テラーノベル
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頭では分かっている振りも、立ち位置も、全部覚えているはずなのに——
うまくいかない
「ちょっと止めて」
音が止まり、空気が一瞬で張り詰める
「……佐久間、フリ違う」
「あ……」
思わず声が漏れる
分かっていたはずなのに、体がついてこない
どうしても自分の癖が出てしまう
視線が刺さる
——やばい
「もう一回いくぞ」
音が流れ出す
今度こそ、間違えないように
そう思えば思うほど、動きがぎこちなくなる
……視線を感じる
鏡越しに見えたのは、腕を組んでこちらを見ているひーくんの姿だった
逸らせない
いや、逸らしたら余計に怪しまれる
「……っ」
呼吸が浅くなる
そのまま数回通したところで、
「ちょい休憩するわ!目黒、佐久間こっち来て」
——終わった
心臓が嫌な音を立てる
佐久間くんと一瞬目が合った
向こうも、分かっている顔をしていた
そのまま無言で、別室へ向かう
・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・
ドアが閉まる
外の音が遠くなって、妙に静かだった
「……なあ」
低い声
「昨日から思ってたけどさ
お前ら、なんかズレてんだよ」
佐久間くんが問いただされてる…
——きっとひーくんは気づいてる
数分もしないうちに…
「うぅ…バレたら仕方ない!そうです!俺が佐久間大介ですっ!(ドヤっ)」
佐久間くんそこドヤって言うことじゃないし…
冷静なひーくんに色々と聞かれ、メンバー全員に話すことになった
全員が集められて、事情を話す
最初は冗談だと思われたけど、
少しずつ空気が変わっていった
「マジで?それ」
「いやいやいや、え、ほんとに?」
口々に声が上がる中で、
「……ちょっと面白くない?」
なんて笑う声もあって
「こんなこと、ありえるんだな……」
真剣な顔で呟く声もあった
「戻る方法とか、分かんないの?」
「心当たりは?」
次々に投げられる言葉に、
「……分からない」
それしか言えない自分が、少し情けなかった
「とりあえずさ、みんなでフォローして、撮影終わらせようよ そのあと作戦会議しよ!」
その一言で、空気が少しだけ軽くなる
「……そうだな」
「なんとかなるって」
頷き合うメンバーたち
——助けられてる
そう思った
撮影は、なんとか乗り切った
完璧じゃなかったけど、
それでも、全員がフォローしてくれたから
「……ほんと」
小さく息を吐く
「いいメンバーだな…」
一人で呟いた
少しだけ、肩の力が抜けた
それでも——
問題は、何も解決していない
むしろ、これからだ
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