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第97話「ゲズの選択、光の決意」
深夜。神のいなくなった世界の空は、どこまでも澄み渡っていた。
神殿の庭先にて、ゲズはひとり、焚火を見つめていた。
――そこに、アダムが現れる。
アダム「眠れぬか、ゲズよ」
ゲズ「あんたもか……いや、神に“眠れない”なんてあるのか?」
アダム「今の私はただの観測者にすぎないよ。君たちの“物語”を見届ける者だ」
ゲズは火を見つめながら、静かに口を開いた。
ゲズ「……俺は、ただの人間だ。誰かの力を借りて、ようやく戦えてきた。ポセイドンも、アルテミスも、みんながいたからここまで来れた」
アダム「それは君が“借りられる器”だったということだ。人の器の深さは、時に神をも凌駕する」
ゲズ「……それでも、戦いの中で、たくさんの命を見た。守れなかった命も、消えていった想いも」
焚火の火がぱちりと弾けた。
ゲズの影が、炎の中に揺れる。
ゲズ「……俺はあのとき、サタンにこう言った。“命を教えてやる”って。あれ、言っておいて、自分でもずっと考えてたんだ」
アダムは黙って耳を傾けている。
ゲズ「命は、ただ生きてるだけじゃ足りない。誰かと繋がって、何かを託して、未来に想いを残すこと――それが、命の意味だって……ようやく、わかった気がする」
アダム「素晴らしい答えだ。かつて私が“命の起源”に問いを立てた時、その答えにたどり着くのに、幾千年もかかった」
ゲズは微かに笑った。
ゲズ「そんな俺が、これからやるべきことは……守ることだと思う。セレナ、リオン、ウカビル。大切な人たちと、この宇宙を」
アダムはうなずき、静かに言う。
アダム「その選択が、世界の未来を紡ぐ。君のその意志が、光となって次の時代を照らすだろう」
夜空を見上げる。星々が、静かにまたたいていた。
ゲズ「……アダム。ありがとう。俺たちは、もう大丈夫だ」
アダムは答えず、ただその背を見送った。
焚火の火が、朝の光に溶けていく。