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エム「猫語尾中」
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暗いここにぽつんぽつんと吊るされているは小さなステンドグラスのライト
コツン
響く革靴の音にその人物は顔をあげる
….
何をしている
Das bin ich…….(俺は….)
こちらを見て困惑したように彼は声を出した
んー、外人か…..
東の言葉は詳しくねぇのに…..
Hey, Sie gehören nicht in dieses Land. Bleiben Sie hier sitzen, ich rufe jetzt jemanden an, der Ihre Seite des Landes kennt.(おい、お前、この国のものじゃねぇな。今そっちに詳しいやつを呼ぶからここに座っとけ。)
コクリと小さく頷いたその人はすぐにその場にしゃがむ
言葉はわかっているのか….
あまりに小さな姿見にまだ未就学年のようにも思えたのに俺の拙いであろう言葉を解釈することは容易いくらいの脳がある
すぐに伝達用の機器を取り出し、中央に連絡を入れる
それと、東の貿易に手を入れ込んでいる”きりやん”にも
突然様子見をしてくれと言われた東の国境の地下通路
数日前に人間を感知する反応をとらえた部下に情報を受け取り彼らに知らせればそのまま俺が向かわされてしまった
また例の人物観察に頭を振るってみる
彼はそこまで背丈がない。骨が浮きでかける手首を見て東の国の奴隷だと取れる
小さい頃から奴隷なのだ
動かされ続け骨が未発達、それによる成長の停止の可能性だってあり得る
彼の着ているものは薄く汚れた短パンに、至る所が擦れて布の薄くなった長袖
冬の時期であるのにこの格好でいるのは、理由があるに違いない
….. Sind Sie ein Sklave?(お前は奴隷か?)
Ja.(そうです。)
こいつは異国奴隷…..
そうとなればきっとこいつはこの国に引き取られる。そしていずれあの…….
Wer sind Sie? Und, wo bin ich?(あなたは誰ですか?それとここはどこ?)
…… Dieses Land liegt östlich von deinem Land. Ich gehöre zur Führung dieses Landes. Es tut mir leid, dass ich mich wiederhole, aber ich bin mit der Sprache Ihres Landes nicht vertraut. Ich weiß nicht, wie Sie dieses Land oder meinen Namen in Ihrer Sprache nennen.(ここはお前の国から見たら東の国だ。俺はこの国の幹部にあたる。何度もいうようで申し訳ないが俺はお前の国の言葉に詳しくないんだ。そっちの言葉でこの国の名前や俺の名前をどう呼ぶのかわからない。)
Ich danke Ihnen. Darf ich noch eine Frage stellen?(ありがとうございます。もう一つだけ聞いてもいいですか。)
Wenn ich das nur beantworten könnte.(俺に答えられることならな。)
Was wird mit mir geschehen? Muss ich in mein Herkunftsland zurückkehren?(俺はどうなりますか。元の国に戻らなければならないですか。)
Das ist nicht wahr. Seien Sie versichert. Sie sollten nicht länger wie ein Sklave behandelt werden.(そんなことはない。安心しろ。お前はもう奴隷扱いはされないはずだ。)
…… Ich danke Ihnen.(ありがとうございます。)
Ich bitte Sie um eines von mir. Wie alt sind Sie?(俺からも一つ聞くぞ。お前、歳は?)
Er ist 19 Jahre alt.(数えで19です。)
は?19?
Ja.(そうです。)
年が、2つしか違わない…..
身長がこんなに小さいことがあるのか…..?
Du kannst es nicht sehen. ….. Ich weiß, was ich tue.(見えないですよね。自分でも分かってはいます。)
ただ言葉が流暢な理由もそれで納得がいく…..
よ、スマイル
ぽんと肩に置かれた手とその声に少し体を震わせた
わは、びっくりした?w
うるせぇさっさとこいつを…..
わ、東の国の子じゃ〜ん
めっちゃ目綺麗だねえ
“nakamu”や”broooock”とはまた違った綺麗さだ!
おい、きりやん……
お、そうかそうか
Wenn es nicht die Sprache des Ostens ist, ….(東の言葉じゃないと〜)
……..______
______
_______….!
……話し始めた2人を横目に国に戻ってしまおうと方向を変えた時だった
おーい、スマイル!
こいつの情報全部喋ってけ
あー…..
そいつ、19歳
へ?
