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一方、廊下。
舞踏会で聖女とのダンスを途中で放り出してきたカイルは、扉の外で凍りついていた。
(……離婚? 犬……? 里親だと……!?)
シェリーと踊っている間も、お茶会でソフィアが言い放った「捨てる」という言葉が、呪いのように頭から離れなかった。
これまで俺は、聖女シェリーの慈悲深い姿に惹かれているのだと思っていた。
病に苦しむ貧民を聖力で癒やし、飢えた者にパンを配る。その光景は美しく、尊いものに見えたからだ。
だが、ソフィアは違った。
彼女は「パン」ではなく、彼らが一生飢えずに済むための「教育」を授けた。
その場限りの憐れみではなく、自らの足で立ち、生き抜くための力を――。
それだけではない。彼女はスラムの民を清掃員として雇用し、街の不衛生な環境を改善した。その結果、シェリーが治療していた貧民病院の患者数は、劇的に減少したのだ。
現実を見据え、真の意味で民を救おうとするその大胆で聡明な生き方。
そんな彼女に、俺はいつの間にか心を奪われていたのだ。
(それなのに……里親に出すだと? 俺を別の女に押し付けるつもりか……!)
ふざけるな。
(……許さん。お前が俺から離れるなど、許すものか……!)
***
バンッ!! ノックもなしに扉が開く。
「殿下……!? 何のご用……」
「ソフィア。今……俺を『里親に出す犬』と言ったな」
#溺愛
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