黄泉の王との激闘が始まった。琥珀が発動した「無尽の黄泉」は、あらゆる命を飲み込み、決して逃れることのできない無限の地獄を形成していた。だが、神風は決して怯むことなく、その絶望的な状況に立ち向かっていた。
「黄泉の王……世の理を超越する存在か。しかし、俺は止まらない!」神風の体から溢れる風の刃は、黄泉を切り裂き、彼の強大な意志を体現していた。
琥珀の冷たい笑みが戦場に響く。「愚かだ、神風。黄泉の術式の中で戦い続けるつもりか?ここはお前に勝ち目はない。」
「勝ち目がないかどうかは、お前が決めることじゃない!」神風は吠え、風の力をさらに高めた。その風はもはや自然の力ではなく、彼自身の決意そのものが具現化したかのようだった。
琥珀は静かに手をかざすと、黄泉のエネルギーが戦場に渦巻いた。次の瞬間、黄泉の門から無数の亡者たちが湧き上がり、神風へと襲いかかる。それは一度死んだ者たちが蘇り、黄泉の王に従うことで再びこの世に舞い戻った者たちであった。
「お前は、永遠に苦しむがいい……!」琥珀は命じるように言葉を放つ。
亡者たちが神風を取り囲み、その無数の手が彼を引きずり込もうとする。しかし、神風はその一切を無視し、風の刃を解き放った。「お前らに引きずられるほど、俺は甘くねぇ!」
その刃は、次々と亡者たちを斬り裂き、消し去っていった。だが、黄泉のエネルギーは途切れることなく、終わりのない戦いが続くように思えた。
「どれだけ強くなったつもりでも、黄泉の力は無限だ。ここで抗うのは無駄だ。」琥珀は静かに語り、再びその手をかざす。
黄泉の力がさらに強大になり、戦場の景色が一変した。周囲の空間がねじれ、黄泉の門が拡大し続ける。今や神風は、黄泉の無限地獄の中に完全に閉じ込められたように見えた。
だが、神風は諦めることなく、その拳を握りしめ、前を見据えた。「……無限だろうと関係ねぇ。お前が黄泉の王なら、俺は風の王として、ここでお前を倒す!」
その言葉とともに、神風の体がさらに輝き始める。彼の異能「嵐の王」の力が限界を超えて解放され、全身を取り巻く風が暴風へと変わった。
「お前の黄泉に負けるわけにはいかないんだ!」神風は叫び、琥珀に向かって突進した。
琥珀は無表情のまま、神風の攻撃を迎え撃つ。「無駄だ……。この世にある全ての命は、黄泉に帰る定めだ。」
しかし、神風の一撃はこれまでとは異なっていた。彼の拳に纏われた風の力は、全てを切り裂き、琥珀が繰り出した無数の防御を一瞬で打ち破った。
「これが……俺の全力だ!!」
琥珀の瞳に、わずかに驚愕の色が浮かんだ。「……これほどの力を……」
神風の拳が琥珀の胸に叩き込まれ、その風の力が黄泉のエネルギーを押し返していく。黄泉の門が閉じ始め、亡者たちも次々と消え去っていく。
琥珀は一瞬、苦痛の表情を見せたが、それでも冷静さを保った。「……面白い。しかし、まだ終わりではない。」
琥珀は再び術式を展開しようとしたが、神風の次の一撃がそれを許さなかった。全力を込めた最後の風の刃が琥珀を貫き、彼の体が崩れ落ちていく。
「……お前には、まだ知らないことが多すぎる……」琥珀は静かに呟きながら、消えていった。
神風はその場に倒れ込み、肩で息をしながら空を見上げた。黄泉の門は閉じ、琥珀も消え去った。