んで異国奴隷だ
お、
俺の言葉が通じていた
解釈能力を含めて地頭は悪くないぞ
えぇ?
じゃ、そういうことだから、
じゃなくて、お前も一緒にこいつ連れて帰るぞ。
話さなくていいから
逃げ出そうとした時に俺1人じゃ心許ないだろ
……そんなことしないだろう、と思い浮かんだ心は静かにしまってUターンする
こいつには何か考えがある
考えなしで人を引き止めるようなやつではない
まぁ、考えがないこともあると…..
暖かい中央に戻り、そのまま例の人物を2人の間に置き、通路を進む
一旦なかむだな
あぁ
がこん
重い扉を開けば奥の作業机に人影が一つ
なかむ
東の国のだ
あぁ!
ようやく着いたんだね!
振り向いた彼はいつものようにパンダパーカーを被り笑顔を振り撒く
この人たちは知らない人だ
知らない国の人だ
ありありと突きつけられる現実に体が震える
体つきが違う
筋肉と脂肪のつき方が
それに話し方も声量も
こっちの国より余程ハキハキしている
目の前に現れたもう1人、パンダが好きなのだろうか
可愛らしいパーカーを着ているがその人もガタイがあまりにいい
鋭い声質を持つその人と先ほどのお堅そうな人が知らない言葉で会話をしている
目の前知らない言語があることはこんなにも不思議なのかと思わず目を凝らしてしまう
ねぇ、西の国の人はみんな身長ちっちゃいの?
そうこちらに問いかけてくるのは会った3人の中で1番身長が高くガタイのいい男、きりやんというらしい
はい、3人のように身長が高くてガタイがいい人は見たことがないです
でも僕は周りよりもさらに小さいから、19歳だと判断してもらえません
そうか
….あの方たちの名前は
紫色の目の人は教えてくれなかった
紫色の目のやつがスマイル
パーカーを着ているやつがなかむだ
スマイル、なかむ
そ
よし、孤児院だな!
ま、そうなるよな
今空いてる孤児院探してもらっていい?
その間に適当な洋服2日分くらい渡しといて
りょーかい
部下に連絡入れるから一旦タンマ
かちっ
ポケットからだしたインカムの電源をつけ左耳につける
孤児院を探してくれ
西の国の言葉を話せてこの国の言葉を教えてあげられる人がいるところがいい
それと、”アレ”の時期が1ヶ月前後の場所だと都合がいいそうだ
見つけたらすぐに連絡をくれ
インカムにでいい
よろしく
さ、他になんかあるか、なかむ
んー、待ってもらってる間なにしてもらおーかなーって
きりやんにでも任せておけば
そうしておきたい気持ちは山々なんだけど、やんこのあと外交行っちゃうの〜
…….
分かった?
わからないはずがない
この笑みを絶やさずにむけてくる、こいつは意外に底知れない
てことだから、よろしくねスマイル
俺も別に暇じゃない……
おれ、通訳な
きりやんが、ですか
そ、つっても一時的にだよ
お前にはこの国の言葉覚えてもらうから、
分かりました
で、今からお前の場所を探すために時間が必要だ
ただ、俺はこの後外交
それになかむは忙しい、他の幹部も今は皆出てしまっている
から、スマイルに任せることにしたから!
でもあの人、西の国の言葉話せないって言っていましたよ
でもお前はあいつと話せただろ
それに他に見ておける人がいないから仕方ないんだよ
なるほど…
まっ、仲良くな〜!
……
沈黙が続くも俺は別に苦ではない
相手が相手であることもあるが
意味もなく沈黙に苦を感じない相手であると実感した
相手が口を開けば俺も開く
それ以外で口を開くことはない
相手はどういう経緯で来たのかもまだ明かされていないのだ
ここまで聡明であればスパイとしての利用だってありえなくはない
そんなことを思っていれば、それが口を開いた
Ich bin kein Spion.(俺はスパイじゃないですよ)
…….
