて、上から血が滲んでいたり、血が飛んでいたり。
しかし、目はきれいに見開かれていた。
きれいな双眸の緑目。
揺れる白い髪。
春千夜くんはすっと立ち上がる。
すると、俺にバールを向けた。
俺はとっさに両手を上げる。
しかし、春千夜くんは、バールを落とした。
俺に何もせずに、だ。
そして、歌を歌いだす。
「君を殺してボクも死のう。」
「なんで何も言わないの?」
マイキーも乗ってる。
そこからは、交互に歌い始めた。
「そんな顔も見れなくなるから」
「また寝れなくなる、縷縷縷」
「縷縷縷」
「「細く途切れない君の声。」」
「きっと終わりはないでしょ。」
「「堕ちた。病棟。午前五時半。」」
「ほら、目を開けたら。」
…部屋に静寂が満ちる。
二人はお互いに見つめあっている。
そして、マイキーは立ち上がった。
しぐさで「帰るぞ」と言っている。
俺も立ち上がった。
すっと春千夜くんを見る。
その姿は、どこか寂しげだった。
「最近はあんな感じだよ。」
そう、マイキーがうつむいて言う。
「マンジローのせいじゃない。」
口をついて出た、呼び名だった。
俺は、とっさに訂正する。
「あ…今のは気にしないで、マイキー、マイキーでしょ、うん。」
マイキーもびっくりしたようで、こちらを見て眼を見開いている。
…嫌われた、100%嫌われた。
すると、マイキーは、すたすたと歩いて行ってしまった。
俺も後をついていく。
…その時、掲示板の昔の新聞記事に目が行く。
そのところには、こう書いてあった。
「第七小学校…生徒大量殺害事件…?」
昔過ぎて、字が消えかかって読めなかったが、そう書いてある。
そこから先は全く読めない。
解読しようとしたとき、後ろから殺意を感じた。
俺は、慌てて後ろを振り向く。
そこには、無表情のマイキーが立っていた。
俺はびっくりして後ずさる。
確かに、その眼は、すべて黒かった。
闇…と、何か。とかではなく、
ただひたすらに、闇だった。
そして、俺の袖をつかんで、引っ張っていく。
俺は、強制的に立ち退かされたのだ。
まるで、「見るな」とでも言っているかのように。
だから、俺は思う。
この謎を
マイキー殺害まで あと 24日
抗争まで あと 1日
ジブンは、ハル兄ぃの病室前まで来て、今日も手紙を置いていく。
もうすぐ抗争だ、ということも書いている。
読まれていないことは、当然のように分かっている。
ただ、仲直りのきっかけになれば、と思っていた。
だから、今日も信じて手紙を置いた。
同じ双眸の色をした、自分の愛する兄に。
(途中曲:隔離病棟 作詞作曲:残響P様)