テラーノベル
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黒髪の少女は、屋上に立っていた。
風は思ったより強い。
胸壁の向こうには、見慣れた街の景色が広がっている。
「意外と知っておいて良かった……」
いつも教室で騒いでいる人達から盗み聞きしたことで知った、誰もいない屋上。
少女は静かに胸壁を越えた。
少女の足がもう一歩、もう一歩と進んでゆき
──体が宙に浮かんだ。
風の音だけが耳を満たす。
視界が揺れる。
痛みを想像する暇もなく、目の先には地面が見えてきて
──痛みが来るはずだった。
──次の瞬間、景色が変わる。
夕焼けの空は青く澄み渡り、コンクリートは草原へと変わっていた。
身体は芝生の上に落ちる。 理解が追いつかない。
脳が理解を求めている時、姉が読んでいた漫画の言葉が、頭をよぎった。
「異世界転生……?」
少女はただ、草原に立ち尽くしていた。
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どこまでも続く緑の景色。
人工的な音は一切ない。
……ほんとに、どこなのここ
カラサワ・シソウは、自分の状況を整理しようとして
──すぐに諦めた。
理解できる材料がなさすぎる。
「……流石に意味わかんないよ、これ」
そう呟いたところで、現実は変わらなかった。
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樺澤詩奏という少女は、水運業を営むちょっとした会社の娘である。
だが今ここでは、その肩書きは何の意味も持たなかった。
別に社長の娘とかの肩書き嫌いだったけど、ここじゃ関係なくね?異世界だっていう話ならだけど
見渡しても草原。
人の気配もしないような場所。
そのときだった。
ザク、ザク、と草を踏む音が聞こえる。
少女は無意識に身構える。
音はどんどんと、近づいてきて。
──そして、その正体が見えた。
「この世界セーラー服あんの!?」
現れたのは、白いシャツに黒い上着を着た黒髪の少年だった。
───────────
「しかも黒セーラー!本当に作った人わかってる!」
「──は?」
完全に理解不能だった。
緊張していた自分が馬鹿みたいに思えるほどの高いテンション。
「初対面でそれ言う?出身、名前、年齢全部知らないそこの人」
「言うだろ!?だって黒セーラーなんてそんな見れるもんじゃねえんだぞ!あと当たり強くね!?お前!」
会話は噛み合っていない。
だが、不思議と恐怖は薄れていく。
代わりに残るのは、戸惑いと警戒心。
「で、名前は?あ、あと年齢住所も言ってもらいたいけど」
「ナツキ・スバル、17歳!今はロズワール邸で下男坊やってる。てか要求多くね!?」
「下働きのわりに元気だね、騒がしい」
「お前姉様並みに攻撃力高いな!?」
詩奏は小さくため息をついた。
この男は危険なのか、それともただ変なのか。
まったくわからない。
そのとき──
空気がわずかに変わった。
「スバル、何してるの?」
少女の瞳には、銀髪の少女が写っていた。
──────────────
草原の空気が、わずかに変わった。
さっきまでの軽い緊張とは違う、静かな圧のようなもの。
詩奏は無意識に視線を向ける。
──そこにいたのは、銀髪の少女だった。
私より年上だろうか。
年齢はわからないが透明感のある雰囲気。
この場の空気とは少し違う、落ち着いた存在感を醸し出していた。
「スバル……って、その子どうしたの?」
柔らかい声が、場の緊張を少しだけ崩す。
「どっかから連れてきちゃったの!?スバルでもダメよ、そんなこと!」
そうやって見えるのか‥‥
詩奏は内心でため息をついた。
一方スバルは一瞬固まり、それから慌てて手を振る。
「いやいやいや!違うんだよエミリアたん!連れてきたわけじゃなくて、」
「こいつは、あー俺の友達!友達だよ、エミリアたん!」
「スバルの……?」
詩奏の視線がスバルに向く。
いや、違うでしょ。
目でスバルの方へ遺憾の意を表明するが軽々とスルーされる。
スバルは咳払いをして、無理やり話を進めるように続けた。
「まぁ色々あってさ。ちょっと訳ありなんだよ」
「とりあえず、屋敷で話そうぜ?このままじゃエミリアたんにも申し訳ないし!」
エミリアは少しだけ考えるように目を伏せる。
そして──小さく頷いた。
「わかったわ。じゃあお屋敷でお話ししよう?」
「私、スバルのお友達とすごーくお話ししてみたいもの!スバルっていつも調子狂わせみたいな所あるし」
「エミリアたんの無意識な毒舌が俺のハートに刺さる‥!」
拒否できる雰囲気ではなかった。
シソウは静かに息を吐く。
(結局、私流されてるだけじゃん……)
こうして少女は、知らない世界の屋敷へと向かうことになった。
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#レムでリゼロを知り、今ではレムさんと握手を交わしている
コメント
1件
詩奏ちゃんの心情描写がすごく丁寧で、一気に引き込まれました。屋上からの飛び降りから異世界へ、という導入の持っていき方が自然で、彼女の戸惑いや不安がひしひしと伝わってきました。スバルくんの黒セーラーへのテンションの高さとのギャップが面白くて、思わず笑っちゃいました。エミリアたんの登場で空気がふわりと変わるところも、とても好きです。これからどうなるのか、続きが気になりますね!