Es ist wirklich nur eine lästige Pflicht, also seien Sie nicht sonderlich beunruhigt.(本当にただの雑用ですから変に警戒しないでください)
….. Jetzt werde ich deine Kleidung und einige persönliche Dinge kaufen. Wenn dir etwas gefällt oder du etwas brauchst, zögere nicht, es mir zu sagen.(…..今からお前の服とある程度の身の回りのものを買いに行く。好きなものや欲しいものがあったら遠慮なく言っていい。)
内心を今日出会ってすぐのやつにあそばれるのは全く心地よくない
こいつの得体が知れない以上やはり話を避けたいのは当然の面持ちだろう
Entschuldigung. Ich habe die Angewohnheit, den Gesichtsausdruck und das Verhalten der Menschen in dieser Position zu beobachten. Ich möchte mich entschuldigen, wenn ich Ihnen Unbehagen bereitet habe.(すみません。俺、人の表情や立ち居振る舞いを観察してしまう癖があるのです。不快にさせてしまっていたら謝らせてください)
そう言われて、俺の直感がアレを思い出させる
こいつは…..
危うい
不安定だ
アレで引っ掛けられる可能性が高い
しょうがない
少し話を聞いてみるか
Sie brauchen sich nicht zu entschuldigen. Es wird noch eine Weile dauern, also erzählen Sie mir einfach Ihre Geschichte.(謝らなくていい。まだすこしかかるから話を聞かせてくれ)
Ja, wenn Sie mir irgendetwas sagen können.(ええ、俺に話せることがあれば)
Ja, wenn Sie mir irgendetwas sagen können.(お前はいつあそこに)
Ja, wenn Sie mir irgendetwas sagen können.(覚えておりません)
覚えていない….?
自ら逃げてきたわけではないのか….?
それとも記憶能力に欠損が…..
Tut mir leid, ich weiß es wirklich nicht mehr. Ich war müde und wollte gerade zu meiner Unterkunft zurückkehren. …..(すみません、本当に覚えてなくて…..。)
…….自らきたのか、それとも誰かに連れられて捨てられたのか….
本当に何もわからないな
Lassen Sie uns das Thema wechseln. Sind in Ihrem Land alle kleinwüchsig? Wissen Sie, wie hoch die Durchschnittsgröße ist? Ihr Land gibt nicht sehr oft Informationen preis.(話を変えよう。お前の国はみな身長が低いんだな?平均身長とか知っているか。お前の国はなかなか情報を落としてくれないんだ)
Ja, es ist nicht nur hoch in diesem Land, nicht nur für die Person, die gerade reingekommen ist, und für Sie, nicht wahr? Ich glaube, ich bin in meinem Teil des Landes durchschnittlich groß. Wahrscheinlich, weil ich kein gutes Essen zu essen bekomme.(ええ、この国では先程の方やあなただけが高いわけではないのですよね?俺の方の国では俺より数cm上が平均身長だと思いますよ。多分、ろくなもの食べれてないからですよ)
そう彼が言った瞬間その腹がなった
Ja, du bist wahrscheinlich auch hungrig. Lass uns zu meinem Lieblingsplatz gehen.(あぁ、腹も減っているだろう。俺の行きつけによろう)
Es tut mir leid, Sir.(すみません…)
彼は少し恥ずかしそうに言った
その一つの電話が来たのは、食事を静かに終えた後だった
“もしもし?仲良くやれてる?”
きりやんか、腹が減っていたようだからいつものところに連れていたんだ
すぐそこの服屋で揃えて向かうよ
そう伝えれば、少しのノイズと一緒に彼の声が途切れる
Ähm…?
(あの….?)
Nichts weiter. Ich habe mich nur ein wenig zu lange aufgehalten. Der Laden ist gegenüber im Osten. Gehen wir.
(なんでもない。少し長居してしまっただけだ。東向かいの店だ。向かうぞ。)
Ja.
(はい)
スマイルだ。また世話になる。
えぇ、えぇ、
聞いております
あらまぁこれまた、
貴方が連れてくる方はいつもお綺麗な見た目をしておりますね
私に任せてください
あぁそうするよ。
いつも通り、2・3日分だ。金は今渡すから釣りはいらない。子供らと少し豪華な夕食を食いに行きな。
あとは、よろしく頼む。
はいはい、ちなみにどこの国の子なんだい
言語くらい教えてくれなさらんと
西だが…..もしかして貴方はそちらの方面の言語も
えぇ、もちろんですよ
これが私の仕事なんですから当たり前です
本当に助かる…..。他の言語は何も知らないようだから、
さようですか。
ではいつものように。
あぁ
連れてこられた建物
ここら辺の街並みとは少し違う建物だ
もう少し北にあるような保温性が高い部屋
2人が話している間、することがないし何を言っているかもわからないからとこの部屋を一周ぐりると見渡した。
さっき彼は服を買いに行くと言っていたのにここには何もない
奥に続く暖簾は妙に場違いだ
お嬢ちゃん
気づいたら後ろにあのお婆さんが立っていて肩が跳ねる
あらあらごめんね驚かせてしまったね
いえ….
