今日は朝から落ち着かない。
何故かって…そりゃあ、文化祭の最終日だし。
…日比野と回るし…告白…するし。
「午後の遅い時間から回らない?その方が人も少ないから」
日比野のからの提案で、
ドキドキが先延ばしにされた。
本当に落ち着かない…。
日比野は私からプロポーズをされるなんて、
微塵も思って無いよね?
引かれたらどうしよう…。
不安。緊張。焦燥。
「桜子?ご飯食べないの?」
「食欲ない…」
心配そうな里奈の言葉も、
チョコバナナの販売も上の空。
グダグダと考えているうちに…
約束の時間になってしまった。
「桜子、日比野君が迎えに来てるよ?」
「…!」
里奈に言われて顔を上げれば、
教室の入り口で日比野が立っている。
「…行ってくるわ」
思わず溜息をつきながら言った私に、
里奈はサムズアップをして見送ってくれた。
「柏木さん…元気ない?」
「そんな事ないわ」
「そう?」
「そうよ」
「二年生のタコ焼きが美味しいらしいよ」
「では、それを食べに行きましょう」
ぎごちない会話しか出来ない私に、日比野は首を傾げる。
知らないふりをして、二年生の出店に並んでタコ焼きを買った。
「噂通り…すごく美味しいね」
「そうね」
正直なところ、味なんて分からない。
いつプロポーズしよう。
その事で頭がいっぱいだ。
「…柏木さん、行きたい所は無いの?」
「特に無いわね」
「なら…都市伝説部の展示に行って良い?」
「良いわよ」
それから、日比野が行きたがっていた、都市伝説部とミステリー研究会と人間の心理クラブの展示を回った。
…そんな部活があったなんて知らなかったし、展示も意味が分からない物ばかりだったけど、日比野は楽しかったみたい…良かった。
「そういえば、柏木さんはミスコンに出なかったんだね」
「あんなコンテストに興味ないわ」
「うちのクラスは牧野さんが出たらしいよ」
「…」
梨里杏ちゃんの話しが出て、私の機嫌は一気に急降下。
「へぇ〜梨里杏ちゃん、可愛いからね」
「うん、今日のお昼頃にコンテストがあって、一年生のミスコンで優勝だって」
「あ…そう」
「柏木さん?」
「日比野ってさ…」
これ以上はいけない。と思いつつ…口が勝手に動いてしまう。
「梨里杏ちゃんと仲が良いよね?」
「そうかな?」
「そうよ…梨里杏ちゃん、日比野の事が好きなんじゃない?」
「え?」
「梨里杏ちゃんって愛嬌あるし…日比野も好きなタイプでしょう?」
「…」
「日比野は私の婚約者だけど、私の事…好きじゃないもんね」
可愛くない。我ながら性格最悪。めんどくさい女…って思われたよね?俯く私に日比野からの視線を感じる。少しの沈黙の後…
「用具室の幽霊の正体…知りたい?」
日比野は感情の分からない声で、そう言った。
コメント
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文化祭最終日ってだけでドキドキするのに好きな人と一緒に回って告白(プロポーズ)するなんて更にドキドキしますよね🥰 日比野くんは鈍感というか無神経というか……。って感じですね……😅 でも、最後の幽霊の正体って一体何なんでしょう……🤔💭 続き楽しみにしてます👀✨