気づけば建物の中から彼はいなくなっていた
再度声をかけられることはなく俺は暖簾の奥へと手を引かれた
入ってみて、驚いた
シンプルだがとても美しい服だ
全てが
特段興味を持って生きてきたわけではないがそれでも惹かれる美しさだった
女性用も男性用もある
俺の手はそのままその人に引かれて入り口から少し離れたところに置かれた全身鏡の前に立たされた
鏡の中の俺をみて、そして振り返って俺をみたお婆さんは言った
貴方男の子ね?
さっきは勘違いしてしまったわ
今お洋服を持ってくるからね
そっちの棚の本はあなたの言語で書かれた本だから読んでみてちょうだい
そう言ってからは見向きもせず部屋から出ていった
待ち時間は短くないのだろう
言われた本棚に近づいてみる
それはこの国について書かれた本だった
背表紙だけでそれがわかる
ただ、その両脇に置かれた本は他言語で
あぁ、たくさんの言語で出品されているんだ
見た目も厚さもほとんど変わらず陳列する本にようやく理解する
余裕が保たれたその本棚から目的の本を抜き取り手に取る
その場で立ったまま本を開く
表紙のあとに
目次が続き
本編へと入る
足音が聞こえて本を閉じた
あら、立ったまま読んでたの
遠慮がすぎる子だねえ
こちらにおいで
椅子があるからね
この中は暖かいだろう?ブランケットはないさ
そう一方的に言われるがまま俺は動く
あの、こんなに長居してしまっていて大丈夫なんですか
そうつい口から漏れてしまった
なんにしろ興味深いとはいえ気づけば本の半分ほどは読み終えていたのだ
それなりに時間が経っていても不思議でない
ふふふ
いいのよ遠慮せず過ごしなさい
あのお方は後で時間通り戻ってきますからね
そうまた促されて今度こそ俺は椅子に座った
お婆さんは目の前の椅子に慣れた手つきで座りこちらをみる
本は読めるのかい
はい、ある程度勉強の機会をいただいていたので
それはいいわねえ
確かに西の国の学習設備は整っていることが多いと聞くからねえ
やはりそうなのね
しみじみと言ったお婆さんに俺は警戒心を解けずにいた
私はね、あなたみたいな孤児院行きの子達の始めの繕いを作る人なんだよ
そう一転した柔らかさでいうお婆さんに俺は目を引きつけられる
たくさんの言語を学んできたんだ
ねぇ、あんまり訛りも気にならないでしょう
…..えぇ
とても流暢だなと
そうなのよ
その本の内容も、読めなければ全て読んであげられるほどだわ
これは、この国の話ですよね
そうよ
この国の歴史をなぞっていくための本
ここにきた人全員にこれを?
ふふ
察しがいいのね
もちろん
そういうこと
何の意味がって思うでしょう?
この国は歴史があるのよ
その本に書かれた内容は一部でしかないの
多分あと半刻で彼の方が戻ってくるわ
だからきっと全てを済ませようとしていたらその本は読み終わらないわね
私がお話ししてあげましょうか
どこまで読んだのかしら?
社会教説という文字列が見えたあたりです
あまりの多量の情報量に一度読んだだけでは学び切ることができないほどだった
だから変な言い方をしてしまったと思って焦ってページを見せようと本に手をかけた時、お婆さんは口を開く
あぁ、読むのが早い子だねえ
そこまで読めているのかい
どうだい難しくはないかい?
難しいです
読んでいるだけで全てが頭に入っているわけじゃない
でも、とても面白いですね
そうでしょう
… . .
おもしろいでしょう
またしみじみと言ったお婆さんの方を見れば壁にかけられた絵画を見つめていた
その絵画はすぐ真上につけられたランプによってくっきりとしていた
絵画の中には
自身の手を握り合わせ
白い布に身を包みランプの方向を見据える人物がいた
背景には太陽と見てとれる暖かい色が入れられている
こんなことをしている場合ではないわね
本を置いておいで
そう立ち上がりつつ手招きをするお婆さんに合わせて立ち上がりついていく
繕いのために採寸をさせてちょうだい
あぁ、あなた年は20歳ほどであっているかしら?
……よくわかりますね
こんなに背丈がないのに
わかるのよ
たくさん経験してきた顔立ちですから
本の続きを簡単にお話ししてあげましょう
そう言ったお婆さんは慣れた手つきで採寸しながらよく口を回した
はい、終わりですよ
それは採寸の終わりと同時にお話の終わりを告げていた
俺は気になりが過度に出てまた自然と口を開く
俺をここに連れてきてくれたあの人は…
えぇ、今の情報統制菅様よ
幹部や軍事はさっきも言ったようにあだ名で過ごすのがこの国の主流よ
もし、どこかに流れることがあっても本名がばれてないのは大きいですからね
あの方のあだ名はスマイルよ
スマイル…..
何か意味のある単語なんですか?
ふふ
この国、いやあなたの国から見ても北東ね
その国の言葉でスマイルは笑顔っていう意味
につかわない….
そう思った心を見透かされたのかお婆さんが笑う
皆、あなたのような反応をするわ
もちろん私も思ったもんよ
まぁあだ名の言及は最低限にと言われているから、これ以上はなしね
服のお用意ができましたよ
いい?
3日分よ
3日分渡すからそのうちの一つは今来なさい
好きなものでいいわ
でも、ひとつ気を付けてね?
あなたが着るお洋服はあなたが脱ぐまであなたの一部でしかない
汚さないように破らないように
. .
あなたの一部を大事にね
あぁ、ほら
スマイル様がお戻りになりましたよ
早く着替えてらっしゃい
髪は….
ゆってあげましょう
切る時間はなかったのよ
あぁ、ごめんよ
ありがとう
Komm, dreh mir den Rücken zu.
(ほらこっちに背中をお向け)
腹を満たして身なりをきれいにしたその姿を見て思う
体つきが悪すぎるわけではないようだ
決して筋肉が少ないわけではない
孤児院でもうまく動けそうな性格の持ち主ではあるし困ることはないだろう
そう思った矢先、髪を結ったことによって顕になった首元のあざに少し眉を顰める
あぁ、
東の国か
そう思い直したことにどんな意味があったのか
おわりましたよ
伝えることも伝えてあるか?
えぇえぇ
本を読むのがお上手な子ですよ
ぜひ一冊何か買って行ってあげてくださいな
あぁ、道中にあったら入る
じゃあ、
はい、ありがとうございました
目元や肌がよく見えるようになった彼は変わらぬ表情で俺について店を出た
Für wie viele Tage ist das?
(それ、何日分だ?)
彼が両手で抱え持つ服を指して言った
Für zwei Tage. Ich habe zwar drei Stück erhalten, aber eins trage ich im Moment.
(2日分です。3日分いただきましたけれど一つは今着ていますので)
Ja, das ist eine zufriedenstellende Menge. Danach gehen wir zum Waisenhaus.
Auf dem Weg werde ich dir davon erzählen – also hör gut zu.
(うん、満足な量だ。このあと孤児院に向かう。孤児院のことを話しながら行くからよく聞いておけ。)
Ja.
(はい)
…Das sollte fürs Erste genügen. Gehen wir erst einmal zu dem Buchladen auf der linken Seite.
(……おおかたこの程度話しておけばいいだろう。とりあえず左側に見える書店に行こう。)
Eine Buchhandlung?
(書店?)
Anscheinend kann man hier Bücher lesen. Ich dachte, ich kaufe dir vielleicht etwas, das ich empfehle.
(本が読めるらしいな。俺のおすすめを買い与えようかと。)
Wirklich? Vielen Dank.
(本当ですか。ありがとうございます。)
買い与えられた本は思いのほか難しそうだ
それに、ここの言語だ
これ、俺に読めますかね
そう小声で聞けば
これから読めるようになるだろ
勉強の合間に読んでみろ
はい、
まじめそうなその人がひどく優しく微笑むその様子があまりに頭に残っている
ほら、今もう見えるだろ
左側の大きい建物が乱立しているところ
そうあの方の指す方を見れば確かに1箇所だけ違う建物が並ぶ場所が見える
あれが、
そう、あれが今日からお前の帰るところになる
そうそっと背中を押しながら言ったその人に続いてゆっくりと足を踏み出した
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